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ブランディングのメモ帳-12

知っているブランドをあげてみてください。と言われたらどんなブランドをあげるでしょう?

エルメス、グッチ、ヴィトン。真っ先にあげるのは海外の有名ファッションブランドでしょうか。

食品のブランドは?と聞かれるとサントリー、アサヒビール、ワイルドターキー、ロマネ・コンティ。お酒のブランドはわかりやすいですね。でも待って、これらはブランド名?それともメーカー名?ワインに至っては地域の名前?畑の名前?品種の名前?

ブランドの名前にはその発祥の歴史が関係しています

例えばエルメスとグッチ。両方とも有名なファッションブランドだけれど始まりは全く違います。エルメスが有名になったのはモナコ公妃で元女優のグレース・ケリーが公の場に出なくてはならなくなった時にその権威を示すために特注で作られた鞄がケリーバッグ。同じく有名なバーキンはやはり女優のジェーン・バーキンが「沢山の荷物を分け入れて、どんなに荒っぽく使っても壊れない鞄を」と注文して作られました。つまりエルメスは常にセレブをお客様とし、その人たちの要望に答えた品質の高い鞄を提供してきたのです。

同じく高級鞄で有名なルイ・ヴィトンは最初は小さな旅行鞄屋から始まりました。ヴィトンが開業した頃は荷馬車で荷物を運び舗装されていない道を荷物を揺らしながら出かけていました。当然鞄は傷み、壊れやすかったのです。だから丈夫な木材を使った重い鞄が主流で、旅行から帰ると鞄は修理に出されました。ヴィトンはそんな時代に修理がしやすくパーツの交換も容易な鞄で、メンテナンスサービスを行うことで名を馳せ店は大きくなったのです。ところが修理しやすい構造は真似をしやすい構造でもあります。それを防ぐためにヴィトンは革の表面にあの有名なVLの刻印を入れて簡単には真似できなくしたのです。このデザインが評判を呼び、一躍高級ブランドの仲間入りを果たしました。

エルメスとヴィトンを引き合いに出すまでもなく、現在ある有名ブランドにはきちんとしたバックストーリーがあります。

新しく起こすブランドには当然歴史はありません。けれどもそれが立ち上がる過程においては「物語」は存在します。

経済が急成長する段階においては「広告宣伝」を大量に打つことによって急激に認知度を引き上げることでブランドも成長できます。しかし経済の成長が鈍化すれば広告宣伝に使える資本は少なくなって容易にはブランドも成長できなくなります。

エルメスはセレブに浸透させることで開発費用を価格に乗せることができました。そしてセレブの使用はそれ自体が広告宣伝となったのです。

ヴィトンはブランドの特徴を特化させ、他のブランドとの差別化を図り、口コミによる宣伝効果で認知度を上げブランドを成長させました。

「認知度」「評価」「拡散」「差別化」はブランド化への必要要素ですが、例えば中国から生まれるブランドはこのうちの「評価」が抜け落ちています。

「評価」はあくまでも社会全体を通してのものでなくてはなりません。国内だけの「評価」は容易であっても、海外を含めた「評価」に育てるのは容易ではありません。そして、その「評価」にとって大切なのがバックストーリー「物語性」だと言えます。

物語性の中には商品を生む背景のその国のカルチャーも含まれています。信用度の高い文化性を持った国で生まれたブランドはやはり信頼されるし、その逆もあり得ます。自国の文化度を利用してブランドの信用度を上げることもできるのです。

ただ、例えば日本ではアニメーションの評価が高いのでアニメキャラクターを使ったブランドを立てるのは、キャラクターのブランドの方向性と、自社商品のブランドの方向性が異なる方向を向いていると自社ブランドの信用性を損なう可能性もあります。とにかく注目されて認知度を上げるだけならキャラクター戦略はあるけれども、長期にわたるブランドの浸透性を獲得したければ別の方法を考えたほうが良いかもしれません。

中国ブランドや新興国ブランドが台頭するにつれて新しいブランドの盛衰の期間が短くなってきています。それは物語性よりも認知度を重視してブランドの文化感を育てることを疎かにしているからだと思われます。

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