『<新版>日本語の作文技術』(本多勝一著)から

『ゆる言語学ラジオ』で紹介されていたこの本。ずっと気になっていたのですが敷居が高そうだったのと時間がなかったので積読していました。しかし一人旅のお供に選んだことで通読できたので、感想文を書きたいと思います。
 
 この本は、文章の修飾から句読点の位置、漢字とカナの使い分け、助詞や段落などについて例を用いながら非常にわかりやすく説明されています。そのなかでも特に勉強になったのが「第八章 無神経な文章」で紹介されていた「紋切り型」と「自分が笑ってはいけない」の項目でした。私はいわゆる”国語”には自信があります。センター試験でも9割以上は確実に取れる読解力があり映画の感想を曲がりなりにも2000本以上は書いているので、文章を書く自信はそれなりにあったのですが、先の2項目を読んでいて電車の中であまりの恥ずかしさに赤面して紙面から目を逸らしたくなる”無神経な文章”を書いていました。

 まず紋切り型は「紋切り型とは、誰かが使い出し、それがひろまった、公約数的な、便利な用語、ただし、表現が古くさく、手あかで汚れている言葉だ。」と説明され、例えば「ぬけるように白い肌」「顔をそむけた」「嬉しい悲鳴」「大腸菌がウヨウヨ」「冬がかけ足でやってくる」「ポンと百万円」などが挙げられています。私はこの紋切り型を無意識に良い者だと思って使っていたなと反省しました。さきほどだって、恥ずかしさを表す言葉として別に自分の顔を見たわけではないのに「赤面して」などと性懲りもなく書いてしまいました。(本当に顔から火が出そうです)

 では、この紋切り型をどうすれば良いか?その方法が、「自分が笑ってはいけない」の項目に正解が書いてあるように感じました。それについての筆者の説明を引用すると「おもしろいときであって、書く人がいかにおもしろく思っているかを知っておもしろがるのではない。美しい風景を書いて、読者もまた美しいと思うためには、筆者がいくら「美しい」と感嘆しても何もならない。美しい風景自体は決して「美しい」とは叫んでいないのだ。その風景を筆者が美しいと感じた素材そのものを、読者もまた追体験できるように再現するのでなければならない。」とあります。確かに紋切り型が事実でないのなから、何がおもしろくて美しいのかを細かに描写することこそが事実であり、読者に自分と同じ感動を追体験させることを目的とすべきです。これまでの私の映画感想文では、「〜が好き」「面白かった!」などなど「それはn=1の感想ですよね」と一蹴されそうなものばかりだったので、ワンパターンでつまらない文章になっていたと思います。もちろん、その当時の感情の備忘録でもあるので感情を書くことは必要だったのですが、見返した時に何にどう感動したかを備忘録とするのであれば、なおさら事実を書き出すことが重要なのかもしれません。
 
 私は職業柄、事実を記録しています。そこでは5W1Hを意識してしっかり記憶を頼りに記入しているつもりなのですが、プライベートな文章となると難しいということにも気づくことができました。書くために本を読むことに少し抵抗があったのですが、読んでみると自分のこれまでを反省し、よりよいものが書けそうです。事実、文章がうまくなっている気がしませんか?はい、多分気のせいです。

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