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高齢期リハビリのココロエ42 高齢者施設のリアル

高齢になると時間ができるため男女とも趣味に勤しむ方が多くなります。

そして弱らぬようにと運動習慣を身につけたりもしますよね。つまり退職後、子育て後の生活はそんな風になります。

この時点でたくさんの時間を持て余す方も非常に増えるんではないでしょうか。


そして、あまり考えたくはないですが病気や不活発により要介護になったとしましょう。

晩年は施設に入所なんてことも可能性としてはあるかもですね。

では高齢者施設ではどんな生活が待っているのか。今回はそんな高齢者施設のリアルを綴ります。


現在の施設の多くで要介護高齢者に提供されている作業、ご存知ですか?それは『歌を歌う』『塗り絵』『クロスワード』『体操』『読み書き計算』『職員のレクリエーション』です。この辺りが王道でしょうかね。


施設ではそういった机上作業をすることが生活に加わります。


これらの作業は職員にとって『準備が楽(マンパワーが少なくて済む)』『脳になんだか良さそう』『リスクが少ない』といった理由からチョイスされると考えます。『読み書き計算』に至っては認知機能が回復する、と一時ブームになりましたね。そこから『脳に効く大人の塗り絵』『認知症に効く◯◯』なんていうものが増えたかと記憶しています。


加えて様々な制限が施設生活にはあります。その一つが『面会制限』です。具体的にはコロナ禍を挟んで感染対策から『時間制限』、また『素顔での面会困難』、また施設によっては『本人の許可のみでは面会ができない』なんてこともあります。『ご利用者の心を乱すような話題を控えてください』という『話題制限』する施設も存在します。


つまり施設に入居すると『会いたい人に自由に会えなくなる』わけです。


さらに施設という環境下ではできること、したいことがリスク管理という名の下、制限されます。例えば車椅子の方が無闇に立って作業をしてはいけない、転倒リスクを考慮して移動方法のレベルを下げる(押し車歩行の方を車椅子対応にする)などです。


現在、施設はコロナ禍を経て感染対策とリスク管理でがんじがらめになっているところが多いのではないでしょうか。


一方、要介護高齢者の『施設生活全体をどうしていくか』という観点からリハ・ケアを考える価値観が成熟していないため、ほとんどの時間、施設入居者は『することがなくなります』たとえば、職員が関わらない時間以外は『何もすることがない』といった感じです。


では、なぜ施設生活は退屈になるのでしょうか?


高齢の親が娘や嫁と同居したとしましょう。『嫁や娘が家事をして当然!』『仕事や家事は高齢者は行わない』というイメージが文化的にありませんか?

また、『要介護高齢者に家事なんてできるわけないという思い込み』『高齢者にはやさしくしましょうという倫理観』など、きっとたくさんの要素から『要介護高齢者と仕事・家事を切り離されます。

仕事・家事は私たちの生活時間の大部分を占めます。つまり、要介護高齢者は仕事・家事から切り離されているため『退屈』なんですよね。


逆に農家や独居高齢者は強いですよね。1日仕事や家事をして頭手足を動かしているから当然です。




「うちはご利用者の認知機能を維持するためにご利用者に計算プリントしてもらってます。」


「当施設はレクリエーションを毎日、職員が提供しています。みなさん、楽しそうに参加されてますよ」


「ほら、見てください。素晴らしい塗り絵をうちでは飾っています。ご利用者が書かれたんですよ。」


「毎日、ラジオ体操してるんですよ。」


真剣にこれらの言葉を聞くと浮世離れしていると感じませんか?


判を押したように多くの施設が『塗り絵』『レクリエーション(職員がテンションを上げてする)』『読み書き計算』に取り組んでいます。

普通の大人の生活ではあまりしないことですよね。


では、なぜ現在それらを施設入居者は受け入れるんでしょうか?それは『退屈』よりはましだから、だと思います。


それらが好きな方も当然いらっしゃいますが、それはたまたまマッチングしたということで、選択肢の少ない施設生活では幸運なことかと思います。


家族はそんな生活をしている自身の親をみて何を思うでしょうか。「仕方ない、これが高齢者施設だから」と大半の方は納得するでしょう。だってどうしようもないですから、むしろ預かってもらって『ありがとうございます』くらいの気持ちです。


いや、本当にこれでいいんだろうか?もっとすべきことあるんではないだろうか。


『人生の最終ステージにどんな生活をしたいか』


から考えていきたいものです。

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