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穀雨|2023.4.20-2023.5.5

日々の食卓、食卓での会話、食材やレストラン、食に関する本や映画、イベントなど、食にまつわることだけ書く日記のような「食雑記」。節気毎に更新。

4月20日(木) 素麺の「はしり」

昼食はツナトマト素麺。夏まっさかりのメニューが、4月にお目見えしてしまった。そこに、ツナとトマトと素麺があったから、というのが恋人の弁。食卓で自分の感覚とは裏腹に季節が前倒しされると、なんだか焦ってしまう。とはいえ「はしり」のツナトマト素麺、意外と美味しかった。

4月21日(金) アルタイ山脈の蕨料理

夕食はひとり。台所でワインを飲みながら料理して、立ったまま食べる方式。灰汁抜きしたワラビがあったので、数年前、先住民族テッラマードレというフォーラムでアルタイ山脈の先住民族の料理として出会ったワラビ料理を。ニンニクか玉葱としっかりの塩で炒めてあって(もしかして塩蔵したものを使うのかも)、今度ワラビを食べるときにはつくってみようと思い続け、ようやく叶った。改めてアルタイ山脈ってどこかと調べてみると、モンゴルの西の端だった。ワラビが生えてくるところではみんな、それぞれの食べ方でワラビを食べてきたんだなと遠く離れた場所に思いを馳せる。白ワインにとてもあう。

4月22日(土) 料理の「らしさ」

残りもの消費の夕食。私は半端な量の木綿豆腐に、乾物入れに忘れ去られていたヒジキ、人参の葉を刻んで真薯に。本来なめらかな料理のはずなのに、めちゃめちゃ食感が豊かで、恋人に「こんな料理ですら、らしさがでるね」と言われる。適当な料理まで、いやむしろ、適当な料理だからこそ、性格がダイレクトにでてしまう。

4月23日(日) 夢のような庭と初めての枇杷

個人宅のお庭を一般公開するイベント、宝塚オープンガーデンフェスタ。チラシをもらってきたら、同じ町内に参加しているお庭があったので、でかけてみる。エントランスからして素敵だったのだけど、入ってみてびっくり、住宅2軒分の敷地を生かして森のような庭が広がっていた!多様な草木が植えられているけれど、レモン、イチジク、キウイ、山桃、グミまである!!この造成土壌の住宅地でこんな自然らしい庭が成立するとはびっくり。庭主の素敵なおばさまにお話を伺うと、隣家の敷地を購入して、まず土をつくるのに3年かけたそう。敷地全部を30cmの深さで自力で掘り起こし、宝塚のリサイクルセンターで無料配布されている腐葉土を漉き込んだという。北海道で暮らしていたことがあり、好きな土地だそうで、なんとなく北の気配を感じる植生。関西に来て初めて、木々の中で落ち着いた気持ちになれた。同じ町内の我が家の庭でだって、できないわけではないとわかってしまったけれど、この私には全然できる気がしない…。

高揚感と絶望感が入り混じったおかしな気分で我が家の「食べられる庭」に帰ってきたら、1年半前に植え付けた枇杷の樹に初めて実がついてた!

4月26日(水) カレーうどん

雨の日の病院帰り、昼食は駅の近くの老舗洋食屋に行ってみたいと思ってたけれど、寒いし、時間もないしであきらめる。洋食の口と胃になっていたのを、なんとか宥めなくてはと、駅を見回すと「若菜そば」が。こんなに「カレーうどん」というメニューに感謝したことはない。あっけらかんとした前向きな味と温かさに、検査結果に落ち込む気持ちも少し紛れた。

4月27日(木) ラムと山ウドの炒めもの

またまた夕食はひとり。ひとりの夕食は実験のチャンス。キンピラにしようと思っていた山ウドの細い軸や皮を、ラムと合わせて炒めてみた。久しぶりに発見した黄金の組み合わせ。強い個性の食材同士がお互いに引き立てあって、スパイスなし、塩だけで完全にバランスしている。これは毎年の定番にしたい。というか、庭にウドを植えたい(というか、去年植えたけど枯れた…)。

4月28日(金) 卵がなくたってチャーハン

昼食はひとりでキムチチャーハン。普段、強火料理は恋人担当なので、久しぶり。卵がないことに気づいたけど、キムチの汁を焼き付けるように使ったらパラパラに美味しくできた。帰ってきた恋人に、卵がなかったけどチャーハンつくったよと伝えたら、こっちがびっくりするほど、びっくりしていた。ある料理をキーになっている食材なしでつくるのは、私にとっては創造と思えるけど、彼にとっては冒涜であり、無謀なことらしい。

