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運用・保守を重ねた基盤サービスだからこそ、デザインシステムを作ろう

LIFULL CREATIVE

LIFULL HOME'SでtoBサービスデザインをしている、いけがみです。
今回は、クライアント向けの物件入稿管理サービスでデザインシステムを作ってみた話をしていこうと思います。

LIFULL HOME'Sは創成期にはまだ現在のようなサイトではなく、賃貸・流通・戸建・・・と徐々に提供領域を拡張しながらサービスが成長してきた背景があります。
クライアントが利用する物件入稿管理サービスも、その当時にあわせて提供を開始しました。

新築一戸建てサイトから現在のLIFULL HOME'Sへの変遷

その後、LIFULL HOME'Sは不動産情報サイトとして各領域を統合し、現在のようなあらゆる住まい探しができるサービスを提供してきました。
デザインもその都度アップデートされ、スタイルガイドなども徐々に定義されてゆきます。

一方で、クライアント向けの物件入稿管理サービスは統合されず、従来のビジネスモデルのまま、大規模なリニューアルが実施されることはなく保守・運用されていきました。

新築一戸建てManager(物件入稿管理サービス)の変遷

なぜデザインシステムが必要だったのか

LIFULLにはブランディングやデザイン原則を定義するブランドデザインガイドラインがあり、各サービスごとにそれを継承する形で独自のスタイルガイドも運用されています。

しかしながら、クライアント向けのサービスでは以下に挙げる理由などが大きな壁としてあったため、これらの定義を踏襲したり、品質基準となるものを導入することができていませんでした。

・LIFULL HOME'Sが現在の品質基準を持つ以前からのデザインであるため、品質のギャップが大きい🤦‍♀️

・業務システムのため日々の利用実感に影響があるような大きな変更を加えることが難しい🤦‍♀️

クライアント向けのサービスは、様々な領域のデザイナーが施策のたびにアサインされる形で形成されてきた経緯もあり、時代ごとのデザインやルールがミックスされた状態で、品質に大きなギャップがある状態でした。
過去に多くのデザイナーが、企画職のメンバーと共にデザイン基準がない中でもクライアント領域での最適解を考えてきた足跡が地層のように積もっている感じがします。

また、「どんなクライアントでも毎日変わらずに使い続けることができること」が大前提に立つため、施策としても大きく手を加えられなかった結果として積み上げたものが、見た目にも「ちぐはぐ」となっている状態を生み出してしまっているとも言えそうです。

それでも施策を走らせるたびに「これはどうしてこうなってるんだっけ?」「誰か知ってる?」「わからない」というやりとりが将来にも継続して発生することは、組織にとっても大きな負債です。

そんなわけで「じゃあクライアント向けにみんなが使えるサービス独自の品質基準をつくればいいのでは!?」と思い立ち、本題のデザインシステムの計画に至るわけです。

発掘調査開始

私は、デザインシステム作成のための最初のリサーチプロセスを「発掘調査」と勝手に呼んでいます。
積み重ねてきた施策群の地層から、現在のサービス像を形成している潜在的な価値を見つけ出していくプロセスが、なんだか考古学調査のようなだなと思っているからです。

よく見られる既存サービスのデザインシステム作成プロセスでは

1.コンポーネントを収集
2.必要なコンポーネントのパターンと利用目的を決める
3.サービス全体のスタイルを統合・アップデート

といったような流れでプロセスへ進んでいくと思いますが、私たちのサービスでは既にある潜在的な品質基準を明らかにしていく必要があるため、発掘調査を通して見つかった差分を単純に仕分けるのではなく、「このUIが生まれたのにはどのような経緯があったか」という歴史をたどる作業を挟んでいます。

1.コンポーネントを収集
2.なぜこうなったのか理由を考える 🌟
3.必要なコンポーネントのパターンと利用目的を決める
4.サービス全体のスタイルを統合・アップデート

