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きょう心にしみた言葉・2023年5月29日

生きるとは、自分にふさわしい、自分の物語を作りあげていくことに他ならない。

「生きるとは、自分の物語をつくること」(小川洋子、河合隼雄・著、新潮文庫)

「生きるとは、自分の物語をつくること」は、河合隼雄さんの最後の対談本になりました。対談の相手は、「博士の愛した数式」などで知られる著名作家の小川洋子さん。二人の響き合うような対談は、人のこころの奥深さを浮き彫りにし、さらには魂の力について教えてくれます。対談の後、ほどなくして河合隼雄さんは亡くなります。小川洋子さんは、河合隼雄さんの死を受けて「二人のルート 少し長すぎるあとがき」という章を起こします。そこで、河合隼雄さんが繰り返し指摘した「物語」の大切さを語ります。
物語を持つことによって初めて人間は、身体と精神、外界と肉界、意識と無意識を結びつけ、自分をひとつに統合できる。人間は表層の悩みによって、深層世界に落ち込んでいる悩みを感じないようにして生きている。表層的な部分は理性によって強化できるが、内面の深いところにある混沌は論理的な言語では表現できない。それを表出させ、表層の意識とつなげて心を一つの全体とし、更に他人ともつながってゆく。そのために必要なのが物語である」。論理を重ねていった先の結論が「生きるとは、自分にふさわしい、自分の物語を作りあげていくことに他ならない」でした。小川洋子さんはこうも言います。「ああ、そうか。自分は作家だから小説を書いているのではない。誰も生まれながら物語を作っているのだとしたら、私は人間であるがゆえに小説を書いているのであって、『なぜ書くのか』と聞かれるのは、『なぜ生きるのか』と問われるのに等しい」と。
ひとりひとりが大切な物語をつくり、その物語がみんなから大切にされる社会に。

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