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かさいの花

ねじり草という花をご存知だろうか?
6~7月頃に沢山の小さな花を螺旋状に咲かせるラン科の花。

小学生の時、母親の運転する赤いシビックの助手式に乗って、どこかの大きな建物に着いた。
母は少し待っててね、と言って建物の中に入って行く。
その建物の前庭に、ピンクの可愛らしい花がたっくさん咲いていた。

母方の祖父が経営する小さな会社で事務員をしていた母は、よくお使いで取引先の会社に行って、私も度々着いて行ったので、少しの間待つことは得意だった。

夢中で可愛らしい花を摘む。
用事を終えて帰って来た母に、それは「ねじり草よ」と花の名前を教えて貰った。

それからねじり草を見る度に可愛らしさに魅了されて、よく摘んで帰った。

大人になったある日、母に
「あのねじり草ってさ、どこの会社の庭に咲いていたんだっけ」
と、効いてみた。
「あ、会社じゃなくて家庭裁判所よ」と。

そう、幼かったあの日の私は、父と離婚する為に訪れた隣町の家庭裁判所の庭で、無邪気にねじり草を摘んでいたんです。

父親が出て行ったのは、9歳の初夏。
ねじり草の咲く時期は、6~7月。

今わかるのは、母が父と離婚する為に、1年を費やした、ということ。

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