もちろん、すぐに理由が明らかになるようなケースは少ないです。
まずは社歴の長いメンバーを頼りにヒアリングをしたり、それでも客観的に経緯を判断しきれない場合は「一般論としてこういうUIパターンを選択する場合には、デザイナーは何を考えて構成するだろうか?」を推理しながら役割や目的を整理し、サービスに必要なスタイルをコンポーネント群にまとめていくことになります。

歴代のデザインから基準となる品質を定める

集めたコンポーネント群から必要なコンポーネントのパターンを決めるにあたっては、「丁度可知差異」という観点で今のサービスらしさを形成しているコンポーネントの基準を見定めていきます。

「丁度可知差異」は主にマーケティングで用いられているパッケージデザインやプロダクトデザインについての考え方ですが、一旦構築されているブランドイメージの一貫性を維持しながら、市場の変化に対応していくために加え続けるパッケージや味などへのわずかな変更のことを指します。

保守・運用が長いサービスでは利用者の慣れに大きく依存しつつ機能している現状があります。経年や業務変化と共に使いづらい道具になっていたとしても、一定保たれてきた利用実感がプロダクトイメージに繋がっているため、視覚的に与える変化が大きくなりすぎると慣れている利用実感からくる安心感を損なうだけでなく新たな学習コストを与えてしまう可能性もあります。

今回作成したデザインシステムでは、丁度可知差異をうまく利用することで、大きく印象を変えずに情報構成や画面上で知覚されているコントラスト差などを整理していくことを進めてきました。
一気に新しいスタイルや理想的なサービス像へ近づけるのではなく、その安心感を損なわない範囲を見つけてコンポーネントを統合しています。

ときには思いきらないのも大事

変えるべきもの、変えてはならないもの

サービスリニューアルを目指すものではないため、根本的なUXを改善したり・設計し直すことをデザインシステム作成の目的にはしていません。
あくまでも、クライアントの利用実感を損なわない範囲でサービスの品質基準を定めていくことを目的としてデザインシステムを構成してきています。

そのため、まだここまでの段階ではクライアントにとってプラスの影響で観測できることはほぼありません。
時代ごとにルールのずれていたUIやトンマナが、LIFULLが持つ品質基準に近づくようなものに揃ってきたことで、「個別の学習が必要だった機能に、少しアクセスしやすくなった」くらいではないかと思います。
意識して避けていた小石だらけの道が、最近なんだか少し歩きやすくなったな〜!くらいの変化は感じてもらえているかもしれません。
今のところは、安定したサービスを提供し続けられるように、サービスデザインに共通言語を持たせられたことが、最大の成果ではないかと思います。

また、デザインシステムを一度作ってしまうと、それ自体をさらに運用・保守し続けなければならなくなり、組織にとって新たな負担になるのではないのか?という懸念を持たれることもあると思いますが、長く保守・運用が必要なサービスではデザインシステムという共通言語が存在することが、職種間の将来的なコラボレーションを大きく助けていくことに繋がると考えます。
通常の保守・運用のリリース計画に乗せながら、少しずつUX検証を重ね、より良いサービスへアップデートできる環境が整ったら、今度はデザインシステムの基準を元に、新たな価値を計画し提供していくことができるようになるはずです。

というわけで、運用・保守を重ねたサービスだからこそデザインシステムを作り、将来の価値提供に備えて品質基準を揃えてみたよ!というお話でした。
どのようにスタイルガイドやライブラリ化を進めたのかについても、別の記事で触れることができればと思っております。また次回をお楽しみに!

↓ 続編はこちら (2022/11/07 追記)

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クリエイティブ本部 デザイン部 サービスデザインユニット サービスデザイン1グループ
いけがみ
2017年中途入社。業者間物件流通サービス LIFULL HOME'S B2B のサービスリニューアルをはじめ、BtoB領域を中心に新規サービス開発やリプレイスにおけるUX/UIデザインを担当しています(2022年8月時点)

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