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突然の出会いと別れ
ある日、うさぎがうちに来た。
白いかわいいうさぎ。
犬みたいに懐いて、おいかけてくる。
団地の隣はたんぼで、蓮華が咲いていた。
蓮華畑に連れていくと、はしゃいで蓮華に潜り込んでしまう。
追いかけてもつかまらない。
帰るよ!
背中を向けると、慌てて追いかけてくる。
暖かくて、きもちが良くて。
膝に乗せて撫でていると寝てしまう。
朝起きるのも、家に帰るのも、うさぎに会えるだけで楽しみになった。
ある日、うさぎを連れて出かけるよと言われた。
うさぎとのはじめてのお出かけ。
車は街中を離れて川沿いに。
もう夕方。
川で遊んだらうさぎ、いなくなったりしないかな。
少し不安になって、うさぎを抱きしめた。
あるお宅についた。
うさぎ小屋やにわとり小屋があるお庭。
車を降りなさいといわれた。
降りたら、うさぎを取り上げられた。
母が
「よろしくお願いします😊」
とニコニコしながらうさぎを知らないおばさんに渡した。
優しそうなおばさん。
わけがわからなかった。
帰りの車で、もうあの子には2度と会えないことだけはわかった。
我慢できなくて泣いたら、母が怒鳴り出した。
「近所から臭いって文句を言われたんだから仕方ないでしょ!いつまでもグズグズ泣くんじゃない!」
パチーン。
母の左手が飛んできた。
耳が痛い。
でもそれより胸が痛い。
もう少し大きくなって知ったこと。
団地は動物を飼ってはいけなかった。
ベランダで飼っていて、糞尿の匂いでクレームがあったそう。
うさぎ小屋がなくなって、あっという間に母の好きな植木で埋め尽くされた。
ベランダはもう行きたくない場所になった。
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