De-sign語り-6
グラフィックデザイナーになった頃にとても苦労したのは「色のバランス」のことだったなぁ。
自分の色の好みってプロになるまで意識することなかった。
芸術系の学校出身だったらきっと授業で受けるんだろうな。
でも全然教育を受けていないアマチュアの僕は「感覚」だけで「確信」はなかった。絵を描いている時の感覚をデザインに応用するしか方法がない。
絵を描くときの色の使い方とデザインでの色の使い方は違うよね。
絵を描くときは、下色を塗って上に表現したい色を重ねて「色を作る」けど、デザインの場合は何もない下地の上にいきなり完成した色を載せなきゃならない。
絵の場合は何度も修正を入れながら色を決められるけど、デザインの場合は仕上がった色を最初からリアルに想像しなきゃならない。
今はコンピューターの画面上で色を差し替えて確認できるようになったけど、以前はCMYKのそれぞれの%から色を予想してた。
でもモニタ上の色と紙や他の素材、インクの種類なんかで色はブレる。紙質で色が変化することまで予測しなきゃならないから経験でしかわからないことも多かったなぁ。
色の配置やバランスは勉強するのが難しかったな。
実際の広告や写真を見ながら「美しいバランス」や「目立たせるバランス」がどういうことなのかを覚えてゆくしか無いよね。
もちろん理論はあるから、基本的なことは覚えないといけないけれど、色の組み合わせはいくらでもあるからね。
本屋さんでふと棚を見たときにアパレルブランドの綺麗な写真が表紙になった本を見つけて、高かったけど頑張って買ったことがある。
ページをめくるとビビットな色使いの服を着たモデルが写真に写っていて、どのページのどの写真も強い色使いなのに、すごくリズミカルで美しく見えたんだ。
毎日毎日、その本を見ているうちに写真の中や、ページの中の色の配置にある一定の法則があることに気がついた。
それから色使いについて、人が心地よく感じる法則のことがわかり始めたんだ。
後でわかったけど、そのヨーロッパのブランドのカラーリングをディレクションしている人は日本人だとわかった。
日本も伝統的にはビビットな色使いが得意だったのに、いつの間にか個性を押し殺すようなモノトーンが好きになったね。
日本人の感じるかっこよさや個性を重んじる時代と社会性を重んじる時代で精神性が変化するのと、好まれる色が変化するのは連動している気がするなぁ。
色の道は長くて深いから、まだまだ精進が必要。
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