食材を生き物としてみる|木
食についての本を紹介しようと思って、木についての本を紹介するのは、少し奇妙に思われるかもしれない、と思いつつ、それでもやっぱり選んでしまったのは、幸田文のその名も「木」という本。
この本は、幸田露伴の次女である著者が、日本中の様々な木に会いに行き、その生き様について、生々しく綴っているエッセイ。例えば、一編目は、北海道のエゾマツの倒木更新のこと。自然林の中で、一本の木が生命を終えて倒れると、倒木の上に乗った種が、一筋開いた空から太陽の光を掴んで芽吹き、一直線上に新しい木々が