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人がコミュニティ・組織にいる人に対してだけではなく全体に対して帰属意識を持つために必要な5つの要素

はじめに

昨年夏頃からフルリモート × プロジェクトベース × 自律分散型な組織に関わっています。その組織ではあらゆることがプロジェクト化されていて随時20近くのPJが動いています。

そして、それが適切かどうかは別として、今のところそれぞれのPJから全体に対して活動情報を定期的に共有することを推奨されてはいるが義務ではありません。また、自分が関わっているPJ以外の人との交流も義務づけられているわけでもないので、自分の関わるPJ以外の繋がりがほとんどないという人もいます。
 
そんな中、横断的なPJのメンバーの中には情報共有という観点でも組織全体に関心を持って欲しい、組織全体の一員としての自覚を持ってもらいたいという思いと、そうなっていない状況に対する葛藤を持っている人もいましたた。
 
私はそういった状況の中で、人があるコミュニティ・組織に関わる際にその組織全体の一員であるという自覚はどの時点でどのように芽生えるのか(あるいはなぜ芽生えないのか)に興味が湧いたのです。
 
このテーマについて考えていく中で組織全体の一員であるという自覚を持つためには4つの要素が必要ではないかという仮説が浮かんだので、今日はそのことについて紹介します。

5つの要素とは?

最初に全体像を図にしたものを紹介します。

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私の仮説としては、人はこの5つの要素が揃ったときに、特定の個人や自分が関わっているプロジェクトだけではなく、コミュニティ・組織全体に所属意識が芽生えると言えるというものです。
 
順番に紹介していきます。
 
(1)プロジェクトに関わること

会社組織においては配属部署・チームが決まること、オンラインサロンなどにおいてはただ入会するのではなく特定のプロジェクトに加わることが当てはまります。(そのオンラインサロンを誰かに紹介する・紹介記事を書く、といった行動を取った場合は実際にそのプロジェクトがあるかどうかに関わらず「売る・伝える」プロジェクトの一員としての活動をしていると言えるのでこの条件に当てはまると言えます。)

(2)プロジェクト以外の人間関係(つながり)ができる

会社組織においては他部署の友人、オンラインサロンなどにおいても他のプロジェクトの人と知り合う、あるいはまだプロジェクトに関わっていない人とつながりができた場合もこれに当てはまります。特にオンラインサロンなどにおいては繋がりを求めているケースが多いため、先にこちらの関係ができた上で(1−1)という要素を満たすケースの方が多いかもしれません。

(3)組織全体を意識せざるをえない視座のプロジェクトに関わること

これは会社組織においてもオンラインサロンにおいてもその組織全体に直接関わるがゆえに全体を意識せざるをえないプロジェクトが当てはまります。また、ほぼイコールだと思いますが、部門を超えて各プロジェクトのリーダー(そのロールの人)と関わる機会があるプロジェクトも当てはまります。オンラインサロンにおいてはプロモーション・マーケティングに関わるプロジェクトや間接部門がそれに当たるでしょう。会社組織においてはそのような異動のケースは多くないように思いますが、別部門からという条件つきでオンラインサロンにおける「それら」の部門に異動し取り組んだ場合はこの条件を満たすように思えます。別部門からの・・・、という風にしたのは同じ部門、例えば営業部の部長になったとしても組織全体への所属意識を持たず、部分最適(自部門の利益の最大化)を図る人もいるからであり、その人の意識は部門を超えていないという意味で今回扱うレベルの所属意識に対して不十分だと思えるからです。

(4)3までを経た上での外部との交流

これは言い換えると、外部に対して自組織を説明する必要が生まれるということです。その機会が生まれることにより、結果としてその人の中に組織全体の代表(代わりに表に立っている)としての私という認識が生まれるのかもしれません。しかし、こう書くといやいや、プロジェクトレベルでも外部との交流や関わりってありえるでしょう。という意見が出てくるかもしれません。ですが、そこで芽生えている帰属意識はあくまでそのプロジェクトに閉じたものであり、部分最適な帰属意識と言えるのではないでしょうか。

