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思わず腹ペコ映画祭

1月21日からとってもおいしい映画祭がオンラインで開幕した。国際交流基金アジアセンターと東京国際映画祭が主催している【おいしい!オンライン映画祭 CROSSCUT ASIA】である。

東京国際映画祭の部門のひとつとして東南アジア映画の特集を行ってきたCROSSCUT ASIAからのアンコール作品と、特別編として"おいしい"アジア映画特集の2部構成。そしてなんと東南アジア各国との同時開催だそう。これだけのラインナップでありながらも、1月21日から2月3日までの期間中は"おかわり自由"。太っ腹すぎる。

早速、"おいしい"アジア映画特集からシンガポールの『ワンタンミー』とフィリピンの『デリシャス!』を観た。どちらもその国や特定の地域独自の料理が次々と登場する。

『ワンタンミー』はドキュメンタリー風なフィクション。リーフレットには「ドキュフィクション」との記載があった。料理評論家である主人公が、文化の坩堝と呼ばれるシンガポールの多国籍な食の取材を通じて自身を見つめ直す。

複数の食文化が掛け合わされて生まれた料理、家族経営のホーカーの取材を通して語られる家族の絆、アナログからデジタルへ変わりゆく情報媒体、目まぐるしく発展するシンガポールで消えゆく伝統。様々なものが描かれており、私はこれをこの映画祭で観る最初の作品に選んでよかったと思っている。

『デリシャス!』はフィリピンのロマンチックコメディ。フィリピンのネグロス島にあるバコロドという街を舞台に、主人公が経営するイタリアンレストランがとある事情でネグロス料理のお店に転身することに。そもそもネグロス料理って何だ?というところから始まり、ストーリーが進む中で観ている私たちもその料理を知ることができる。個人的にアドボとギナタンという料理が出てきて懐かしさを感じた。知っている料理が出てくると嬉しい。それから怪しげなビジネス集団のボスのキャラクターが何とも面白くてクセになる。

フィリピンでは様々な言語が話されているというが、この映画で話されているのはヒリガイノン語。聞いたこともないし全くセリフが聞き取れないと思いきや、急に英語が出てきたり、かと思えばまたわからないヒリガイノン語に戻ったり。何とも不思議な感覚だ。映画祭では他にもフィリピン映画が上映されているが、言語が異なるところにも注目してしまうのは言語オタクの性である。

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そういえば、アジアの料理に関して思い出したことがある。北京に留学していたときにオランダ人の女の子と、ある日料理について話した。その子は「アジア料理って本当に楽しい!」と言っていた。甘い、しょっぱい、辛い、酸っぱい、甘辛い、甘じょっぱい、酸っぱくて辛い…いろんな味があって、食べるのが楽しいと目を輝かせていた。それに対してオランダは塩と胡椒と、あとはじゃがいもばっかり!とのこと。確かに。笑

中国料理ひとつとっても、北京と上海の料理は違うし、ひとくちに辛い料理といっても唐辛子のピリッと刺すような辛さと山椒のしびれるような辛さではまた違う。日本だって関東と関西で出汁の味が違う。今回の映画祭の舞台である東南アジアも、国ごとはもちろんその国の中でも独自の風味や食文化を発達させているだろう。 

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おいしい映画祭とはいえ映画だし…と甘く見てはいけない。画面に入れ替わり立ち替わり現れる料理たちにだんだんと空腹感を覚えてくる。そして映画に出てきた料理が無性に食べたくなる。また行きたい国が増えてしまった。

時間は限られているが、期間中に全制覇を目指したい。今日はどこの料理を食べようかと、まるでレストランを選んだりメニューを見たりしている感覚で上映作品のリストを眺める。映画のジャンルもドキュメンタリー、コメディ、ミュージカル、ドラマ、ラブストーリー、短編集とよりどりみどり。映画は無料で観られる分、お金は東南アジア料理のお店に落とそうと思う。

余談だが、『カンパイ!日本酒に恋した女たち』という作品が気になって仕方がない。しかし視聴サイトにはnot available in your countyの文字…どうやら日本では再生できないようだ。日本酒に恋する女として、ぜひともまたどこかで観る機会があればと願う。

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