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事業再生のこと−22

小さな努力が実を結ぶ。というけれど、本当にそうだろうか?
手続きや数字のチェックをきちんとしなければ、どんなに努力をしていても実は結ばない。
それは努力を「額に汗すること」だと勘違いしているのかもしれない。

●必要なのは問題を見つけ出して先手を打つこと

仕事の上で1番のリスクは「楽観的であること」。
楽観的であることは問題が目の前にあるのに見過ごすことになるからだ。
見過ごさないで対処するためには「常にチェックする」ことが必要になる。

「問題」が無い、なんてことはありえない。
ただ、その「問題」を見つけようとしないか、見つけても目を逸らしているだけだろう。問題に対して「見えないふり」をしていると、もちろんその問題が起こった時に何をするべきかという「解決方法」を見つけるところまで考えが至らない。
だから実際に問題が起こった時に対応できないし解決もできない。
でも別の意味での楽観性は必要だと思う。
それは「失敗」した時の精神状態のこと。
やろうと思ったことが思うように出来なくて、失敗したりまた別の問題が起こったりした時に、悲観的になったり落ち込んでいては次の手が打てない。
「方法はいくらでもある」と楽観的に柔軟に考えないとアイデアは浮かばない。
たとえ失敗したとしても前向きさを失わず、
しかし、慎重さも併せ持ちながら次の手を素早く打って状況を打開しなくてはならない。

●あらゆる角度から考える力

過去の成功や失敗に囚われてしまうと方法論が限られてしまう。
成功する人には二面性が必要だと思う。
簡単に言えば「豪胆さ」と「繊細さ」。
この二つにもいろんな側面があって、人によってそのバランスも違う。
でもこの片方しか持っていないと大抵失敗してしまう。
つまり、この二つは失敗の原因でもあり、成功するための武器でもある。

繊細さを持ってこれからやろうとする事の問題やリスクをあらゆる方向からチェックして導き出し、もしもそれらが起こった時の対処法を考えておく。

やると決めたことを豪胆さを持って実行し、それを始めたら諦めず、最後までやり通す。間違っていないと信じるだけの要素があれば周りの多少の反対派押し切る。

何かを成し遂げようとすると必ず問題は起こり壁となって立ちはだかる。
しかし、それらの問題は大抵いくつかの要素で構成されている。
最も大きなものは「財務」そして「人事」。最後に「システム」。
他にも社会環境や商品の品質などがあるけれど、社会環境の変化はいつだってありうるし、多くの場合30年ごとに変化するものだ。
そして商品の品質は大前提になるべきもので、それが維持できないのなら事業をしない方が良い。

●組織のバランスが問題を解決する

前述した「財務」「人事」「システム」に常に目を光らせる必要があるし、それらを解決するには「豪胆さ」は必要だ。
この三つには「変化させたくない」という圧力と「変化させなくてはならない」という圧力が常にせめぎ合っているからだ。
特に既に既存のものとして組織内にこれらが存在する場合は「変化させたくない」圧力は強いものがあり、それでも「変化させる」ためには多少強引な方法も必要となることがある。
スタートアップなどこれから組織を作る場合においても、何も無いところからシステムを作り上げるためには少し強引な変革が必要となってくる。

「強引」とは言ったが、変革に必要なのは新しい組織作りであり、企業文化として常に変革を目指しているのならばまだしも、旧態然としている組織を変革するためにはその組織内に「先鋭部隊」が必要だ。
つまり、旧態化した組織の中に「変革」を起こすための別の組織を作る必要がある。
「変革」を進める組織と旧態組織の間には軋轢が生まれる。
問題は旧態組織側にいる経営幹部をいかに抑え込むか?決定権を与えないか?という部分だろう。旧態組織が生み出している問題は根深い。
場合によっては外部業者や得意先まで巻き込んでいる可能性がある。

それでは「旧態組織」と「先鋭部隊」は対立関係を生むのか?
まず経営者側が「先鋭部隊」側につかなくては組織の変革は起こらない。
そして必ずしも「旧態組織」と「先鋭部隊」が対立するとは限らない。
古い体質の中に収益の芽は隠されているし、古い組織の中にこそ変革に繋がる技術や事業のヒントは隠されている。
「旧態組織」と「先鋭部隊」は対立するのではなく融合し、新しく生まれ変わる必要がある。

●お互いの力を理解する

問題の多くは旧態化したシステムから生じる。しかし元々は「旧態化」したシステムは生まれた時には「革新的」だったはずだ。
最初に事業を大きくしたのは現在は「旧態化」したシステムや技術だったわけだ。
その中には優れた技術も潜んでいる。
もちろん「先鋭部隊」が持つ新しいスキル。それらも新たな市場開拓には必要に違いない。
二つの組織がお互いの技術やシステムを否定してしまうと新しい芽は生まれない。
この二つの技術とシステムの長所を生かした新しい革新を生み出すにはお互いの歩み寄りが必要で、そのためにはお互いを認め合わなくてはならない。
「そうじゃない」
「馬鹿らしい」
「そんなことできるわけがない」
「私には無理」
なんてネガティブな言葉の羅列の会議やミーティングをしていたって仕方がない。
まず、それらのネガティブさを払拭するためには「経営者」が改革側に立つことが必要で、経営者こそ改革の先頭に立たなくてはならない。

●スキルに古さ、新しさは存在しない

人の持つスキルは時代の要求とともに変化する。
多くのスキルは時代とともに変化する。必要な技術も変化するだろう。
でも考えてみれば、商品を開発する時、
10年前の家電と現在の家電のどこが変化しているのだろう?
洗濯機で洗剤を入れ、衣類を洗う方法は現在はドラム式が主流になってはいるが、
昔の技術者が「ドラム式」を開発する能力がなかったのだろうか?
モニタに使われる技術はどんどん新しくなり液晶技術は減り、毎年のように新しい技術が開発される。
では、10年前の技術者に現在の技術を理解することは不可能なのだろうか?
技術が毎年のように革新されてゆくと、若い頃に習得した技術は古くなる。
どんな時代でも起こることだが、毎年スキルをアップしてゆけばベテランであっても新しいスキルは身につけられる。
「歳をとっているから」「頭が硬いから」というのは若手から見たベテランの印象であって、
「そうじゃない」
「馬鹿らしい」
「そんなことできるわけがない」
「私には無理」
というベテランの言葉を若手が
「そんなことも知らないの」
「そんなことできると思っているの?」
「あなたには無理」
と、言葉を置き換えているように見える。

もしも相手を否定しないのなら
「それって出来るんですか?」
「面白そう」
「やってみましょうよ」
「きっと上手く行くよ」
って言葉に置き換わるんじゃないだろうか?

●ベテランには経験に裏付けされた楽観さも慎重さもある

経験の多さは失敗の多さであり、成功の多さでもある。
まだその業界に生き残っているということは
そのどちらもたくさん経験してきたということだ。
様々なパターンの失敗。失敗を重ねた上での成功。
時代の変化に対応した変革。達成させるための勢い。
苦境を乗り越えるための我慢。チェックし問題を見つけ出しやり直す。

現在の若者は、いきなりそこに立たされ、経験を積んでいないのに改革をせよと命令される。
頼りになるベテランは現場を離れ、会社では責められやる気を削がれる。
でもこれらをネガティブな状態からポジティブな状態にするのはそれほど難しくないのじゃないか?
だから、まずはお互いを肯定することから始めよう。
それができる組織はどんな変革にも耐えて新しい芽を伸ばすに違いない。


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