これはそのプロジェクト・部門の目的が外部への発信・外部との交流である広報・PR部門も然りです。

つまり、「<組織名>の私です」と言っていてもそこには「◯◯部門の私」というリアリティしか含まれていないということです。

(5)すぐ抜けるのではなく継続すること

これは一言で言えば「一定期間」という時間の話なのですが、すぐ抜けるとかいたのはオンラインサロンなど、プロジェクト自体が出入り自由のケースがあるためです。

以上、この5つの要素を満たすことでその人は、お世話になった誰か・憧れている誰かといった「特定の個人」に対してだけではなく、会社・組織・コミュニティという「場」(ある人曰く「共同幻想」)に対して帰属意識を持つようになるのではないでしょうか。

この5つって◯◯に似てる?

この4つの要素を思いついてから少しして、この4つ自体があることに似ていることに気がつきました。それは、古くは2007年頃に帝王学について学んだときに教わった概念であり、2020年に「成人発達理論による能力の成長 ダイナミックスキル理論の実践的活用法」(加藤洋平著)を読んだときに似た内容が書かれていて驚いた概念でもあります。
 
その概念とは、図にすると以下です。

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これは「点・線・面・立体」の成長サイクルと呼ばれるものでカート・フィッシャーという発達心理学者が発見した法則性の1つと言われています。
 
簡単に説明すると、私たちのいかなる能力も、点から線へ、面から立体へ、その立体が再び1つの点となり新たな線へ、線から面へ・・という風に成長していくということです。

帝王学では点→線→面→球と最後が球になっていて、最後が立体となっている点で上記とは異なりますが、その球がまた次の点となって、というサイクルになっているという部分が一致していました。

フィッシャーは、私たちの能力は5つの階層構造を経て成長していくことを発見しました。詳しくは書籍を読んで欲しいのですが、この5つの階層構造に関連して「点・線・面・立体」のそれぞれの段階を以下のように定義しています。(注:厳密にいうとこれだけが定義ではないのですが分かりやすさを重視するためにシンプルにしています。)
 
点:単一要素段階
→事物の具体的な1つの特徴を言葉によって捉えることができる段階
 
線:要素配置段階
→事物の具体的な特徴を複数説明できる段階
 
面:システム構成段階
→ある事物を取り上げ、その事物の具体的な特徴を複数捉え、それらをまとめあげることができるようになる段階
 
立体:メタシステム構成段階
→抽象的な事物を認識することができる段階

4つの成長サイクルに当てはめてみた

上記を私の提起した5つの要素と照らし合わせてみると、人はまず(1)と(2)を経験すると、その組織を、自分が関わるプロジェクトという特徴と、それ以外の「◯◯なつながりが得られる」場所という2つの特徴で説明できるようになると言え、結果として点→線の段階を経ると言えます。
 
続いて(3)の「組織全体を意識せざるをえない視座のプロジェクト」に関わることで、少なくとも組織の全プロジェクトマネジャー層・ロールの人とのコミュニケーションが生まれます。そのプロセスを経ることで、線→面の段階を経ると言えるのではないでしょうか。
  
そして、(4)の外部との交流によって面→立体のプロセスが育まれていき、結果として組織全体の代表としての私という認識が生まれると言えるかもしれません。

さいごに

ここまで4つの成長サイクルと一致していると言えそうな5の要素の紹介をしてきました。
 
この要素を満たすことで人は組織の部分ではなく全体に対して帰属意識を持つようになるわけですが、裏を返せばこれらの要素を満たさずして部分としての自覚、全体としての自覚を持て!というのは無理があると言っていいのではないでしょうか。(言葉の暴力とさえ言っても過言ではないかも!?)
 
今回ご紹介したアイデアは、社内・コミュニティ内に対してじっぱひとからげにメッセージをするのではなく、期待をするのではなく、相手のフェーズ(発達段階と言っていいのかも)に合わせてメッセージをすることでより伝わりやすくなったり、どういう方向に向けて支援をしていけば求める結果が得やすくなるのかといった施策レベルでのアイデアが出しやすくなるものではないでしょうか。
 
普段は、進化型組織・自律分散型組織について書くことが多いですが、今回はあらゆる組織に共通したテーマについての考察を紹介しました。
 
参考になれば幸いです。



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