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やりたいことにチャレンジ! -仕事や子育てに忙しい全ての女性に輝きを-

女性にとって大きな転機となるのが結婚、出産。
創業百余年、京都で唯一の青貝・螺鈿専門店を家業として営み、職人として伝統工芸の技術を生かした大人の男女に向けたジュエリーを製作する のむらまりさん もその一人です。商社勤務から職人へと転身した経緯や仕事と子育てについての思いを伺いました。

【目指したのは、伝統工芸らしくないもの】

ーーーばらの花をモチーフにしたジュエリー、とても繊細で美しいですね。

伝統工芸らしくないものを作りたかったんです。商社勤務をしていた頃は、周りに伝統工芸品はありませんでした。家業でもこれまで螺鈿のジュエリーというとマダムの方が主に利用されていて大ぶりのものが人気でした。そこで自身の経験から、オフィスでも身につけられるような華奢なジュエリーを作りたいと思ったんです。

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ーーー伝統工芸というと和のイメージを抱いてしまうのですが、ばらにしようと思われたのは何かヒントがあったのでしょうか?

商社の先輩がばらのハンドクリームを使っていてすごくいい香りがしたんです。海外ではプレゼントにばらを贈るイメージもありましたし、シャネルのカメリアモチーフとかオシャレだなと思っていました。完全にイメージ先行です(笑)。

ただ元々螺鈿の中にモザイク模様のものがあるのを見ていたんです。そこで伝統工芸士である父に、モザイク調に貼っている貝を「こうやって、こうやって…(と花びら模様になるように)作ってみたい」と伝えて製作してみたのが始まりです。

ーーーアイデアを気軽に伝えられるのは親子ならではですね。このばらのジュエリーで2014年京ものユースコンペティション準グランプリを受賞されています。どのような方に向けて作られているのでしょうか。

大人の女性に身につけてほしいですね。仕事や子育てに忙しい全ての女性にキラキラと輝いてほしいと思っています。

ーーー手の届くお値段というのも嬉しいですね。

美術館や博物館に行けば、とても豪奢な工芸品に出会います。観賞することはできても手に取ることはできませんよね。観るものから使うものへ変えていけたら嬉しいです。

【気がつかないうちに、一生懸命】

ーーー家業に入るまで伝統工芸の勉強はされてなかったんですよね。職人への道に進まれたのは何か思いに変化があったのでしょうか。

実は家業に入る前に伝統工芸の商品開発の運営に携わる仕事をしていました。

そこでは本当に素晴らしい工芸品に出会いましたが、ファシリテーターの先生と職人さんのやりとりを見ていて、どれだけ手間暇をかけて上質なものやデザイン性に優れたものを作っても、知ってもらわなければ買ってもらえないのだということに気づきました。この経験から、まずは父の作る商品を知ってもらいたいと思って家業にもどりました。

ーーーなるほど、最初は知ってもらいたいという思いからだったのですね。では製品を作り始めたきっかけは何でしょうか?

ホームページを作ろうと思い父に話を聞くのですが、わからないことも多かったんです。そこで父と一緒にセミナーに参加したりしました。そんなことをしているうちに、友人から「そんなに一生懸命にしているなら自分でも作ってみたらいいやん」って言われたんです。モノづくりは得意ではなかったんですけど、まぁやってみようかという感じですね。

ーーーご友人の目にはまりさんの姿が一生懸命に映ったんですね。自分でも気がつかないうちに一生懸命になっているものだからこそ楽しく取り組めるのかもしれませんね。

【自分ってなんなんだろう…出産で生まれた葛藤】

ーーー職人への道を歩みながら、同時期に出産も経験されています。苦労や葛藤もあったのではないですか?

準グランプリをいただいてミラノ万博に出展したタイミングでの出産だったので、不安や悩みも大きかったです。「これからやのにって思われるかな」とか、実家で働いているので「赤ちゃんのお世話をしながら働けるかな」と思っていたのに、蓋をあけてみたら全然できなくて。CMの赤ちゃんってずっと寝てるけど、うちの子は全然寝ない。仕事とどう向き合ったらいいんやろうって抱えていました。

仕事が完全に白紙になったっていう感じがして、子どもが生まれてハッピーだったんですけど、仕事とのバランスを一人で抱えて頑張っていましたね。何回言葉にしようとしても難しいですけど。

ーーー私も同じ思いをしていたのでわかりますよ。子どものことは大切だし、大好きだし、とても幸せなんですけど、仕事の話をすると子どものことを否定してしまうような感じに捉えられないかと思ってしまうんですよね。でもそうじゃなくて、仕事は仕事、子育ては子育てなんですけどね。

一人で考える時間がありませんでした。のむらまりが消えて○○の母でずっとやっていたから、どんどんどんどん、自分ってなんなんだろうみたいに思ってしまって。仕事でもその感覚がずっとありました。ようやく今年の3月になって感覚が戻ってきたんです。長いですよね。

ーーーようやくエネルギーが軽くなってきたということですが、子育てをしている女性、これから経験する女性に向けて、伝えたい想いはありますか?

そうですね…。最近、畑を始めたんです。やりたくて始めちゃいました。私としては女性一人としてやりたいことをやる時間をもってほしいなって思います。少しづつでもいいから自分を大切にしてもらえたらいいなって私自身も含めてそう思いますね。

ーーー自分を大切にする時間、大事ですよね。まりさんとお話していると力強く前を向いていこうというエネルギーを感じます。それでは最後に、今後このようにしていきたいなとか、伝えたい想いがあれば教えてください。

私のところは工房だけではなくてお店もありますし、体験もしていただけます。今はわからないことは調べればすぐに情報を得ることはできますが、直接見たり触れたりすることで得られるものってあると思うんですね。螺鈿や伝統工芸に限らず、いろいろチャレンジしてみてほしいですね。工房の経営理念が「心が穏やかになるものをつくる」なのですが、商品を通して、また、お店でお話したり体験していただく中で、そういった時間を提供できたらいいなと思います。

野村のれん2

ーーー物ではなくて時間を提供されているというところ、とても素敵だなと感じました。貴重なお話をありがとうございました。

おわりに

やってみたいと思ったことは難しく考えずに飛び込んでみる、そんな勇気が私たちママには必要なのかもしれませんね。敷居が高いイメージのある伝統工芸の世界でしたが、お店では穏やかな笑顔で迎えていただき、わからないことも丁寧に教えていただけました。何かを始めるきっかけに、まりさんの笑顔に会いに、訪れてみてはいかがでしょうか。

【基本情報】   
嵯峩螺鈿・野村 (https://sagaraden.com/
〒616-8422
京都市右京区嵯峨釈迦堂前大門町26

(聞き手:満たされLIFE Re:デザインルーム 今井佳恵)

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