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イルカの声で満ちた世界

私がイルカと泳ぐまで

実に10年の月日を要してしまった。

たった10万円でこんなにも素晴らしい体験ができると知っていたら躊躇することなく速攻申し込んでいただろう。

9月の半ば、私は胸躍らせながら東京の竹芝フェリーターミナルにいた。

御蔵島のイルカと泳ぐためだ。

45歳を過ぎて1人でイルカと泳ぎに行くなんてちょっと乙女チックすぎだろうか。それとも無謀というだろうか。

実際のところは、夜中のフェリー2等の12人部屋で船酔いに苦しみながら、髪は乱れ、顔は青ざめ、耐えるしかない7時間弱の船旅から始まった。

子どもの頃からなぜかイルカに魅せられていた私は、鎌倉の祖父母の家に遊びに行く度に江ノ島水族館(現新江ノ島水族館)のイルカショーを見に行くのが楽しみだった。

20歳を過ぎて、当時の彼と和歌山の白浜アドベンチャーワールドに行く機会があった。イルカがいるとも知らず(ここで当時の彼に「イルカはいるか?」と聞いたかどうかは定かではない)、訪れた。アドベンチャーワールドはパンダが有名だったから、頭の中にイルカの「イ」の字もなかったはずだ。

ところがどっこい、イルカがいるプールで脚まで浸かって触れられるという体験コーナーがあるではないか(今はないようです)。触れるだけではなく、イルカに合図を送るとイルカが芸をしてくれますよ、というものだった。

当時の彼は体験しないというので、1人で、幼い参加者たちに混じってイルカと遊んだ。合図をしたらイルカは顔を縦に振ってはしゃいでいた(ように見えた)。あの時の高揚感となぜか光の眩しさだけは覚えている。果たして私たちはパンダを見たのか、そこはどうにもこうにも思い出せない。

それから6年後、今度はメキシコのシカレットというテーマーパークでイルカと一緒に芸をするという体験コーナーに参加する。別れた元旦那との新婚旅行だったが、元旦那はやらないというので、私だけ参加した。

私の足の裏を一頭ずつ、つまり二頭のイルカがものすごいスピードでプッシュしてくれ、私はスーパーマンのごとく両手を上に掲げて水際をシューっと滑るということをしたのだ。白浜からの進化たるや。

その後、イルカと記念撮影。イルカが私のほっぺにキスをした。商売上手だ。すっかりのせられ、写真(しかもノートパソコンぐらいのやたらでかいやつ)を買った。今思えば、この写真に元旦那が写っていなくて本当によかった。

ハッシュタグコウカイシナイイキカタ

それからずっと御蔵島のイルカのことは気になっていた。

しかし、ツアーページを検索するたびにすでに時遅しで予約がいっぱいだったりシーズンが終わっていたり、また御蔵島は天気に左右されやすく船が出ないこともあるリスクから、毎回断念。いつの間にか10年が経ってしまったのだ。

今年の8月のお盆にコロナでダウンした時に、ふと死を考えた。実際は軽症で済んだので、死は大袈裟なのだが、しかし頭をよぎったのが、「このまま死ねるか?」だった。

私は3年前に離婚している。

離婚を考えた時に決意したのが「後悔せずに自分の人生を生きる」ということだった。今風にいうなら、 #後悔しない生き方 #自分を生きる 、だろうか。

いつも家族や人を優先してばかりで、自分を押し殺してきた自分が嫌になったのだ。

あの時も乳がんの疑いがあってそんなふうに思ったのだったな。

ともかく、そんな経緯でコロナさんと一緒に横になりながら、グーグルを検索したらシーズンも終盤だというのにまだ募集中だ。しかも、御蔵島に泊まるほか、宿泊は三宅島にして御蔵島のイルカスポットまで漁船で行くという方法があると知った。

いや、10年前にはこんな情報あったかいな。と思うほど青天の霹靂だった。

御蔵島への大型客船着岸条件は厳しい。お天気も良く御蔵島まで行けたとしても帰りの船が出港しなければ御蔵島で大型船が出るまで待つか、漁船をチャーター、あるいは三宅島までヘリで移動して三宅島から大型船に乗り換えとなり、それらはツアー会社の責任外。ギャンブルな旅は、翌日から仕事となると影響がでる。これが私を躊躇させていた一番の理由だったのだ。

その理由がなくなった今、私を引き留めるものは何もない。

気づけばコロナの床にて申し込み完了。もうコロナなんて吹っ飛んだね。

とまあ、こんな経緯でワクワクが始まった次第。

脳内の自分と体の自分

夜行大型船で7時間近く過ごすのは大学生の時に大阪から沖縄に行ったきり。今回は硬い床の2等客室。45歳にはしんどかったけど、旅の経験としてはやってみてよかったかもしれない。東海汽船の大型客船橘丸には特等室まであるけど、この旅では私はタイタニックでいうところのジャックだ。

