見出し画像

「与島沖旅客船沈没事故」から1年を前に思っていること。

昨年、11月19日、香川県与島沖で修学旅行中の旅客船が沈没…という事故が起こってしまいました。この事故の衝撃的なニュース速報を見て、「どうか無事でありますように…」と心から祈ったこと、そしてその日のニュースで、全員が無事に救出されたことを知り、心から安堵したことを昨日のことのように思い出しています。

あれから、もうすぐ1年。

事故があってから、小学校の校長先生、旅客船の船長さん、救出をしてくださった漁協の方などに話を聞かせていただきました。みなさんのお話を聞いて、はっきりと言えることは、関わったみなさんの全ての思い、全ての行動がつながった上に、たくさんの奇跡が重なって、子どもたち、そして引率した先生方、船員のみなさんの全員が無事に救出された…ということです。

以下のサイトを見ていただければ、船長さんや校長先生の判断や指示が的確だったことが十分に分かっていただけると思います。正直、この事故に関わったみなさんは子どもたちを救った「ヒーロー」だと思っています。

全員が救出されたこともあって、全国的には大きなニュースにはなりませんでしたが、この事故は本当に奇跡だったと思います。そして、何よりも「全員が『ライフジャケット』をしっかりと着けていた」ということが、助かった大きな要因だったことは間違いありません。

「ライフジャケット」の活動をしていることと、同じ香川に住んでいること、そいして、2020東京オリンピックの聖火リレーのランナーに選ばれ、坂出市を走るつもりだったけれど、1年延期になってしまった…という時にあった事故だっただけに、全く他人事とは思えませんでした。

むしろ、聖火リレーに選ばれたことは「何か役割がある…」と感じ、できることをやり切ろう!と決意をして動きまくってきました。もうすぐ1年になりますが、本当にできることをやり、必死で動き切った1年でした。

想いを込めて走った坂出市の「聖火リレー」

4月にあった聖火リレー。1年延期でなんとか実施していただき、当初予定していた「坂出市」を走ることになりました。事故があったこと、関係の方々にたくさんお話を聞かせていただいたことなどが重なって、並々ならぬ想いで走らせていただきました。

画像2

聖火リレーは、本当に夢のような素晴らしい時間でした。選んでいただいたことに感謝しかありません。走っている途中、ずっと「『ライフジャケット』をとことん広げるために、できることはやり切る…」って思っていたし、走った後はなおさらその気持ちが強くなりました。

聖火リレーの後、坂出市に「ライフジャケット」を寄贈しようと考えていたのですが、そのことについて相談をしたところ、「市民や企業の方に声をかけて、坂出市のみんなで寄贈する方がいいと思う…」という提案をいただき、河野さんを代表として市内の方々へ呼びかけていただけることになりました。

画像1

そして、市内の企業や個人の方の寄付をいただき「Sakaide Lifejacket Santa Project」として、85着の「ライフジャケット」を寄贈することにつながりました。その「ライフジャケット」は、坂出市が「ライフジャケット・レンタルステーション」を開設し、市内の学校や園、保護者への貸し出しをしてくださっています。さらに、河野さんは経営されている塾での個人的な「ライフジャケット・レンタルステーション」を開設してくださっています。

この聖火リレーが縁で動き始めた「Lifejacket Santa Project」(「ライフジャケット」を自治体へ寄贈するプロジェクト)は、北海道や広島など全国に広がりを見せています。

これまでのつながりで実施できた「水難防止教室」

聖火リレーの前から、事故のあった坂出市立川津小学校の白川校長先生と、何度もお話をさせていただいていました。子どもたちが助かったのは、この白川校長先生の判断が重なったことも、大きな要因です。

白川校長先生は、小型船舶の免許を持っておられる上に、防災に精通されています。その白川校長先生の大きな決断の1つは「船の選択」です。小学生だということもあって、1サイズ小さい船でもいいと勧められたけれど、大人の定員の大きめの船を選択するように指示を出されています。このことで、座席の下にあった「ライフジャケット」を子どもたちがすぐに装着できたのです。確証はありませんが、船が大きかったことで、沈没時の対応にも影響したのではないかと思っています。

