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夏至|2023.6.21-2023.7.6

日々の食卓、食卓での会話、食材やレストラン、食に関する本や映画、イベントなど、食にまつわることだけ書く日記のような「食雑記」。節気毎に更新。

6月21日(水) 台所アルへ行く

手術後はじめての外来診察の帰り、自分に優しく、と『台所アル』へ行く。ここは、ずいぶん前に知人が「とっても美味しいごはんをつくる人」と紹介してくれたひさえさんのお店。茶事料理人の半澤鶴子先生のところに通っている(私もかつて通っていた)という共通点もある。オンラインでは、メッセージをやりとりしたり、料理の写真をみたりしていたけど、ようやくリアルに会って、ごはんを頂くことが叶う。
アンティークのテキーラグラスに注がれた梅シロップ。漆塗りのお膳にのったご飯とお味噌汁と糠漬け。自家製ツナに、イワシの天ぷら、鶏じゃが。お料理の上には摘んだばかりの、食べられる花や若葉が添えられている。どれもしみじみ美味しくて、気持ちが満ち足りる。お店ではあるんだけど、いわゆるお店では食べることができない味。言葉にしたらそのまんまだけど、人が人のためにつくる料理。こんな料理を食べると、確かに身体の中からじんわり癒えていく感じがする。
カウンター越しにいろいろなおしゃべりもして、秋になったら鶴子先生のところに一緒に行きましょうと約束する。

6月23日(金) 白派と赤派

自然派ワインを飲むようになってから、圧倒的に白ワインを好むようになった。ワインを通して、土壌を味わっているかのような気持ちになる、あのミネラル感がたまらないのだ(実際のところ、いわゆるミネラル感と土壌成分中のミネラルとは関係ないらしい)。私がつくる野菜料理にも、白ワインがしっくりくることが多い。
一方、恋人にとって、ワインというのは赤ワインである。白ワインはワインではない、とは言わないが、全然満足感が違うらしい。そうなると、いつもワイン選びは難航する。
久しぶりに川西阪急のワイン売り場にいったので、私が白派でパートナーが赤派なのだけど、そんな時の白ワインの選び方は、とワインアドバイザーに相談したら、うちもそうなんですと。赤派vs白派のカップルは意外と多いらしい。いろいろな妥協点の探り方を提案されたけど、今回はミネラル感の強度で飲みごたえを確保するという戦略で、店員さん一押しの生産者ロマーノ・ニコラのフィアーノ・ディ・アヴェッリーノを。結果は、恋人もまあ満足、といったところか。赤派vs白派のせめぎ合いはこれからも続きそう。

6月24日(土) もぎたてトマトの温度

朝食に庭のトマトを穫ってきて食べる。もぎたてを食べるのって何が違うかって温度なんだって思い出した。常温というのとは違う、太陽の「ぬくみ」みたいな不思議な温度感。小松菜のサラダには、青紫蘇の薹が立たないのように摘んだ穂を、ふりかけた。お腹いっぱいにはならないけど、少しずつ「食べられる庭」に近づいている。

6月26日(月) 健康でみずみずしい筋肉を食べる

鶏胸肉は値段の違いがはっきり出ると、PFC(栄養素)バランスのアドバイスをもらった美味しいもの好きの友人に言われてから、ずっと試したいと思っていた近所の鶏屋さんに行く。大山どりの専門店で、鶏胸肉税込110円で特売というPOPがついている。ちなみにもも肉は220円。胸肉を2枚買って帰って、1枚は鶏ハムを仕込み、1枚は唐揚げにしようということになる。「揚げ物?」と一瞬ピクッとなったが、恋人の鶏胸肉を一番美味しく食べられる料理は唐揚げという持論と、いつもと同じ料理で試さないと違いがわからないという真っ当な意見に、納得する。
そして、唐揚げができあがる。今回はストレートに一度揚げ。一口かじると、肉汁が、というより鶏スープがじゅわーと染み出す。スープを湛えたお肉という感じ。そして、サクリッという歯応え。筋ばってたり、凝ってたり、噛んだ時にヘンにひっかる感じがない。かといってふにゃと頼りない歯応えでもない。健康な筋肉と言いたくなる感じ。いけないものを食べてしまった。スーパーの胸肉に戻れるかな…。

7月1日(土) フェット・ド・ラ・ミュージック

フランスで夏至の日に行われる音楽の祭典にちなんで、食べもの、飲みもの、音楽の持ち寄りパーティ。こういうテーマを存分に楽しんでくれそうな人にお声がけして、私たちふたりも入れて12人。こんな機会がなければ出会う機会がないような人々が集って、パーティの醍醐味を味わう。ホストの食べもの担当としては、ゲストがもちよった食べものを、いいタイミング、気のきいたコミュニケーションで食卓にのせていく技術を磨きたい。写真を1枚も撮っていなかったのは、きっといいパーティだった証。

7月3日(月) キャベツのサラダ

パーティと暑さで胃腸が弱っているのか、猛烈にキャベツが欲しくなる。最近よくつくるのは、キャベツの千切りを塩もみして、クミンシードをたっぷりいれて、オリーブオイルとレモンでマリネしたシンプルなサラダ。イタリア郷土料理のレシピ本で、トレンティーノ・アルト・アディジェというイタリアの最北の州の料理として紹介されていた。キャベツとクミンは本当に素晴らしい組み合わせで、世界各国にこの組み合わせの料理がたくさんあるのが納得できる。安く手に入りやすくて、どちらも胃腸を健やかにする食材であり、気取らないけど才色兼備の一皿。こういう料理は大好きだ。



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