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ライフリンク・メディア報道・新聞の社説から①

2011年9月6日のニュースサイト「あらたにす」(朝日・日経・読売よみくらべサイト、現在は閉鎖)に、清水康之代表の寄稿「自殺対策報道 新聞社説に期待する」が掲載されました。その中で清水康之代表は、次のように提起しました。

日本の大手新聞各紙は、自殺の問題をどう捉え、自殺対策における報道の責務についてどう考えているのか。『世界自殺予防デー』の社説を過去5年分調べたら、自殺問題について触れているものはひとつも見当たらなかった。残念と言うか、何と言うか。日本では9月10日から16日までが「自殺予防週間」になっている。未曾有の震災から約半年がたつが、まだ不自由な生活が続く被災者や遺族のサポートも喫緊の課題だ。自殺対策が大きく進展している今こそ、各紙の社説に期待しよう。

自殺対策をめぐる社説は、自殺対策基本法が成立した2006年前後、自殺対策大綱が定められた2007年前後にはよく掲載されていました。しかし、清水康之代表が指摘する通り、この寄稿前の数年間は掲載頻度が少なくなっていました。この後、また増え始めることになります。ややもすれば堅苦しい印象を持たれがちな社説ですが、テーマごとに問題点が簡潔に整理され、解決策の道筋を示そうとしています。各紙の社説を見ていきます。

「自殺対策大綱 追い込まない社会を目指そう」(2007年6月10日 毎日新聞)

大綱は▽自殺は個人の問題ではなく、社会的要因により心理的に追い込まれた末の死▽制度の見直しや相談体制の整備など社会的取り組みで防ぐことが可能▽自殺を考えている人のサインを周囲が気付くことが課題――との基本認識を掲げた。ともすれば個人的問題と片付けられがちだった自殺を社会的問題と位置付け、予防は可能ととらえた意味は大きい。一人一人がそうした認識を持つことが自殺の根絶に向けた第一歩となる。

重点施策をいかに実行するかが課題だ。90年に自殺死亡率が30・3人まで高じたフィンランドでは、徹底した実態解明と啓発事業などに国を挙げて取り組み、04年には20・3人と33%も減少させた。動機面などの調査研究は日本ではまだ緒についたばかりだが、NPO法人「ライフリンク」などが近く自殺者1000人の遺族らを対象に大掛かりな調査に乗り出す。国も支援を惜しまず、官民で実態解明に当たってほしい。


「自殺3万人 遺族にもっと支えの手を」(2009年12月30日 朝日新聞)

遺児の支援をしている、あしなが育英会の自殺遺児の文集は「自殺って言えなかった。」と題されている。筆者の若者のひとりは「家でも外でも、死んだお父さんのことは全く話題にしなくなった。最初からいなかったようになった」と話す。友達にも悩みを打ち明けようがない。ライフリンクの自殺遺族聞き取り調査によると、4人に1人は「死にたい」と答えている。

 1990年代にようやく遺族が苦しみを分かち合う活動が広がった。「自分だけではなかった」と知り、心を落ち着ける人が少しずつ増えてきた。
 とはいえ、まだ全国で約80の組織があるだけだ。参加者は数千人にすぎないだろう。遺族が集まる場所や、安心して話し合える雰囲気をつくれるリーダーが求められている。自治体にも手助けしてほしい。

「自殺者3万人 安全網の強化急げ」(2009年4月8日 京都新聞)

日本の自殺率は欧米先進国と比べて突出している。「救える命は救う」という新たな決意で国や自治体、企業、地域は取り組んでもらいたい。

自殺に至った人は、生活苦や失業、病気など平均して四つの悩みを抱えているという。ライフリンクの分析だ。

自殺の原因・動機は複合的だ。ある窓口に「SOS」が寄せられても、縦割り支援では効果が上がらない。このため、滋賀県では労働や健康問題などの担当者が情報を一元化するための会議を随時開くようにしている。

それぞれの試みを「点」に終わらせず、「線」や「面」にするいは、地道な努力を重ねるしかない。

「自殺率最悪 命救うネット拡充しよう」(2009年4月18日 山梨日日新聞)

発生地でみた自殺者(自殺率)は41・1人で、2年続けて全国最悪だ。
一方で、都道府県と政令指定都市の自殺対策をみると、山梨県は64自治体で51番目の低さだったという。ライフリンクが、昨年度の取り組みを100点満点で評価した結果だ。トップだった長崎県の83点に対し、山梨県は35点にとどまった。

ライフリンクが全国の自殺者約300人を調べたところ、自殺前1カ月以内に6割強の人が相談機関を訪れていたという。発せられたサインを受け止め、確実に自殺防止につなげるには、各相談機関や精神科をはじめとする医療機関の協力が必要だ。

ライフリンクが行った自殺対策をめぐる自治体ランキングや自殺実態調査が、多くの社説に引用されています。

写真は、金沢市の金沢21世紀美術館にて。

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