また、船長さんからの「ライフジャケット」の着用指示があった時に、子どもたちのそばにいたのは白川校長先生です。経験のない方だったら、その時点で的確に指導をすることは難しかったかも知れません。しかし、経験ある方だったからこそ、装着がしっかりできているかどうかをしっかりと確認していただけていたことは、間違いないことだと思います。

その白川校長先生が、「後輩の子どもたちに、水辺は怖い…といった印象だけでなく、安全に遊べる方法を教える場を作りたい。」とおっしゃっていただきました。「子どもたちにライジャケを!」では、この動きに全面的に協力させていただきました。この「水難防止教室」を実施されたことも、白川校長先生だからこその決断だと思っています。

20210708川津小学校_210710_46

聖火リレーの3ヶ月後の、これまでのつながりを集結し、日本ライフセービング協会の指導本部長・松本貴行先生を招いて、7月に「水難防止教室」を開催しました。使った「ライフジャケット」は、「Lifejacket Santa Project」で寄贈されたものでした。

20210708川津小学校_210710_44

この動きは、これから香川県内だけでなく、全国に広がっていくことになるはずです。おそらく与島沖での沈没事故、そして白川校長先生の決断から、日本の「ライフジャケット教育」がスタートしたと言っても過言ではないと思っています。

広がる「ライフジャケット教育」の動き

香川県では、「ライフジャケット」への取り組みは坂出市だけではありません。昨年度より、県庁で「ライフジャケット・レンタルステーション」を開設してくださっています。特に今年度は、県内企業からの寄贈によって、香川県教育委員会が「ライフジャケット・レンタルステーション」を開設しました。

画像5

6月末に、県内に案内したところ、なんとその日に夏休みまでの予約が埋まってしまったそうです。貸し出された「ライフジャケット」の多くは、水泳学習での着用体験に活用されました。また、子ども会等の行事にも活用されています。

水辺で子どもたちが活動することがあった時に、「ライフジャケット」を”準備”することは義務です。過去の事故の判例から、そのことがしっかりと示されています。つまり、香川県教育委員会が開設している「ライフジャケット・レンタルステーション」は、学校や園、子ども会等で子どもたちを見守る時に、しっかりと安全を守り、義務を全うするために、とても大切な取り組みだということになります。

画像6

この香川での取り組み「香川モデル」は、今後全国に広がりを見せていくことになりそうです。2021年8月に発表された、スポーツ庁の「令和4年度概算要求主要事項」の15ページには、「水泳授業における自己保全のための学習の指導モデルの研究」についての予算が明記されています。そこには、これまで多くの学校で取り組まれてきた着衣泳と並んで「ライフジャケットの活用」が明記されています。

「Lifejacket Santa Project」も広がりを見せていて、今後は、多くの自治体で「ライフジャケット・レンタルステーション」が開設され、学校等での「ライフジャケット体験」や、水辺のでの「ライフジャケット」が広がっていくことになるでしょう。

与島沖で起こってしまった事故は、たくさんの奇跡が重なったことと、関わった学校関係者、船長さん、漁師さんたちの的確な判断と勇気ある行動によって、全員の命が守られる…というこれまでの歴史上の沈没事故ではあり得ない結果につながりました。そして、「ライフジャケット」が間違いなく大切なものであることが示された事故でもありました。

あれから1年。事故をキッカケにたくさんのことが動き始めています。

この事故から本格的にスタートした「ライフジャケット教育」が、どうか、もっともっと広がっていって、水辺の子どもたちの命が守られる社会になっていくことを願っています。どうか、1人でも多くの方にメッセージが届きますように…。

思いはただ1つ…子どもたちの命を守ること。

「子どもたちにライジャケを!」
http://lifeajacket-santa.com/







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?