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お金、「貯めるもの」?「遣うもの」?

あるお金もちのご老人のこと。
 
■ お宅を訪ねる 
 あるお金もちのご老人のお宅を訪れたときのことです。
 何となく、お宅の造りを拝見。お元気なうちは構わない。けれども、高齢のうえにも高齢となる日々に向かうことは避けられぬ。この状態では何かにつけて今までどおりでは暮らせそうもありません。
 「ベッドで寝起きできるようお部屋を改造されたらどうですか」「お風呂やトイレももう少し安全な構造に改良されては」「そうすれば、かなりの間、在宅で暮らせると思いますが・・・」
 「イヤです。しません。」
「どうして?」
「お金がかかるから」
「お金なら沢山お持ちじゃないですか・・・」
「ハイ、お金を持っていると云うことで安心できるのです。遣えば減るので安心できなくなる。」
「・・・・・・・」
 あまり改造をお勧めすると悪徳リフォーム屋に間違えられそうになるので、もう別の会話に。


 
 オランダ
 その後日のこと。あるテーマの研究のために有志でオランダその他の視察に出かけた時のことです。
 到着早々眼に入ったのは、運河という運河がおびただしい数の中・小型のクルーザーやヨットでいっぱいになっている光景です。
「これは、どういう方達のものですか?」
「普通のサラリーマンなど一般の方々のです。」
「えっ?」
「日本と違って、福祉制度が充実しているのです。」「どういうこと?」
 「つまり、病気や、失業、老後、こうした際の生活が、充実した社会制度によって保障されているからです。ですから、日本の方のように個人個人でお金を貯めに貯めると云うことがないのです。」
 「遣えるのです!」


  
「あの世に持っていけないなあー」
 くだんのお金持ちのご老人。歳月を経ていよいよ施設介護の日々を過ごされる時期となったある日のことです。お見舞い?のために施設を訪ねて面談しました。
 「早くお迎えが来ないかなあー」
 「まだまだ、百五歳まで元気でいましょうよ。」
 「お金、あの世には持っていけないよなあ~、持って行けないよなあ~~」
 「そうだね。お元気なときに公証人役場に行ってお作りになった遺言状で、指定されたとおりになります。」
 「今さら、自分で遣おうにも、沢山食べるわけでもナシ、旅に出る体力もないし、着るものと云っても、そんなに要らないし・・・・」
 しばらく黙り込む。
 「お家に帰りたい」
 「なんで?」
 「ここ(施設)は家賃分も払うのでしょ。お金がかかるから・・・もったいない。」
 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


■ 日本中で
 日本銀行発表の資金循環統計である。2022年3月〆の個人の金融資産は合計2005兆円。国家予算の20倍にのぼる。過去最高だと云う。
 このお宝、どこで誰が何に「活かして」いるか?


 
■ 〝四苦八苦〟の四苦
 四苦とは生・老・病・死。ホモサピエンスの根源的な不安の種であることを釈尊が看破して久しい。 2500年以上を経た今日、これを社会的に克服する国家もあれば、これを利用する国家もある。四苦をコントロールできる悟りを開きあいたい。

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