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【読書感想】歌舞伎と日本人(中村義裕)

歌舞伎がすごい、歌舞伎が好き、歌舞伎って面白い!的な書籍ではない。

演劇評論家、日本文化研究家の著者が、歌舞伎の歴史と、歌舞伎を人々がどう受け止め、繋いできたのか書いている。

「歌舞伎入門」とか、歌舞伎役者による歌舞伎の解説本より、もう少し広い枠と俯瞰で、江戸以前から現在まで、歌舞伎の歴史を整理したもの。

歌舞伎に多少は興味もあり観たこともある人が、あらためて歌舞伎や周辺状況を知るのに合っていると思う。

一つずつの話題が長くないので細切れの時間でも読みやすい。読み終えてから、またパラパラとめくって開いたところから再読するのも飽きない。

前進座とか、女性の歌舞伎役者がいたとか、戦中戦後の役者の苦労とか、映画界への移籍、閉鎖的な問題といった、「歌舞伎を観においでよ」的な本ではあまり触れられない話も多い。

能楽と歌舞伎の違い、人形浄瑠璃と歌舞伎の関係、時代に合わせて変わってきた歌舞伎の様子なども、知ったつもりになっていただけなのだと反省しながら読んだ。

タイトルは『歌舞伎と日本人』だし、歌舞伎が話の中心だけれど、伝統芸能は一朝一夕では出来上がらないし、常に変わり続ける、ということをあらためて感じて、能や文楽も見たい、という気持ちになる。

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