見出し画像

タデウス・ゴラス「なまけ者のさとり方」

「なまけ者のさとり方」という本を読む。1988年初版なので、もう14年前の本であるが、ドイツ、フランスでも翻訳され、本国アメリカでは、50万部に達する長期的なベストセラーを続けている名著です。それにしても、「なまけ者のさとり方」とはうまいタイトルをつけたものだと感心する。人間って、どこかで自分のことを「なまけ者」だと自覚しているわりに、「さとりたい」というわがままな願望も持っていたりする。もし、怠けていても悟れる方法があるとしたら、それはひじょうに興味深い内容と思うわけです。

というわけで、「なまけ者」のわたしくも思わず、そのタイトルにひきつけられ、Amazonでオーダーするに至ったわけです。とはいえ、この本は精神世界に関連する書籍の翻訳で有名な山川夫妻の翻訳本で、これまでにも何回か目にする機会もあり、必然的に今読むべきタイミングで出会った本のようにも思う。 内容的には、まさにわたしのような「なまけ者」でも、真実を理解していくプロセスをひじょうにわかりやすく述べてあり、ある種の「さとり」のような物事のとらえ方を見つけるための数多くのヒントを提供してくれます。

まず、前提となる考え方として、『人間を含めた生命の基本的な営みは「拡張」と「収縮」の繰り返しであり、そのプロセスにおいて発しているある種の振動波としてのバイブレーションによって、その生命の状態が決まっている』ということで、自分の「意識」がどのバイブレーションのどの波長の状態であるかを知ることがポイントになる、とのことです。

つまり、「意識」が「拡張」すればするほど、物事の見方は柔軟に広がり、「意識」が「収縮」すればするほど、物事の見方は狭く堅くなっていくという原理です。「意識」が「拡張」するにつれバイブレーションの波長は高く細やかになり、ほかのものとの抵抗や摩擦が減り、すべてのものと一体感が生まれる。それに対して「意識」が「収縮」するとバイブレーションの波長は低く粗くなり、物質的な「かたまり」としての抵抗や摩擦や圧迫感が生まれ、すべてのものとの隔離感が生じるということです。これは「意識」をある種の物理現象としてとらえた説明ですが、論理的にも納得のいくわかりやすい説明のよう思います。

ほかにも、「構造体の法則」というものがあり、「構造体は構造体として完成したときに崩壊する」という原理があります。例えば、 「地上を支配した生物は絶滅する」 「権力は腐敗する」 「善人は若死する」 「細胞は2つに分裂する」 「天才は狂気に走る」 というように、物事は常に変化するもので、絶対の安定はありえない、ということです。そういった自然の原理・原則をふまえた上で、物事をとらえていくことが大切なのだと思います。

ほかにも、いろいろ面白い考え方がいくつかでてきますが、この本の重要なポイントのひとつとして、何事にも「さからわないこと」というキーワードがあるようです。「意識」を「拡張」すれば、何事にも抵抗する必要のないことに気がつき、あるがままの自分やあるがままの社会をオープンに受け入れることができ、人や社会を多面的にとらえ、そのままを愛すれば、心に平和と幸福が訪れるようです。是非そういうふうに、悟ってみたいものですね。
「なまけ者のさとり方」

この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?