4月29日(土) 豆シーズン到来ときなこ醤油バニラ

週末の買い出し。本格的に豆シーズン到来。空豆、ウスイエンドウ、仏国大莢という大ぶりのサヤエンドウ。

大箱で買ったバニラアイス。バニラの風味が強めで、ジャムとのあわせも意外に難しく、しばらく食べられていなかったのだけど、知恵を絞って新しい食べ方を発見。きなこをたっぷりかけて、醤油をひとたらし。香ばしさと塩味で、それぞれの味の要素が強いままバランスして、アイス売り場の和風アイスみたいな味に。たくさんは食べられないけど、これはこれで美味しい。

4月30日(日) 筍の乳酸発酵と空豆ごはん

筍の乳酸発酵漬けをつくる。孟宗筍は北海道には存在しないので、私にとっては新しい山菜だ。関西の人が山菜と思っているかは微妙だけど。今年3回目の筍を買って、ついに筍の乳酸発酵漬けをつくる。3%の塩水漬けと10%の塩を入れた米のとぎ汁漬け。姫皮は全部塩水漬けにしてみる。久しぶりに実験気分でワクワクする。ふと、川西のFewというインド&ネパール料理のお店で、酸味と旨味が強いけれど、何かわからない食材が使われていて、たぶんシェフに聞いたら筍の漬けたものと言われたのを思い出す。
夜は初めて、空豆ご飯を炊く。空豆の美味しさは3日というから、1袋全て炊き込む。塩加減もちょうどよく、豆の存在感が効いている。美味しい美味しい、とおかわりする。ところが、洗い物をしていたら突然お腹が痛くなりトイレに駆け込む。空豆食べ過ぎで腹痛が起こることがあるらしい。

5月1日(月) 春キャベツと筍とウスイエンドウのスパゲッテイ

朝食に、春キャベツでコールスローをつくる。やわらかさ、みずみずしさも違うんだけど、やっぱりなんとなく細胞の感じが違う。ハリがあるというか。お肌と一緒。関西に引っ越してきたばかりの頃、お好み焼きの旬っていつ?と聞いて笑われた。改めて考えたら、あんなにたくさんキャベツを使うのに、お好み焼きが野菜料理という認識はないのだ。でも、季節でこんなにキャベツが変わるなら、お好み焼きも変わるはず。いつか季節の野菜料理としてのお好み焼きをつくってみたい。

昼食、筍とウスイエンドウのスパゲッティ。関西に来てはじめて、旬の食材の組み合わせなのだとわかる。グリンピースは冷凍、筍は水煮の世界ではわからなかったこと。

5月3日(水) 今年初のラタトゥイユ

今年もラタトゥイユの季節がやってきた。恋人のスペシャリテの少しスパイシーなラタトゥイユ。スナップエンドウが入っているのが、この料理のはしりっぽい。

5月5日(金)  本のイベントとビリヤニ@神戸

神戸C.A.P.のカフェsumicoにて、SUMICO BOOK FAIRという本のイベントに参加する。私は食卓文庫「北の女が食べる西」「続・遠くの食卓 兵庫と栃木、一冊の往復書簡」を持って。前に本屋で見かけて気になっていた旅のzineのつくり手さんと出会ったり、「目の見えない白鳥さんとアートを見にいく」を介して、素敵な編集者さんと出会ったり。
はじめての訪れたC.A.Pの建物(最初はブラジルに移民する人たちの出発前の滞在施設としてつくられた)は、船内を思わせる意匠も含めて、世界に開かれた港町の歴史を空間全体で感じさせる。また少し、神戸という土地に触れられた気がした。

夕食を食べて帰ろうと、ナーンインというパキスタン料理店に行く。ビリヤニが美味しいらしく、ヒジャブをしたパキスタン人と思われる先客2組ともビリヤニを食べている。チキンのビリヤニと豆のカレーを頼んだ。運ばれてきたビリヤニの上には巨大なローリエ。パスマティライスの香り、スパイスの香り、それとは違う何か別の香りも含まれていて、ビリヤニって香りの料理なんだということに初めて気づいた。すばらしい食体験だった。




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