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「祖母の味。」




幼い頃、祖母がよく作ってくれた
『ジャムボール』。



コロコロと手で丸めて、真ん中に指で窪みをつくる。
手慣れた祖母の作るジャムボールは形と大きさが均一で、見様見真似で私が作るジャムボールは少しいびつだった。
上に載せるジャムは、これもまた祖母が煮込んだマーマレードが定番で、みかんの皮が入ると美味しくないからと、それは器用にシロップだけを入れていた。


お菓子作りが趣味な祖母は、電気オーブンではなく
ガスオーブンをこだわって使っていて、
今の家庭には滅多にないけれど、下を覗くと
たくさんの小さな火が並ぶ姿が見れる。
棚に乗せられたオーブンの底は、小さい私の身長のちょうど目の高さにあったから、よくお菓子を焼く時には底の火を覗くのを楽しんでいたものだ。

クッキーが焼き上がると、香ばしく甘い香りが、
昔ながらの台所に広がる。出来上がって並んだクッキーを待ちきれずに



「食べていいー?」



と、手が伸びる。
手作りならではの優しくて、甘くて、ほんのり暖かくて、"お店では買えない味" だった。



あれからもう20年は経っただろう。

私は同棲をきっかけに、実家から離れることになり、
祖母が「何かひとつ贈るよ。」と言ってくれて、テーブル、冷蔵庫…何をおねだりしようかと考えたところ

祖母との想い出はやっぱり、


「オーブンだ。」と。

一昨日我が家に届いた祖母からの贈り物のオーブンで、思い出の懐かしい「ジャムボール」を作ってみた。

祖母のレシピ




どんなお菓子を作るのも、楽しい時間ではあるけれど、思い出があるお菓子は特別だ。


届いた石窯ドームで作るジャムボール




あの頃より私は手も身体も大きくなって、
昔よりも上手にクッキーを作れる様になったけれど、


祖母が作ってくれた、"あの味" には
なぜか、なかなか近づけない。


華やかで美しい、お菓子も素敵だが、
こう素朴だけれど、温かみのある味。
これが「手仕事の良さ」と言うんだろうか。
少しずつ、"あの味" に辿り着けるようになりたい。




・・・


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