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【KX物語 第4話】kさん、「わがまま」では全くありません、と吐き捨てる。

 メガネをかけると、周囲の気配がなくなっていくのを感じます。聞こえていたJazzのBGMもフェイドアウトしていき、完全な静寂が訪れます。レンズのところは光を通さない仕様になっているようで、かけたときには真っ暗になりましたが、少しずつ明るくなってきます。
・・・なんだこれ。VRゴーグルみたいになっているのかな、、、
 気がつくと、kさんは、薄暗い部屋の中にいます。どうやら小さなログハウスの中にいるようです。照明はついていませんが、小さな小窓から木漏れ日が差し込んでいます。遠くに聞こえるのは鳥の鳴き声でしょうか。どうやら朝方のようです。
 どこからともなく、声が聞こえてきます。先ほどのマスターの声のようですが、落ち着いた声の女性のようでもあります。

 あなたは生き生きと働いていますか?
 仕事をしている環境や状態に満足しているでしょうか?
 もっとワクワク楽しく働くためには、
 何があるといいのでしょうか?

 ここまで聞いて気づきました。どうやら3人が同時に話しているようです。男性の声と女性の声が混ざっています。問いかけが続きますが、どうやらそれは誰かがkさんに語りかけているものではなく、この部屋のどこかにセットされている音響装置から発せられているようです。
・・・それにしても、またワクワクか、、、。聞きたくないお説教でも始まるのかなあ、、、
 あなたが今働いている“カイシャ”は、
 あなたに何をもたらしているのか。

 50の質問に答えて、
 あなたの心の中を映し出してみましょう。

 “カイシャ”を変え、人生100年時代の会社を創る
 KX カイシャ・トランスフォーメーションの
 旅に出るために。

 
・・・人生100年時代の会社? カイシャ・トランスフォーメーション?  なんだそれ、、、確か50の質問っていったよな?  さっきマスターも「人生100年時代、、、って、聞いて、どう感じますか?」って聞いてきたっけ。ここは、質問カフェかw、、、
 気がつくと、いつのまにかログハウスの壁にスクリーンが映し出されています。そこに、文字が浮き上がってきました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

さあ。それではさっそく始めましょう。

これから、50の質問が表示されます。
あなたが今働いている会社でのあなた自身の行動や状態、

普段思っていること、感じていることについての質問です。
当てはまるカードを選んでください。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 そして、4枚のカードが、スクリーンから抜け出てくるようにしてkさんの前に現れます。一番左のカードには、

 その通り! 

と書かれています。左から二枚目には、

 まあそうかな 

その隣にいくと、

 そうとはいえない 

最後のカードには、

 全く違う!

と書かれています。
・・・なんか、よくできたVRだなあ。かなりリアルなんだけど、、、
 kさんは、試しにそのカードに触ってみようと手を伸ばしてみます。しかし、触ろうとしたところで、カードは姿を消しました。見ると、消えたカードの先にあるスクリーンに表示されている文章が変わっています。そこには、こう書かれています。

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会社の中では、自分がどうありたいか、どうしたいかを意識したり自覚したりする機会が頻繁にある
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 そして、再び4枚のカードが姿を現します。kさんは、迷わず一番右の「全く違う!」と書かれたカードに手を伸ばしました。今度は触ることが出来ました。
・・・そんなの、あるわけないでしょうが、、、上から降ってくるものをいかに捌くか、っていうのが仕事でしょうが、、、
 スクリーンには、次の質問が表示されています。kさんは自嘲気味に笑うと、再び一番右のカードに触れます。触れると同時に、カードのセットは消え、次の質問がスクリーンに映し出されます。
 それを10回ほど繰り返したでしょうか。右から二枚目のカードに触れ、まだこれが続くのかな、と少し憂鬱な気分になっていると、突然スクリーンが消えます。そして、また例の声が聞こえてきます。

 ここまでの10の質問に答えて、
 あなたは今、何を感じているでしょうか?

 続きの声を待ちましたが、何も聞こえてきません。薄暗い部屋の中に取り残されたような形になったkさんは、しかたなく先ほどの質問内容を頭に思い浮かべはじめました。
・・・「全く違う!」とか「そうとはいえない」ばっかりだったなあ。こんな質問に「その通り!」なんて答える人、どこかにいるの?  社長や役員ならそうかもしれないけどさあ。そんな、自分の思い通りにできる会社なんてないって。うちの部長だって、イエスマンだしさあ。あ、でも、「その通り!」って答えた質問もあったな。「気がかりなことがあっても、しかたないとやり過ごすことがよくある」だったかな? あるある!!  いつもそう、、、
 すると、沈黙を破ってまた声が聞こえてきます。

 あなたは、わがまま、、、でいられているでしょうか?

 「わがまま」という言葉の発音は、先ほど先客の女性が発音していたように「わ」の部分にアクセントがくる変な発音です。

 あなたが、そして、会社のメンバー一人ひとりが、
 自分らしく、あるがまま、
 素の自分でいられているでしょうか?

・・・なるほど、「がまま」ってそういう意味か。少し前からよく聞く心理的安全性みたいなことを言ってるんだよな。確かに、そういうような質問だったな、みんな。だったら、はい、お答えします。「わがまま」では全くありません。以上!
 最後の方は吐き捨てるように口に出して、kさんは肩をすくめました。
 すると、またスクリーンが映し出されます。次のシリーズが始まるようです。そして、こんな文章が浮かび上がってきたのです。

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この会社には、いろいろな才能、性格、ものの考え方の人がいると感じる
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(つづく)


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