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⑪曖昧模糊

2021年5月26日の夜、15日間のブランクを経て、友達の「足あと」が付いた。目を疑った。嘘かと思った。彼がログインしている!!!!!

すぐに、『足あとに気が付きました』という呟きをアップすると、一時間ほどして再び彼の「足あと」が付いた。その後、重ねて呟きを続けると、もう一度「足あと」が付く。こちらの「呟き」と彼の「足あと」の応酬で会話をしているみたいだった。

翌27日、僕はこの機会を今度こそ逃してはいけないと思い、彼にお願いしたかったことを遂に書いた。『弟さんのご連絡先を知りたいです』。だがその日、彼は mixi にログインしたものの、「足あと」を残してはくれなかった。

その後も『また色々お話できるようになったら嬉しいです』とか呟きを重ねて行ったけれども、彼は以前のようにはコメントは勿論、「イイネ」を付けてくれることも無くなり、ただ「足あと」を残してくれるだけ。

体が大変なのだから仕方のないことだ…と自分に言い聞かせた。

5月29日夜、タイムライン上に友達のアクティビティ (新たな動き) として、「ゆうさんとマイミクになりました」という文字が表示された。

なぜ!?!?    非常に違和感を持った。このような今の状況で、彼が新たに誰かとマイミクとして繋がることが有り得るだろうか…。友達は以前、『今のこのアカウントでは、本当に大切だと思う人としか繋がっていただいていません』とDMに書いていた。マイミクはAさんと、僕の二人だけ。こんな時に繋がった「ゆう」という人は何者なんだろう。

すぐにこの「ゆうさん」という人のページに飛んでみた。マイミク0人の男性。なんとなく胡散臭い気がした。その時点では、その人はマイミクのマイミクに当たる人だから、僕の「足あと」がその人のページに残ったのだけど (一連の動きが普通でない気がしたので、こちらの足あとはすぐに削除した) 、それから数分して、友達と「ゆうさん」のマイミク関係は呆気なく解消されていた。とてもおかしい。

僕はこの人のことがとても気になり、今後も様子が分かるように「お気に入り」に登録し、ログイン状況などをいつでも把握できるようにした。

友達の反応は依然として、良くて「足あと」、悪くてログインだけして素通り。そのような状況に僕は耐えられなくなり、「自分、凄く淋しいです。どうしたらいいか分からない」…そう呟きに書くと、その日友達は「足あと」を残してくれた。それだけで僕は彼に優しく慰められたような気持ちになり、これからはきっと「足あと」を残してくれるだけなのだ…と理解した。

友達のもう一人のマイミク「Aさん」とは、その後もDMでやり取りをしていた。Aさんは自分でも言っていた通り、ドライでクールで、友達のことをどちらかと言うと突き放して見ている感じがした。友達が mixi に戻ってきていることに気が付いたのも僕が先だった。

僕の方にはその時点で、友達の「足あと」は何度か付いていたのだが、Aさんの方にはナシのつぶて。僕は内心、“Aさんは薄情な人だ” と思っていて、正直に言えば、友達との距離感に関して優越感を持っていたのだが、5月31日、AさんからDMが届き、友達からの「足あと」と、コメントへの「イイネ」が遂に付いたことを知らされた。僕はとても羨ましかった・・・なぜAさんには「イイネ」を付けたの!??

Aさんが貰った「イイネ」は、友達の転院前の「もう終わりです」というメッセージに対する返信の文章に…だったそうだ (Aさん宛て、僕宛てに各々別個に個別公開されているので、他人の目には留まらない) 。「仮に命が尽きたとしても、それで終わりではないと思っています」というAさんの返信。

(この時の「イイネ」は、2023年の今現在に至るまで、転院後に友達のアカウントがたった一度だけ付けた「イイネ」です)


その後も、曖昧で芯のない、僕の「呟き」と彼の「足あと」だけによるコミュニケーションが続いた。

「ゆう」という人の一件があってすぐに、「アカウント乗っ取り」という言葉が頭を過ぎったのだが、それはどうにも確認のしようのないことで、せっせと友達のアカウントに向けて「呟き」を続けた。

ちょっとホロリとなったのは、仕事帰りの電車が悪天候で止まってしまった時のこと。「電車が止まってしまいました」→「少し動いて、いま〇〇駅です」→「無事帰宅しました」などと呟きをする度毎に、友達の新しい「足あと」が残っていた。友達は心配してくれているのかな…そんな風に感じられて、不可解な点はあるけれど、アカウントの中にいるのはこれはやはり友達なのかもしれないと思い、心の片隅に疑念を抱きながらも、友達へのメッセージ代わりの呟きをずっと続けることにしたのだ。


友達との間にあった出来事を記憶に留めておきたくて、毎日文を書いています。

あの時のことが思い出されて、今日は少し気持ちが重くなりました。読んで下さっている方が同じ状態にならないよう祈っています。

本当は前回ぐらいで止めていれば、それはそれで完結していたのかもしれません。ですが本当のことを記しておきたいと思い、続けています。読んで下さってありがとうございます。



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