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きょう心にしみた言葉・2023年7月3日

この日記を書き始めたときには、もう自分は終わった人間と思っていた。過去が現在を奪い、未来などあるとは思えなかった。でもこのところ少しずつではありけれど、自分という人間を再生させつつある。もう一度生きるために。

「終盤戦 79歳の日記」(メイ・サートン・著 幾島幸子・訳 みすず書房)

詩人で作家のメイ・サートン(1912~95)は、ベルギーで生まれ、4歳の時に戦火をのがれ家族でアメリカに亡命しました。著作活動の一方で、58歳の時に書いた「独り居の日記」から「82歳の日記」まで計8冊の日記作品を発表しています。「終盤戦 79歳の日記」は、その6冊目にあたります。

 一連の日記には、彼女の苦悩も綴られています。
「今が最悪の状態」「今や絶望の淵にいる――毎朝、泣きながら目ざめるという始末」「時おり、唐突に、家族のいないわが身が惨めでたまらなくなる」
そんな彼女を救ったのは、日記でした。
「書くことは自分を支えることだ」
「この悲しいほど精彩に欠ける日々なかで、私にとって”ただひとつ”のことは日記を書き上げること。それができないと、自分が用なしになった気分に陥ってしまう」

サートンは、孤独を愛しました。孤独は決して怖いものではないことを、8冊の日記は教えてくれます。
サートンは、こんな言葉も残しています。
「寂しさは自己の貧しさで、孤独は自己の豊かさよ」(「ミセス・スティーヴンズは人魚の歌を聞く」)

言葉を紡ぐことで、孤独は豊かな時間になり、紡いだ言葉によって、生きる力を得ることができる。言葉の力を教えられます。


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