ジャックは結局眠れなかった。宿へ着くと部屋が準備されるまでの仮眠部屋として大きな相部屋に通される。ジャックは神経質だ。ここでも全くもって眠れず睡眠不足のまま朝ごはんを食べる。

スノーケリングやダイビングの経験はあるが、念の為レッスンを受けることにした。他の皆さんはベテランさんばかりでどんどん下の方に潜っておられる。私は色んな意味であっぷあっぷ。まだドルフィンスイム、始まってもない。。。

下の方で亀がスイスイ泳いでいる。その後ろから同じツアーのベテランさんたちがこれまた亀か魚かのように泳いでおられる。

私、みなも(水面)にてまだあっぷあっぷ。
さっきからあっぷあっぷしかしていない。

いい加減に慣れろと自分に突っ込むのだが、この歳になると頭と体が別々の動きをするのを若いみなさんはご存知だろうか。運動会で派手にこける(転がる)お父さんたちをたくさんみてきた。今、私はそれを水の中で経験している。ギャラリーが小さな魚たちでよかったよ。

歳をとると脳から送る信号に不具合が生じるのか、少なくとも信号が体に届くまでの時間が長くなるようだ。悲しいお知らせだった。

見兼ねたインストラクターが「何もしなければ自然に浮くから」と言う。しかし、「何もしない」がよくわからない。頭で考える人は体に委ねる、が一番できないのだ(すんごい気づきである)。

ようやく「ただ浮く」ができたときの達成感を想像いただけるだろうか?浮くことができた時、ことのシンプルさに思わず笑った。

理屈ではないのだ。頭が重いと沈む。もがけばもがくほど体力を消耗する。じゃあどうするか。浮かべばいい。それだけなのだ。たった30分で自然は人生で大切なことをさらりと教えてくれた。

練習を終えた車の中で、午後からの本番は大丈夫だろうかと不安になる。隣でベテランさんが亀の動画を見せてくれた。その時初めて海の透明度を知る。私のマスクは相当曇っていたらしい。自分の鈍臭さに笑いながら出港の時を迎えた。

別世界の住人になる

お天気は快晴。三宅島から御蔵島までは漁船で40分。波も穏やか、気温もちょうどよく海風が最高に気持ちいい。

スポットに着くとすでに多くの漁船がイルカの群れを探しては潜っている。

いよいよだ。ドキドキしながらインストラクターの指示を待つ。

さあ、今だよ!

言われて海に潜ると私の視界がまた曇る。私もお馬鹿ではない。午前中の失敗から、マスクには曇りどめを今度はしっかり流布している。

曇っているのはマスクではなかった。目の前のイルカたちに感動で胸がいっぱいで私の目が潤んでいたのだ。

最初に出迎えてくれたイルカはジョー。

御蔵島のイルカは現在150頭ほど。全てのイルカが個体認識され、名前がついている。ジョーは背びれがかけているので特にわかりやすい。

しかも、しかもだ!

水中の音たるや。初めての経験に大興奮で息があがる。

なんでもイルカは25キロも先の仲間たちとコミュニケーションが取れるそうだ。海に潜った途端、イルカの鳴き声でまるで別世界になる。イルカの姿が見えなくてもその声は止むことがない。

これは反響定位といって、彼らは自分の居場所を知らせるためにコミュニケーションを取っているそうだ。英語ではecholocationという。自然のGPS。

イルカと泳ぐ体験はもちろんのこと、この心地いい音を聴きながら泳ぐ経験は私にとって忘れられない宝物になった。想像を絶する経験は魂をふるわせる。

年齢を理由に諦めない

この経験で学んだことがある。

いくつになっても新しい体験をやめてはならないということ。そして年齢を理由に挑戦をやめないことだ。そして直感を信じて行動することだ。

何かやろうと思った時に迷いがでるまでは実に3秒から5秒しかかからないそうだ。それくらい私たちは思考が強い。思考が大きいと沈む。沈んだらそりゃ苦しいよね。

浮かびつつ海の中(自分の願望の方向)に顔だけつけておいたらいい。まずは身を委ねて頭空っぽにして浮かぶことが大事だ。苦しくなったら一休みすればいいし、違うと思ったら海から出ればいい。

魂が震えるほどの、想像を絶する経験はいつもと同じやり方をしているだけでは決して出会えない。でも、それは難しいと思うから難しくなるだけで実はとてもシンプルだ。私が海に浮くことができたときに思ったように、やってみたら「な〜んだ」と体感することの方が多い。

コロナがきっかけではあったけど、私が自分の願望を実際に行動できているのは今のパートナーの存在がとても大きい。

実はこのドルフィンスイムには後日談がある。

なんと1ヶ月後の10月下旬に今度はパートナーとともに再び御蔵島と三宅島を訪れることになったのだが、これがまた珍道中になった。その話はまた今度。

なぜに毎回イルカには男が絡むのかも私にとっては謎である。

ここまで私の駄文に付き合って読んで下さった方はすごい!感謝です。

今日も素晴らしい1日になりますように!!!ありがとうございました。







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