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消えた1万円、そして便利な解読システム

認知症4年目、my母(84)との会話に現在ほぼストレスを感じていないのですが、その秘密は初期にmy母との発言に”解読システム”をつくったから。そのきっかけは「消えた1万円事件」でした。

事件、そして現場にて

My母がアルツハイマー型認知症と診断された1年目、この先、どんなことが待ち構えているのだろう、と不安になっていました。徘徊したり、う○こ投げられたり、被害妄想に怒鳴られたり、娘の顔を忘れたり、、、という噂を聞くよなあとぼんやり。あまり直視したくないなあというある日の夜、my母から電話がありました。
 
「私ね、ヘルパーさんにきてもらうの、やめようと思うの。今後は来るのを断ってくれないかな」と。
は?どうして?ヘルパーさんきてもらわないと、生活成り立たないよ、というと、

「あのね、1万円盗られたのよ」と。
 
「え!?(きたーーーっ!これが噂の妄想発言かっ!)」

当時母の財布には週数千円ほどしか入れていませんでした。一度通話を切り、即ケアマネさんの事務所に「妄想が始まってしまった」と相談報告し、再度my母へ連絡し、「明日は土曜日だからそっちへ行くね。明日ゆっくり話そうね」と伝えて、確かめに行くことにしました。
 
その当時、my母は要介護1で、週3回はヘルパーさんにお世話になっていました。掃除と体調チェック、賞味期限切れ食材の廃棄、週によっては買い出しなど。その週3来てもらえないとなったら、どーなるの!?
 
翌日my母宅に着いて母が過ごすダイニングへ行き、「昨日の話だけど、、、」と切り出そうとしたときに、ふとテーブルの上に走り書きのある小さなメモを発見しました。
兄の字で、

「ヘルパー様 1万円入れておきました」
 
と。ん? 
”1万円” という金額の一致に関連性がある気がして、そのメモをすかさずササッとポケットにしまいました。
解決すべきことは、ヘルパーさんに来ないでもらいたいというのを回避することと、1万円盗んだというのが事実かどうか、ということ。
「ヘルパーさんが来なくていいと思っている」という主張を続けている母に「こないと困るよ」と説得を始める前に、ちょっと考えてみました。
 
買い出し用にヘルパーさんに渡している小さな財布はその存在を母が知りません。確認してみると、合計金額が1万円分のレシートと数千円と小銭が入っていました。ただ、いつも入れてある金額記載のメモは入っていませんでした。さっきのアレです。
My母の財布には、特に不自然にお金が減ったりしていませんでした。
 
要するに、買い出し担当のヘルパーさんが、そのメモを出して置いて帰ってしまった。置き去りのメモをmy母が見つけた。
母はその1万円は知らない。
わからないということは「盗まれたのだろう」、という連想。
そして、「迷惑をかけてはいけない」という思いから「ヘルパーさんには来てもらわない方がいい」になっているのではないか。
 
とりあえず最初に、「1万円、あったよ」と言いました。厳密には「ない」のですが、そう伝えました。「だから、ヘルパーさんのことは安心していいよ」と。
そうしてmy母も「あそうなの?盗んだりしてないなら来てもらってもいいわね」とあっさり。
そしてヘルパーさんの事務所にはメモを落としていたことを伝えて、今後気をつけていただくように伝えました。
 
ケアマネさんにこの推理を伝えると、
「確かにそうかもしれませんね。ただ、認知症の方の発言で、本当に火のないところからの妄想のときもあるのですよ。先日も自分の100万円盗られた、と主張しているお爺さんがいて、本当にどこにも100万円などそもそも持ってないのに、、とご家族が困っていましたよ」とおっしゃっていました。

確かにそうなのだろうな。でも。
もしかしたら、何かその方にもきっかけがあるのではないか?
例えば、テレビ番組で100万円当たりました!と発言するのを聞いて、それが自分のことだと勘違いしたとか。いつまでも100万円が届かないから、誰かが盗ったと想像したとか。などなど。

解読システムのスタート

My母の今回の発言の場合、物証×母の性格 で解答が出てきました。

{自分のわからない1万円+自分以外で家に入るのはヘルパー}
×家族に迷惑をかけたくないという思い
=「ヘルパーをやめたい」

この事件がきっかけで、my母の発言を”言葉通りに捉えない”と決めました。
いくつかの事実をブロックに分解して、組み立て直しています。

例えば、
「いつも隣人が窓から監視してる」というのですが、それは
{隣人は噂好き+雨戸を開ける時間が一緒}× 隣人が苦手
に解読。

そのほかにも、my母の言葉の意味が本来の意味と違うものがあり、それも解釈設定。

例えば、

「これは、生まれて初めて」と、初めてでもなんでもないことについてそう伝えてくるのですが、「生まれて初めて」の部分は削除。

「これ覚えている?」と聞くとまず「覚えてない」と答えるのですが、細かく伝えると意外と覚えている。だから「覚えていない」の返事は無効に。

My母の言葉をできるだけ、正面から受け止めないで、脳内変換して聞く。

そうすると、焦ったり、腹が立つことも減り、コミュニケーションがスムーズになっていきました。

介護者よ、刑事(デカ)であれ!?

この解読システムを使って、事件解決したこともありました。

ある日、包括支援センターの相談員さんより「お母さまがご自宅で何か鍋を焦がしたみたいなので、火に気をつけてください」と連絡が。
しかし、my母は台所の主のように居て、小心者のため、火の元の確認を執拗にやる人。ついにそれが出来なくなったのか!?
火事になったら取り返しがつかないので、これまた物証を探そうと実家へ行くと、焦げた鍋やフライパンは見つかりません。ヘルパーさんに尋ねても「そうしたゴミも見当たらないです」とのこと。

一体誰がこの話を伝えたのでしょうか?
相談員さんに連絡して、事実を伝え、通報の経緯を聞くと、言いにくそうに「いやあ、、隣の方からなのですよ」と。
例の、my母曰く「監視している」という隣人でした。
様子を細かく聞くと、「お隣から焦げた匂いがした」と言っていたらしいのです。
my母の台所の換気扇は隣人宅と逆側。
隣人の窓まで匂う焦げ臭さってどれだけなんでしょう?!
「正直、物証からは難しくないですか?」
と、敏腕刑事風に告げると、
「確かに、、、お隣の方の妄想かもしれませんね。。。」

隣人には、お久しぶりですと挨拶へ行き、さりげなくmy母の生活詳細を伝え、割と人の目があるので安心してもらうように伝えました。とりあえず誤解が解けて一見落着。

こうしてこの解読システムは自分的に便利なので、フォーマット化できないかなどと考えていたのですが・・・

こうして俯瞰してみると、実は一番大事なのは”物証”をそろえられる、刑事(デカ)的センスなのかもしれません。
だとすると、、フォーマット化はなかなか難しいですね。

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