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食雑記

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日々の食卓、食卓での会話、食材やレストラン、食に関する本や映画、イベントなど、食にまつわることだけ書く日記のような「食雑記」。節気毎に更新。
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2022年2月の記事一覧

涙のスパイスチョコレート

先日、記憶にある限り人生で初めて、トリュフチョコ(ガナッシュを丸めてコーティングしたもの。以下トリュフ)をつくった。昔から、世のバレンタインデー狂想曲には乗り切れないところがあって、そういう状況はなるべく避けていたのと、料理とは違って、きっちり計量、小まめに温度管理、順序が大事、途中で修復難しい、というトラップ多めのお菓子づくりはそもそも向いていないと、できる限り近づかないようにしてきたからだ。 去年は、恋人がバレンタインデーに留守していたので、近いタイミングにテリーヌドシ

世界の家庭料理を食べられるお店ーカフェ・サパナ

半年に1回、大阪豊中のクリニックに通っている。この年になると、通わないといけない病院はいくつもあって、うんざりすることしかないのだけど、豊中のクリニックだけは違う。なぜなら、セットで通っている大好きなお店があるから。 お店の名前は「カフェ・サパナ」。地域に暮らすいろいろな国の人が、日替わりでランチを提供している。国際交流の会とよなかというNPOさんの運営。素晴らしい。豊中に行くときは、まずはFBページで公開されているカフェ・サパナのカレンダーを確認して、食べたい国の料理の日

チリメンキャベツのシンプル料理

5年くらい前に、東京の自宅で「水曜日の食卓」という、残業で外食が続いている人のための食卓/食堂をやっていたのだが、一番最初の日につくったのが、チリメンキャベツ(サボイキャベツ)でつくる、イタリアのロールキャベツだった。結局、その日はノーゲストで、近所に住んでいた妹とふたりで完食した。ゲストがこなくて残念だった気持ちが、あまりの美味しさでふっとんだ。 このキャベツの特徴はしっかりと煮ないと、全然美味しくないこと。一度、急いでいて、しっかりと煮込まなかったときには、別の野菜かと

ブロッコリーを煮崩す料理

私が人生で一番何度もつくった料理は、たぶんブロッコリーのパスタだと思う。理由は単純で、イタリアでその料理を知って、つくりはじめたのが20歳くらいで、一番長くつくっている料理だから。自分がその美味しさに感動して、長くつくっている料理が、食材ひとつだけでつくる料理というのは、なんだか運命的な気がしなくもない。 まあ、それは置いておいて、先日、インド料理店でこのブロッコリーのパスタに似た料理を食べた。梅田のグランフロントに入っているエリックサウスだ。4、5年前、東京で暮らしていた

柑橘の塩漬け

昨晩、ふと思いついて参加した、イタリア食文化のオンラインセミナーで、塩レモンが登場した。南イタリアのアマルフィで暮らすイタリア人の講師は、毎年庭で大量に実るレモンを塩レモンにするというのだ。 塩レモンは大好きな調味料だ。レモンと塩と時間さえあれば、他のものには真似できない味がつくれる。今使っているのは、もう何年も前に漬けた年季の入ったものだが、基本モロッコの調味料と思っていたので、モロッコ料理やペルシャ料理にしか使ってこなかった。なので、イタリアでも発酵調味料である塩レモン

白菜と豚バラの煮込み

食材がひとつだけの料理が好きだ。理由は、たったひとつの食材で、こんなに複雑な味のものができるのか、こんなにいろいろな味が共存するのか、と毎度びっくりできるからだと思う。私がたぶん人生で一番つくっているブロッコリーのパスタも、ここ数年、私らしい料理とよく言われる蕪のまるごと焼きも、食材はひとつ。人参のオーブン焼きもそう。 どの料理も、調理はシンプルで、焼くだけ、煮るだけ、なのだけど、ひとつの食材を丸ごと使っているので、料理の中にいろいろな味と姿が現れる。葉や根や茎という部位の

優しい声とキムチの味

節分の日、関西に引っ越してきてから、はじめて鶴橋商店街に行った。鶴橋には、もう20年近く前に、当時の恋人に連れられて焼肉に行って以来だ。東京に暮らしていた当時は、鶴橋がコリアンタウンであることもよくわかっていなかった気がする。 JR鶴橋駅の改札を出て、直結している商店街に入る。びっくりするくらい通りが狭くて、戦後の闇市の歴史を感じる。そんな風につながったのは、ちょうど1年くらい前にミン・ジン・リーの『パチンコ』を読んだからだ。 今回、鶴橋商店街に行った理由は、韓国のある料