【教科書要約】言葉を覚えはじめるとき
教科書
よくわかる発達心理学 第2版
p44〜p45
子どもは1歳を迎えるぐらいの頃から言葉を発し始め、2歳近くになると急速に語彙数が増えてきます。
言葉を扱えるようになる事には、それを獲得するための限られた期間、臨界期というものがあります。
典型的な例として、「狼に育てられた少女」の話がありますが、その少女は人間に発見された時既に8歳で、そこから約9年間熱心に言葉を教えましたが、50語ほどしか覚えることができませんでした。この少女は臨界期が過ぎていたため、言葉を覚えるのが困難だったと思われます。
人間に育てられた私達も、臨界期を過ぎた中学高校の時期に外国語を学ぶときには、暗記したり文法を学習したり、多くの労力を必要とし、1歳2歳の頃のようにその言語を習得するのは簡単ではありません。
ではこの臨界期に、どうやって言葉を覚えているのかについてですが、まだ言葉を喋れない小さい子が、しきりに何かを指差しながら声を発することがあります。その様子を見た親は、その子が指差した物に目を向けます。
このように、親子の間で、一つの共通した対象に注意を向けることを「共同注視」と言い、言葉を覚える上で大事なコミュニケーションになってきます。
子どもが指差しをしながら声を発している様子を、親は「これが何なのかを質問しているんだ」と認識し、「これは◯◯だよ」と名前を説明します。
子ども自身は、名前を教えてほしいと思って指差しをしているわけではないのですが、親は「知りたがっているんだ」と勘違いして名前を教えるわけです。それが結果として、子どもがものの名前を覚える事につながります。
言葉の獲得には、言葉のコミュニケーションが必要ですが、それだけではなく、非言語的なコミュニケーションも大切です。こどもは親の表情にも注目していて、自分と同じ物に親が注目している場合にのみ、親の言葉をその対象の名前として認識します。
言葉以外にもいろんな場面で子どもは親の言葉や表情などを確認していて、この行動は社会的参照とよばれています。
子どもは親の表情にとても敏感です。
これらのコミュニケーションの繰り返しで子どもは言葉をおぼえていくわけですが、例えばこれはゾウだよと教えられた時に、子どもが「ゾウ」と言う言葉を、ゾウの色でもなく泣き声でもなく鼻でもなく、ゾウ全体の事だと理解できるのは、事物全体制約の働きがあるからです。事物全体制約というのは、認知的制約の中のひとつで、「ある範囲だけに注目して、他の可能性を強制的に除く能力」のことです。
この能力が働くことで、言葉を効率的に覚える事ができます。
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