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あの子はいったい…

私がフィリピンのとある離島で暮らしていた時の話。

私はある語学学校のマネージャーとして韓国からこの島へと送られ、
問題だらけの環境で悪戦苦闘をしながら働いていた。

この施設は当時では珍しいリゾート施設一体型の語学学校で、街の中心部から離れたジャングルの開けた所にポツンと存在していた。

写真の中央にあるのが学校
学校の外は山と海しかない

生徒は韓国人だけだったが、きれいな海も近く都会の煩わしさを忘れて勉強ができると、なかなか高評価ももらってはいた。。。だが。。。

悪徳エージェントの詐欺行為により金銭的被害を被り、評判は落ち、生徒も減っていき。。。いつ潰れてもおかしくない状況に陥ってしまった。

そんな中、生徒と講師の間でとある噂が出るようになった。

『夜中、敷地内に知らない女の子を見かける』

『女の子がプールの脇で浮いているのを見た』

と、数人が同じようなことを言い出すのだ。

学校のプール

その時期はキッズキャンプ(小中学生が20〜30人程度留学に来る)が終わり、

生徒数は大人10数人程度、夜は非常に静かだった。

私も過去に幽霊は何度か見たことがあるが、今回はまだ見ていないため、半ば冗談半分で聞いていた。

だが講師の中に霊感があるフィリピン人がおり、彼いわくその話は事実のよう。

だが彼はその話をあまりしたがらない。。。みんなを怖がらせたくないからだと言うが、他にもまだ秘密を知っているような表情だった。

周りは海とジャングル…学校で過去に誰か亡くなったのかな?とも思ったが、真相は謎のまま。。。

そんな中、自身の人生で最も恐怖を感じる事が起きたのは、それから数日後のことだった。

私は事務室で仕事を終えた後、仲の良い講師たちと談笑をしに彼らのドミトリー(学生寮棟)へと向かった。

この施設には、事務棟、学生寮棟、教室棟の3棟があり、事務棟から学生寮へ行くには外を通る。
この学校は街の中心部からローカルバスで2時間の距離にあるため、講師たちは通うことができず、学生寮棟で生徒と同様に暮らしている。
私は管理スタッフであった為、事務等の部屋を使っていた。

時刻は夕方5時頃。授業を終えた講師がちらほら戻ってくる時間である。

私は廊下をゆっくり歩きながら、その奥にある仲の良い講師たちの部屋へと向かった。その時。。。

ふと誰かの視線を横から感じたのである。

そしてその視線の方向を見てみると、

女の子が窓の外に立っていた。。。いや。。。

「浮いていた」

私は一瞬混乱した。

ここは男性講師の部屋で、2階くらいの高さがある。

しかも窓の外は草木が生い茂りオオトカゲの住処となっている場所。。。
人は入れない。。。

「???」
色んな情報が頭をよぎり、それがつながった瞬間、鳥肌がたった。

「あの子は誰だ?」
服は白っぽいが、下半身は窓の枠で見えない。
そして無表情のまま私を凝視している。。。見たことない子だ。
(中学生くらいの女の子で未だにあの表情を思い出すと鳥肌が立つ)

私はちょうど戻ってきていた講師の元へ行き聞いてみた。

「あの部屋の外ってかなり高さあるよね?人が立てたりするかな?」
するとその講師は、
『何言ってるんだ?あんな所で立てるわけないし、まずあそこに行かないだろ』

そうだよなと思い再びその場所へ戻ってみると、あの姿はもうなかった。

しかし、これが悲劇の始まりだった。

その日の夜から、不可解な事が連日起こった。

私の部屋は事務棟の2階、そこにはマネージャーと院長、ゲスト用の部屋が合わせて3部屋ある。

当時院長は韓国にいたため、夕方以降その棟にいるのは私だけだった。

夜中の2時頃だろうか、1階からゆっくり階段を誰かが登ってくる音が聞こえた。(小さな音だがなぜかその時はその音で目覚めた。)

そしてその足音は私の部屋の前へと近づき。。。
「コン、コン…」
とドアを叩く。

こんな夜中に誰だと思い、誰かと尋ねるも応答はない。

嫌な予感がした。

ドアを開けてしまうときっと良くないものを見てしまうと思い、そのまま放置した。

すると今度は向かい側の部屋のドアがゆっくり開く音が聞こえた。

「ん?待てよ。2階の部屋は全部施錠してあるはず。。。」

だが「きぃぃぃ…」という確かに誰かがゆっくり開けている音なのだ。
その後ドアが閉まる音が聞こえることはなかった。

その日の朝、寝不足ながらも仕事の為準備をして部屋を出た。

念のため向かいの部屋のドアも確認したが、やはり閉まっている。

その日事務室のスタッフたちにそのことを話してみたが、軽く笑われて終わってしまった。

門番をしているセキュリティのおっちゃんにも、昨晩事務棟へ来たかと聞いたが、来ていないよう。。。そもそも彼は大柄ぽっちゃりだから足音ですぐわかる。

門番のおっちゃん曰く、学生寮棟から事務棟に向かう人も見なかったとのこと。

そしてその次の日の深夜。。。

「ぴたっ、ぴたっ、ぴたっ。。。」

またあの音だ。裸足で階段を登るような音。。。そしてまたノックをしてくる。

私「誰?何のよう?」
と正体不明の者に何度か尋ねたが、応答はない。

そんな状況が続いていたある日の夜。。。

いつものごとく誰かが階段を登ってくる音と共に目が覚めた。

「またか・・・」と思いそのまま放置していると。。。


「うわーーっ!!!!」

寝ていたベッドの裏から青白い腕が2本飛び出し、

私の左腕を掴み、ベッドから引きずり落とそうとしていた。

金縛りではなかった、息もできたし動くこともできた。

意識もはっきりしていた。

だがその青白い腕の力が想像以上に強く、私は必死に抵抗した。

実際どのくらいその状況が続いたかはわからないが、体感では数分程度綱引き状態が続いていたと思う。

すると諦めたのか、その腕はピタッと消え、その後は何も起こらなかった。

寝不足続きでストレスも溜まっていた私は、霊感のある講師に起こった事を話した。

彼はやっぱりなと言わんばかりの表情でこう言った。

『この地域にはたくさんの幽霊がいる。彼らはにぎやかな場所を好まないから、このタイミングで出てきたのだろう。』

言われて見れば、少し前までは韓国人スタッフが事務棟のスタッフ部屋を使用しており、院長やその家族も滞在していた為、にぎやかではあった。

彼は続けてこう言った。

『学校の外には日本兵もいるよ。ずっと行進している。』

後に知ったことだが、この島は太平洋戦争で日本軍が米軍と衝突した地でもあった。

その講師と話を続けていると、近くで話を聞いていたスタッフの一人が口を開いた。

『前にいたマネージャーも幽霊見た!って怖くなったのかすぐ帰国してしまったよ。』

やはりいわく付きの施設であった。

その後霊感ある講師からのアドバイスを受け、それから例の現象がピタッと止まったのである。

私個人の見解ではあるが、

あの青白い手は、あの時見た女の子だったかもしれない。

何か伝えたかったのだろうか。

戦争に巻き込まれ亡くなってしまった子だったのだろうか。。。

あの時抵抗しなければ、あの世へと連れて行かれていたかもしれない。。。

「あの子はいったい。。。」

その後リゾート開発が進み当時の学校はもう存在しないが、謎が残る体験であった。

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