「僕は君が嫌いだ、でも君はそんな僕が好きなんだ」 訂正

今回は以前に書いた「僕は君が嫌いだ、でも君はそんな僕が好きなんだ」の訂正したものをあげようと思います。以前のは感情的になりすぎていたのもあり、読み辛いものとなってしまいました。今回はその反省点も含めて新しく書かせていただきます。

「僕は君が嫌いだ、でも君はそんな僕が好きなんだ」
 僕は君が嫌いだ、でも君はそんな僕が好きなんだ。どうして僕ばかりに構うの? そんなのは分かり切っているけど、愛がほしい僕は君にさえ縋ろうとする。僕はずるい人間なんだよ……。

 神崎良太、それが僕の名前だ。平凡な名前だけど彼女に呼ばれると特別な感じがしたんだ。彼女の名前は佐藤彩音。バイト先の先輩で5歳年上で僕から告白して付き合うことになった。僕は将来、小説家を目指していて専門学校に通っている。彼女は僕の書く文章を好きだと言ってくれた。それがとても嬉しかったのを今でも覚えてる。
「良太の書く文章、ほんとに好きだよ」
 嬉しそうに笑う彼女。
「ありがとう、彩音。好きなのは僕の小説だけ?」
「ううん。良太の事も大好きだよ」
 そう言って優しく抱き締めてくれる彼女。僕も抱き締め返す。あったかい温もり、安心する。
「好きだ」
何度目かも分からない言葉を口にする。
「私も」
 そう言ってくれる彼女。僕はすごく幸せだ。幸せの、はずなのに……。何でこんなに胸が苦しいんだろう。それから数ヶ月経ったある日、彼女が新人の子をトレーニングしていた。それを見た僕は心がモヤモヤして痛かったんだ。僕は前からヤキモチを妬いたり嫉妬したりするけど、今回はいつもと違った。頭も一緒に痛くなってツラい。
「良太? 大丈夫?」
 心配してくれる彼女。
「大丈夫だよ」
ほんとは大丈夫じゃないのに嘘をつく僕。僕の体調が悪い原因は君なんだよ? なんて、言えるわけない。絶対に彼女を傷つけてしまうから。僕は彼女とバイトのシフトをずらして入るようになった、僕がツラくなるから。そして彼女を嫌いになりそうだったから。
「最近様子が変だよ? 何かあるならはっきり言ってよ」
 2人で過ごしている時にそう言った彼女。じゃあ全部話すよ? 僕が思ってること全部。
「僕は嫉妬してるんだ。君が男の子のトレーニングしてる所を見てすごくツラくて胸が痛いんだ。最近は君が異性と話してるだけで胸が痛いし嫌なんだ。よく分からないけど、ごめん……。嫌なんだ。ほんとにごめん……」
 上手く僕の思ってることを伝えられなかった。これ以上言ったら嫌われそうで怖かった。
「ごめんね、良太……」
 悲しそうな表情でそう言った彼女。なんで君が謝るの、君は何も悪くないじゃないか。
「彩音は、何も悪くないよ。僕が悪いんだ、ごめん……」
 今回はこれで終わった。でもこれから先、僕は些細なことで嫉妬して彼女にぶつけた。それを彼女を優しく受け止めてくれた。だけどやっぱり不安なんだ、怖い、人の本心なんて分からない。言葉でなら何とでも言える、嘘でもね。僕を傷つけない優しい嘘だとしても、それが時には凶器となって僕に突き刺さるんだ。

