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ヒストリー㉟あしたへー・自殺報道2006年

報道への緊急提言

ライフリンクは、2022年10月、設立18周年を迎えます。この「ライフリンク・ヒストリー」で紹介してきたように、18年間、様々な分野で取り組みを進め、活動範囲を広げてきました。加えて、ライフリンクには、設立以来一貫として提起を続けている重要なテーマがあります。
メディアの自殺報道をめぐる問題です。

2006年10月30日、ライフリンクはホームページに、「『いじめ』自殺報道の改善を求める緊急メッセージ」を掲載しました。WHOの「自殺事例報道に関するガイドライン」を紹介しながら、報道各社に改善を求める異例の内容でした。
 この時、岐阜県の中学生の自殺をめぐる報道が過熱の一途をたどっていました。自殺をめぐる実態が詳細に掘り起こされ、全国紙は相次いで生徒の残した遺書を写真付きで報じていました。
報道各社がそれぞれ「いじめ」を許すまいという「熱意」の下に取材し、記事にしていることはわかっていました。しかし、その結果として生まれた大量の報道が、いま自殺を考えている人たちにどんな影響を与えるか。その配慮が決定的に欠けていると言わざるを得ない状況でした。

 それ以前にも、自殺対策の現場からメディアに苦言が呈されてきました。1986年5月、女性アイドルが自殺で亡くなり、当時の報道各社は、独自の集計をもとに3週間で40人を超す子どもや若者たちが自ら命を絶ったと伝えました。
この時も、日本自殺予防学会が「要望書~子どもの自殺事件の報道について」が出されました。要望書は「自殺事件のセンセーショナルな扱いは同じ問題を持つ子どもたちに著しい暗示効果があり、自殺の模倣と暗示効果があり、自殺の模倣と流行を招く結果となります」と指摘し、「きわめて危険な状態をかもしだすことになります」と警告していました。

1996年5月にも日本自殺予防学会の有志が「緊急アッピール」と題して「マスコミの自殺流行に関する理解と、報道に際しての充分な配慮」を求めました。この時も、愛知県で起きたいじめ自殺を契機に、いじめ問題の報道が過熱していました。過去の教訓が生かされず、同じように過剰な報道が繰り返され、結果として、子どもや若者の命が失われていくという看過できない事態が続いていました。

 ライフリンクの清水康之代表は、日本新聞協会が発行する月刊誌「新聞研究」2007年2月号に寄稿し「各社ごとにガイドライン策定が急務」と訴えました。
しかし、その訴えはなかなか届かず、また同じ事態が繰り返されることになります。

=続く 次回は、㊱自殺報道2011年 です。

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