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僕のafter.311 《12》plant to plant

『plant to plant』工場から植物へ。
ケンスケは今行っているプロジェクトについてそう言った。
今は6月。これからどんどんと暑くなる。これまで夏はクーラーを使っていたけれど、震災以降節電の呼びかけをするなど、首都圏でも電気について考え始めている。そこで、この夏は工場(福島第一原子力発電所)から植物へと納涼方法をシフトするキャンペーンを行う。

震災によって田んぼや畑ができなくなった南相馬の農家さんが大勢いる。このプロジェクトはこの農家さんを支援する効果もある。元々野菜の苗を作っていた農家さんにゴーヤの苗を作ってもらい、苗、ネット、土、プランターをセットにして販売する。ゴーヤが成長すると緑のカーテンとなり、直射日光を遮るため室温が上がりづらい。ゴーヤは食用ではなく観賞用なので人体の放射能被曝はない。南相馬への復興支援と節電という2つのバリューを届ける。

これが『plant to plant』プロジェクトの概要だ。僕の最初の感想は「よく考えたな」だった。震災からわずか3ヶ月弱、他にも大変なことが多かったろう。その中でよくこれだけのビジョンをぶち上げたものだ。こいつ天才だな。しかも、このゴーヤを販売するためにNPO法人まで立ち上げていたのだ。3月に申請し、6月に震災後福島県第一号で法人化認定された。

しかし、現在南相馬には人材がいない。特に働き盛りの若い世代がいない。確かに人はガラガラ。空いている店も数えるほど。復興どころか復旧もまだ手がつけられていない。
街の現状も実際に見てきたし、問題が山積なのもよくわかる。やらなきゃならないこと、助けを求めている人が大勢いるにも関わらず、それを実行する手が足りないことも理解した。ビジョン担当のケンスケが自らチラシを折っているのはそういうわけだったのか。それで実働部隊として僕やセージ君が呼ばれたんだと理解した。ケンスケは頭がいい。それは高校時代から知っていた。けれど頭が良すぎて、回転が早すぎていつも言葉足らず。

「やらなきゃいけないことはまだまだあるんだ」
「イトーちゃんには東京でしっかり働いてもらうかんね」

今回呼ばれた時もそうだったけどさぁ、何をどんな風にするのか説明しろよ、お前。旧友に悪態をつきながらも、故郷のためにやれることは何でもやろうと思った。生まれて初めてかもしれない。これほどまでに自分の力が必要とされ、それが困っている人や社会のためになるんだと強く実感できたのは。311以降、僕の中で燻っていた何かに火がついた。火をつけたのはそう、この男ケンスケなんだ。

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