 あれから数日、お互い忙しくて中々会えない日が続く。バイトで少し会えたりはするけど、僕は彼女を避けてるし、話も特にはしない。プライベートでは少しの間だけだけど、会えるからそれで良い。そして最近、思うのは前からだけど僕は彼女に依存してる。しすぎてる。だからなのか僕は彼女に求め過ぎてしまってるのかもしれない。なにもかも……。また数日経って、彼女が新人のトレーニングをしていた。年も彼女と近い男性の人。楽しそうに話してる、頭が痛い……。何でこんな些細な事で傷ついてるんだろう。もう、いやだ。
「僕の事、嫌いになった?」
「そんなこと一言も言ってないよ」
「僕の事、もう嫌になった?」
「いやだったらこんな風にしてないでしょ」
 最近はこんな会話ばかりするようになった。前みたいに楽しくない、彼女の顔色を窺ってばかりで……。
「ごめん、もうやめよう。僕、もうやだよ……」
「どうして?」
「つらいんだ、これ以上君に嫌われたくない。君の重荷になりたくないんだっ」
 彼女に縋るようにう訴える僕。
「私は嫌ってなんかない、重荷にも感じてない」
「もう嫌なんだ! 君が他の男と話してる姿を見てるとイライラして、君を嫌いになってるんだ!」
 感情的になって自分の本音をぶつけてしまった僕。
「そんな事言われても……。じゃあ貴方はどうなの?」
「えっ……?」
 この時、僕は気づいた。いや、今までずっと気づかないふりをしてたんだ。僕は嫉妬しない彼女をどうにか嫉妬させようとしてた。僕の気持ちを彼女に分かって欲しくて。でもそれは僕の勘違いだった。彼女はちゃんと嫉妬していた、怒ってもいた。それを僕は心の何処かで感じていた筈なのに、自分だけが傷ついていると被害者ヅラしていたんだ。結局僕は自分を守りたかっただけなんだ。だからなのかな、彼女に全てを求めてしまったのは。愛も安心感も幸福も悲しみも全て……。
「ごめん……」
 謝る僕。
「こんなんじゃお互い、幸せになれっこないよ……」
 苦しげにそう言った彼女。
「そうだね……もう、終わりにしよう」
 そして僕らは終わった……。それから僕らはただの先輩後輩に戻った。もう、彼女に触れる事も……キスする事も……抱き締める事も……出来ないんだ。彼女と別れて、どれぐらいの時が経ったのだろう。僕はまるで生ける屍の様に毎日を生きている。
「大丈夫……?」
「そう声をかけるってことは、僕が大丈夫じゃないって見えた事だろ?」
「……正論、言われちゃった」
 そう言って苦笑する曽根崎葵。彼女は僕と同じクラスメイトであり、抜け殻になった僕に毎日話しかけてくる女の子だ。僕はもう人との関わりを断ち切った。だから必要な会話以外は全てしていない。バイトも辞めた。
「ねぇ一緒に帰ろうよ」
 はぁ……また話しかけるの? 君も飽きないね。
「いいよ」
 僕がそう言うと君は、効果音がつくぐらいに今の僕には眩しすぎる笑顔になったんだ。帰り道は二人とも無言。聞こえるのは歩く靴の音、風の音、車の音、野良猫の声、人の声、学校のチャイム。黙っているせいか色んな音が聞こえる。
「どうして君は僕に話しかけるの?」
「どうしてって話しかけたいから。じゃダメかな?」
「はぁ……君は幸せ者だね」
「あなたは幸せじゃないの?」
 その一言で僕は足を止めた。そして、彩音と過ごした日々が頭の中を駆け巡る。僕にとって初めての彼女。僕が初めて心から愛した人。それ故に彼女に求めすぎてしまったんだ。
「もう、僕に関わらないで。僕はもう人と関わりたくないんだ」
「逃げるの?」
 君のその一言が、僕の胸にどれくらい突き刺さったのか分かる? まぁ分かって欲しくもないけどさ。
「そうだよ、逃げるよ。僕は彼女からも逃げたんだ。僕は自分の事ばっかりで、彼女の事を……彩音の事を何も考えていなかったんだ。僕はまだ子供で、何も分かってなかったんだ……」
 しばらくの沈黙が続く。道を歩く人達の視線を感じて僕は、君から逃げた。君は僕を追いかけては来なかった。きっと僕は、君を傷付けたよね。僕が逃げる前に見た君は、泣きそうにしていたんだから。家に帰ってきた僕は、自室に閉じこもった。何をする気も起きなくて只々、ベッドに身体を預けていた。
「はぁ……」
 さっきからため息しか出てこない。つらい、どうすれば良い? 誰か助けて……。誰か僕を抱き締めて、愛して……愛してよっ!
「助けて、会いたいよ……彩音」
 なんで僕はこんな風になってしまったんだろう。前はこんなんじゃなかった。高校に入ってから初めての事が多過ぎて、混乱しているのかもしれない。そうだ、きっとそうだ。混乱しているんだ。僕はもう……一生誰も愛さない。
「どうして僕は、こんな性格なんだろう……。一人になると色んな事、考えちゃうな」
 今考えると彼女は、彩音は僕を愛してくれていただろう。でも僕はそれを無視したんだ。自分に自信がなさ過ぎて彼女の事を信用しきれてなかったんだ。それに年の差もあったせいか、彼女との会話が進まない時もあって僕はとても苦しかった。僕といても彩音は楽しくないんじゃないかって。そうやって悪い方向ばっかり考えて自己嫌悪に陥って、それが別れる原因にもなった。
「最低だ、僕なんて……。死にたいな……」
 なんだ、簡単な事じゃないか。こんな僕なんて必要ないじゃないか。苦しくなるくらいなら、早く楽になった方がマシじゃないか。そう思い立ったが即行動に移すのが僕だ。リビングには誰もいない。邪魔されずに死ねる。
「よし」
 僕は包丁を自分の手首に押し当てる。
「……っ!」

