見出し画像

きょう心にしみた言葉・2023年2月6日

人間にとってあることは、今生きているということだけである。
その寿命の中の一日々々は、どの一日も、すべて人間にとって同じように実体としての生命である。どの一日も同じように尊い。寿命がつきて、死が近づいたとしても、その死に近い一日も、健康の時の一日と同じように尊い。
いかに病に冒されて、その生命の終わりに近づいても、人間にとっては、その生命の一日々々の重要性はかわるものではない。つらくても、苦しくても、与えられた生命を最後までよく生きていくよりほか、人間にとって生きるべき生き方はない。

「死を見つめる心」(岸本英夫著、講談社文庫)

著者の岸本英夫さん(1903ー1964)は、東大教授、東大付属図書館長を歴任し、ハーバード大学留学、スタンフォード大学客員教授も務めた世界的な宗教学者です。1954年、滞米中にがんが見つかり、余命半年と宣告された時から、死と向き合い、死とは何かを考える日々が始まりました。10年間にわたって20回にも及ぶ手術を繰り返しながら、精力的に教壇に立ち、多くの研究を手がけ、図書館改革に取り組みました。定年退官直前まで働き抜き、60歳で亡くなりました。著書は、日々の葛藤の苦しさを、冷静な筆致ながらも赤裸々に描いています。「腹の底から突き上げてくるような生命に対する執着や、心臓まで凍らせてしまうかと思われる死の脅威におびやかされて、いてもたってもいられない…」。岸本さんは、死を考え抜くことで、生きることの意味を逆照射し、再定義していきます。
「人間が生きてゆくためにこころを煩わすべきことは、死の問題ではなく、この大切な人間の命をどうするか、どう生きてゆくか、ということ」
 かみしめたい言葉です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?