非常事態になると離婚が増えるワケ
先日、大学時代のサークルの同期の投稿がふと目につきました。
「夫の会社、今日から在宅ワークだったはずなんだけど、現場事務所との不公平感から見送りだって。この期に及んでこんな理由で在宅ワーク出来ないなんて。昨日は歓迎会で外で飲んでくるし(4人で個室らしいが)。どれ程私が気を付けて子供たちに手洗いさせて、家中消毒したって、ウイルスにかかった人が家族に出たら意味ないんだよなぁ。消毒しすぎて手指カサカサだし、未だにマスクは手に入りづらいし、保育園は登園自粛(育休中なので)だし、非常事態宣言出される前に買い置きした方が良いのかなとか、ソワソワ落ち着かなくて気持ちがささくれてます」
というものでした。あれ?自宅で直接言われているようで身につき刺さると思いながら返信。すると彼女からは
「上司に企画されたら断れないのも分かるけどさ。そこはきちんと意見してほしいよ。上の人の意識変えないとダメだわ。これでコロナにかかったりしたら離婚問題になるかも(笑)」
とのこと。あー、こういうことがきっかけで離婚問題になるよなと最近報道されている「コロナ離婚」が頭に浮かびました。そしてふと、震災後にもこんなことあったよなと思い出しました。
震災離婚とコロナ離婚
震災時、福島で起こった主な離婚の原因は放射性物質への価値観の違いです。「地元に残るか」それとも「避難するか」、最初はその二択でした。原発爆発当初は「ヤバい」と言う意見はほとんどの夫婦で一致していたため家族一緒に避難します。
ところが問題はその後。問題が表面化するのは311から1年経過した頃からでしょうか。夫婦の選択は「避難継続するか」それとも「地元に帰るか」に変わります。経済的、社会的な立場もある夫は仕事を続ける必要性から地元への帰還を選び、自分や子どもへの放射性物質の影響を恐れる妻は避難先に残ることを選ぶ(もちろん、違う選択肢をした人もたくさんいましたよ)。こうして二重生活になっていきました。二重生活で夫婦はすれ違い、中には不倫をした人もおり、結婚生活は破綻に追いやられます。
「元々夫婦仲に問題があったんでしょ」
「隠れていた問題が顕在化しただけ」
と言う人もいましたが、僕が感じていたのは新たな価値基準が加わったことが大きいのではないかと思っていました。
結婚する際には、お互いに一緒に暮らしていくために様々な価値基準をすり合わせていくのが通常だと思います。
「お金に関して」
「育児に関して」
「働き方」
「恋愛観」
「家族観」
細かいことを言えば洗濯物の干し方や掃除の仕方なんかも育ってきた環境や価値で全く違ってきますよね。許せるところは許し合ったり、こだわりの強い方に任せたりバランスをとりながら夫婦生活を送るものです。そこに、結婚当初は全く想像だにしなかった価値観が加わるのです。それが震災後は「放射能」だったし、今は「新型コロナ」なわけです。これまで順風満帆な家庭でも、そこの価値観が違うと一気に「あなたと一緒に暮らしてはいけない」とまでなってしまうのです。
新たな価値観のすり合わせ
夫婦に限らず、恋人同士でもこの問題によって別れることもあります。震災直後にはそんな話もよく耳にしました。車を運転していたとき、エアコンを外気にしていたと言う理由で「引いた、別れる」という人もいました。外気にすると放射性物質も一緒に取り込んじゃうでしょ、ということらしいです。ずぼらな男性諸君は意外と気にならないポイントなのかもしれませんが、繊細な女性はそこまで気が回るものなのです。僕も放射能に関してはそこそこ気を使っていたつもりでしたが、この話は言われてハッとさせられました。
放射能に関しては地雷がたくさん埋まっていましたが、新型コロナの問題に関しては「外出」と「手洗い」に集約されているように感じます。冒頭に紹介したサークル同期の家庭の話でも、彼女は「仕事での外出は基本テレワークにしてほしいけど百歩譲って認めるとしても、飲み会はないよね」と言う考えでした。
これは別の方に直接聞いた話ですが「旦那が今の時期に健康診断に行くと言う。わざわざ病院に行くなんてアホなの?」というもの。飲み会も健康診断も不要不急だよねという考えの妻たちです。彼女らの夫は直接の知り合いではないので言い分は聞こえてきませんが、それなりにあるのだと思います。
手洗いに関しても、「家に帰ったら真っ先にして」と我が家でも妻によく言われます。外で働く夫の多くがここ最近言われていることなのだと思います。それをどんな頻度で、どのくらい丁寧に洗うのか、は価値観です。それはコロナウイルスをどのくらい意識しているかによって変わります。
震災後、放射性物質を恐れてしっかり対策している人はよく「放射脳」だと揶揄されていましたが、今度は外出自粛や手洗いをしっかりしている人が「コロナ脳」とでも言われるのでしょうか。リスクに対して正しく恐れることは決して悪いことではありません。ただ、その新たに発生した価値観に対して向き合わずに離婚に至ってしまうのは残念なことだなと思います。
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