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【Good over 80!生涯現役の法則①】朝起きて、今日は何を作ろうかと考えるとワクワクします|斎藤勝さん・バッグ職人(85歳)

「人生100年時代」と聞いて、ワクワクしますか?どんよりしますか?
ライフシフト・ジャパンの調査では、「どんより」派が圧倒的で61.2%。その理由は複雑ですが、代表的な声として「年金では食べていけないからずっと働き続けなければならない」というものがあります。つまり働くこと=つらいこと。そんなつらいことをずっと続けなければならないことに気が重くなるというのです。

確かにお金のためだけに、やりたくもない仕事をし続けなければならないと考えると苦痛です。また自分が高齢になった時にどんな仕事ができるのかと考えると不安にもなります。けれどもそれが好きな仕事だったらどうでしょうか。自分のペースででき、人からも喜ばれる仕事だったらどうでしょうか。

ほぼ寝たきりの毎日から、82歳でバッグ職人に
今回、ライフシフターインタビューにご登場いただいた斎藤勝さん(85歳)は、「G3sewing」というブランド名で、がま口バッグを月に100個も生産販売する大人気のバッグ職人です。

「朝起きて、今日は何を作ろうかと考えるとワクワクする。こんな幸せなことはない」と語る斎藤さん。その言葉には斎藤さんだからこその実感がこもっています。なぜならば、斎藤さんがミシンに出会ったのは82歳のときで、それまではほぼ寝たきり。生きる気力もなく、毎日死ぬことばかり考えていたからです。

斎藤さんは元電気工事士。腕は確かでしたが、職人気質ゆえに取引先とケンカ別れをして45歳で無職になってしまいます。そこからは不運が続き、奥様と4人のお子さんたちは大変な苦労をします。そして68歳で大病をしてからは、一日の大半をベッドで過ごすようになり、精神的にも不安定に。些細なことで怒鳴りちらすなど、家族にとって厄介な存在となっていました。

それが娘さんからミシンの修理を頼まれたことをきっかけに、ミシンにはまり生活が一変。「職人魂」に火が付き、コースター、ファスナー付きバッグ、お財布とどんどん難易度の高いものにチャレンジしていきます。そして大きながま口バッグがTwitterでばずって注文が殺到。現在は朝5時に起きて、作業着に着替え、アームカバーをしてミシンに向かい、休憩をはさみながら18時過ぎまで作業に没頭する毎日を送っているのです。

収入、生きがい、健康。仕事があたえてくれたもの
寝たきりだった時代の斎藤さんの収入は月3万円の年金のみ。それだけではとても賄えない医療費を家族から援助してもらい、「生きてるだけで周りに迷惑をかける」という状態でした。けれどもいまでは安定した収入を得て、奥様に指輪をプレゼントしたり、日帰り温泉に行ったり、お孫さんにお小遣いをあげたりすることもできるようになりました。

なにより、自分が作るバッグを待っていてくれるお客様がいることが生きがいになっているといいます。商品を買ってくれた方からはお礼の手紙が届くことも多く、斎藤さんはそれを「ラブレター」と呼んで大切に保管しているそうです。

インタビュー時の斎藤さんの表情は実にいきいき。お肌の艶もあり、奥様や娘さんとも冗談を言い合うとても良い雰囲気。家族に疎まれ、早く死にたいと考えていた日々はもはや想像できません。

病気が治ったわけではないですが、長く「G3sewing」を続けるために、働くペースは無理をせず、栄養バランスを考えた食事や軽い運動をするなど、健康管理には気をつけるようになったといいます。とにかく生きる気力が大違い。働くことは健康にもよいことは明らかです。

好きな仕事は人を元気にする
なぜ斎藤さんがワクワクする人生を取り戻すことができたのでしょうか。それは好きなことを仕事にできたからにほかなりません。ミシンに触ったのは初めてでしたが、もともとエンジニアだった斎藤さんはモノ作りが好きでした。大人気のがま口バッグもエンジニアらしく、見本を分解して構造を把握し、独自の工夫で作っているといいます。

また素人だった斎藤さんが、1個1万円もするヒット商品をつくることができた背景には、優れたマーケティング力がありました。これは趣味の域を越えて、売れる商品を作るために欠かせないもの。「G3sewing」の場合、バッグのデザインは購買層に近い娘さんのアイディアが生かされていますし、ヒットのきっかけとなったTwitterはお孫さんからの提案で始めています。

確かな技術と若者の発想。この組み合わせが「G3sewing」成功の秘訣です。特に長く働き続けるためには、若者から素直に学ぶ姿勢は欠かせないように感じます。そして斎藤さんをみていると、なんだかとってもチャーミング。夢中でミシンに向かう姿や、お孫さんから古いパソコンをもらって一生懸命Twitterを勉強する様子は子どものようで、周囲が応援したくなるのもわかります。チャーミングな80代になること。これも長く働き続けるうえで大切なことのように思いました。

好きな仕事は人を元気にする。これは真実だということを実感したインタビューでした。人生100年時代は、否が応でも長く働き続ける時代。楽しいと思える仕事に出合えるかどうか。仕事を楽しめるかどうか。そこがワクワクとどんよりの大きな分かれ道なのでしょう。

斎藤勝さんに学ぶ「生涯現役の法則」
・好きなことを仕事にする。
・好きな仕事との出会いはどこにあるかわからない。好奇心を刺激されたらやってみることが大事。始めるのに遅すぎることはないし、自営業なら定年もなく自分のペースでできる。
・若者から素直に学ぶ。そのためにチャーミングな80代になる!

(ライフシフト・ジャパン 河野純子)


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