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事業再生のこと−28

経営計画を作ったことがあるだろうか?
はじめて経営計画書を作ったのは前身であるカフェを開業するとき。
最初の経営計画書には創業に必要な融資を勝ち取るためだった。
ものすごく厳密に必要経費を算出して、経費項目だけで3ページに及んだ。
読まされた人たちはたまったもんじゃない。
売上目標、必要経費、仕入れ、ランニングコスト、消耗品、光熱費etc.
思いつく限り全部書き出した。
それでも、この事業は三年目から赤字に転落する。
それは今考えると必然だったような気がする。

元々楽観的な性格ではない。
よく人に「石橋を叩いて割って、もう一度作り直す性格」と言っている。
プランの盲点や甘さを探して塗りつぶしてゆく。
気がつくとプランを一度壊してもう一度練り直さなくてはならなくなる。
それが経営者として良いのかどうか?という意味では微妙に思う。
そういう経営者ならきっと大きな失敗はしないだろう。
でも目の前にチャンスがあっても慎重になりすぎて見送ってしまうかもしれない。
何かを始めるときに自分に言い聞かせている。
「ダメもとだったらやれば良い」
さて、では経営計画書を作って実行しよう。

●経営計画書の中身

経営計画書は自社がまず、どういう企業で何を目標にしているのか?を明確にし、その方向からズレないように
これから数年をかけて目指す到着地点を示すために作る。
例えば
1.経営方針……企業として何を目指しているのかという方向性を示す
2.企業戦略……実際の業務・方法によってどんな効果、収益を生み出すのか?
3.財務管理……原価率、損益分岐点から利益幅を上げる財務体質を作る方法を提示
4.実績……前年度までの実績を具体的に書き、長所、短所を導き出す
5.実績予測……資材、設備、資本などから営業の拡大予測と売上予測を数字で提示
6.事業展開……具体的なマーケットの拡大・進出、得意先の確保、新規事業など
7.顧客……自社のマーケットを再分析し、顧客層に対する訴求・取込み方法を提示
8.商品展開及び品質管理……現行商品の品質維持方法、新商品の展開などを提示
9.販売展開……マーケットでの販売・訴求方法売り場での展開などを具体的に提示
10.人材計画……人材採用、人材育成、能力評価、昇給、などの方針と具体案を提示
11.組織図……現状の組織図と将来的な組織図を予測
などとなる。
経営計画書は経営者の頭の中にある、将来にわたる企業の変化と理想形を目指す方向性について再確認するものであると同時に、
現在抱えている問題点を抽出し、それらを修正し健全な企業体質を作るためのものでもある。

●経営計画書は経営者の成績表

企業や事業の成績表は業務実績を明示した決算書であるが、経営計画書は過去の成績と未来の成績のどちらもを書いた経営者の成績表と言える。
そしてこの成績表が評価されるのは「経営計画書」に書かれた「計画」が終了した時だと言える。
つまり、経営計画書と実際の経営実績に乖離がない状態であれば、経営者の予測の多くは正しかったと言えるからだ。
カフェを開業する時の経営計画書はなるべく細かい事まで詳細に書き上げたに関わらず、実際の業績と予測した業績は乖離してしまった。
売上予測を甘く見ていた上に、その予測値を実現できるだけの余剰仕入れをしてしまったからだ。売上は予測の60%しか上がらず、しかも仕入れ費は予測の倍ほどかかってしまった。
これらのことは経営初心者にはありがちなことだが、問題はその経験をその後の経営に活かせるかどうか、ということだろう。
経営者の資質は状況の変化や、以前の失敗を反省して以後の経営に活かし、正確に将来の状況まで読み込んで経営に反映出来るかということだろう。
開業して3年目の経営計画書は、当然以前の経営計画書よりも正確に売上や利益を予測していなくてはならない。
もちろん企業が成長するためには先行投資も必要であり、そのための資本の確保やそれらの負債を返済する手立てを含めて予定を立てておかなくてはならない。

●予測不可能な障害に対するディフェンス

突然起こりうる障害。
例えば地震や災害によって受ける設備への被害や景気の急激な後退や物価の急激な上昇など、大きな損失が出ることは頻繁に起こりうる。
開業初期にそれらに対する備えは不完全であることが多いが、経営を続ける中でそれらの障害に対するセーフティネットの力を高めておく必要がある。
スタートアップ時は予備資本が少なくセーフティーネットにかかる資本も多くを割けない。しかし、利益を出していけるのなら、その一部をセーフティーネットへ投下しておくべきだろう。
またリスクを分散できる事業形態を最初から考慮するほうが良い。
起こりうるリスクの種類に対して、どのような方法をとればそのリスクを分散できるかは考えておいたほうが良いだろう。

●経営計画書はリスクの洗い出しにこそ必要

経営計画書は何もバラ色の未来を夢見るための道具ではない。
むしろ、暗雲立ち込める未来をどのように回避し切り抜けるかを考えるために存在していると考えたほうが良い。
経営計画書の内容を実行することによって「企業体」が鍛えられ、より強くならなくてはならない。
ときには痛みを伴いながら強くなることもあるだろう。
スリムにならなくては乗り越えられない壁もある。
ただひたすら耐え続けなくてはならないかもしれない。
体を大きく育てることで生き延びることができるかもしれない。
どんなリスクに対して企業はどのように変容しなくてはならないか?を考え、次に打つべき方法を導き出すために経営計画書はある。
夢見るバラ色の未来はまだまだ先だ。
事業体が安定して、成長を確実に続けられる状態になるまで辛抱強く毎年、状況を見ながら経営計画書は書き換えられるべきだ。
経営計画書の中に新しい項目が付け加えられるたびに企業は成長してゆく。
一人で書いていた経営計画書をそれぞれの専門家が協力して作り上げられるようになるまで、経営者の責任は重い。
たとえそうなったとしても最後に決断をし、正しい方向性を示すのはやはり経営者でしかない。毎年経営計画書という成績表を見ながら次に打つ手を考え続けなくてはならない。

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