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エリアスタディーズで世界を学ぶ

幾度めかの転職から1年が経過した。1年以上というのは、自分史上最長の勤続記録である。1年以上同じ会社の同じ部署にいて感じたのは、大学院卒業以来、転勤はあれどずっと同じ会社で働き、そろそろ定年を迎える父への尊敬と呆れだ。すごいと思う気持ちと、よく気が狂わないなという気持ちである。父からすればここ数年で何度もへこたれている私の方が弱すぎて異常なんだろうが、ここで遺伝子というのはあまり信用ならんものだということが証明できるだろう。それでも、文理問わず成績優秀な頭脳と、実家にある幅広い分野の蔵書など、学生時代に十分すぎるほどの学びの環境と機会を与えてくれたことには感謝したい。

ここ1年以上の通勤時間帯に何をしているかというと、読書である。一時期はずっと十二国記を読んでいた。『魔性の子』から最新刊まで読んではまた初めから、好きなエピソードをもう一度、慶国だけ追いかける、戴国だけ追いかける……といろんな読み方をしては何度も読んだ。他にも家にある小説を読み、図書館で借りた本を読み、ひたすら本を読んでいた。

2023年度、なにかまたシリーズものを読みたいと思い、何を読もうか考えた。そこで浮かんだのはとあるシリーズだった。

そうだ、明石書店のエリアスタディーズを読み漁ろう。

昨年、『リトアニアを知るための60章』を購入して読んだ。リトアニアは絶対手元に置いておきたい。一方的に恩師と仰ぎ尊敬している櫻井先生の著書だからだ。現駐日リトアニア大使のジーカス氏も寄稿している。明快でわかりやすく、かといって堅苦しくもない文が心地良い。憂鬱な通勤ラッシュの満員電車が、いつの間にかリトアニア行きのファーストクラスになる。

昨今の国際情勢はどことなく緊張感が続く。なぜいつまでもだらだらと戦争なぞしているのか、なぜ争うのか、なぜ歴史を繰り返すのかと常々思う。私は政治家や学者といったたいそうな人間ではないし、そうなりたいという希望は今のところない。だが、この世界にただ呼吸をして存在しているのは嫌だ。微力ながら思考というものは続けていきたい。私は世界を知りたくなったのである。

とはいえ世界史の教科書では一部の地域、特にアメリカと西ヨーロッパに偏り過ぎている。これではいけない。もっと幅広く、丁寧に、だが堅くないもの……と考えたときに浮かんだのがエリアスタディーズだ。各国の歴史をフラットに、現代社会とも結びつけながら学ぶにはもってこいである。

こうして私は、通勤時間帯を有効活用しつつ、高校時代よりもより深く世界の歴史と現在を学ぶことにした。ある意味で学び直しであり、ある意味では全く新しい知識を覚えるも同然である。社会人として、やはり国際情勢へのアンテナは張り続けていたいものだ。

果たして1年でどれだけ読めるだろうかとワクワクしている。1年後の私はどうなっているだろうか。世界はどうなっているだろうか。世界の変化を追うために、その背景にあるものをひたすら追いかけていたい。

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