カチャン――

 包丁が無機質な音を立てて、床に落ちる。
「はぁはぁ……」
 やっぱ怖いな、まだ死にたくない。死ぬって怖いな。
「僕って弱い……」
 僕の呟きは誰にも届く事なく消えた。

 次の日も、その次の日も。僕は一歩も外に出なかった。親も学校も友達も、何も言ってこないから僕の自由にさせてもらう。僕は完全に廃人へと変わっていた。僕の家族もみんな狂ってるからな。父親は生まれた時からいなくて母親もずっと男遊びばっかり。毎日毎日、男のとこばっかり……。嫌な事を思い出していたら不意に、チャイムが鳴った。誰だ?僕がドアを開けると、そこには君がいた。
「良かった、生きてた……」
「いや、勝手に殺さないで?」
「ごめん」
 そういって君は笑った、つられて僕も笑った。
「ひどいな、君は」
「だって、学校にも来ないし……」
そう言って君は、視線を落としたね。
「僕がいなくても、どうってことないだろ。誰も僕になんか興味ないんだから」
「私は興味あるけどな」
「あっそ」
「変わったね、初めて会った時はもっと優しくて真面目で気さくな感じがしてたのに」
「それは君の思い違いだ。あれはただの演技、人に嫌われない為のね。……立ち話も疲れるし、中に入る?」
「うん」
 そして僕は君を家に招いた。なんで、なんで僕は君を誘ったんだろう。まあいいや、興味ない。
「……」
 する事がない……、気まずい……。君も黙ってるし、僕はそもそも話す事がない。
「あのさ、君……警戒心ゼロ?」
「え?」
 ずっと抱いていた疑問をぶつけたら、君はキョトンとしてるし……。
「男が家に誘うなんて、そんなの下心丸出しじゃないか」
「そうなの?」
 え?高校生だがらそれくらい分かろ?
「そうだよ」
「貴方になら、良いよ……」
 この言葉で、僕の中で何かが切れた。
「その言葉、後悔させてやる」
ドサッ――
 僕は君をソファに押し倒し、君の動きを封じた。
「え?」
 君は怯えた目で僕を見つめた。そんな君を僕は冷めた目で見つめる。
「どう?怖い?」
 僕がそう聞くと、君は横に首を振った。
「嘘つき。こんなに震えているのに、怖くないわけないでしょ」
「大丈夫……」
 そう言った君はとても小さく見えた。ほんとに、すごく小さく。
「ふーん」
 僕は指で君の耳を軽くなぞり、その指を首筋に這わせた。君は軽く身体を震わせ小さな声を上げた。僕はなぞるだけの動きをひたすらに繰り返した。なぞる場所によって君は身体を捩り、切なそうに声を上げる。
「やめる?」
 僕の問いかけに君は小さく頷いた。僕は素直に君の意見を受け入れ、大人しく身を引いた。君の拘束を解いて自由にした。
「ごめん」
 とりあえず謝った。君は「大丈夫」と答えた。
「僕の事、嫌いになっただろ?」
「そんな事ないよ」
 なんで君はそうなのっ、なんでそんな事ばっかり言うのっ!?
「なんでよっ!僕はこんな最低な事してるのに、なんで君は優しいんだ!どうして僕を嫌いにならないの!?」
 僕は我慢出来なくなって、君にイライラをぶつけてしまった。最低だね、ほんと。
「だって、苦しそうだから。私はあなたを助けたいのっ!」
 君の悲痛な叫びは僕の胸に突き刺さる。
「嘘だっ、君はそう言って自分を良い人だと正当化したいだけなんだろ!?女なんてそんなものなんだ!!!僕はもう、一生誰も愛さない!そう決めたんだっ、もう誰も好きになりたくない。誰とも愛し合いたくない……」
 僕は初めての恋愛で浮かれていた。恋がこんなに苦しいなんて思わなかった。そして僕が何をしたかったのかも。僕は彼女に対して最低な事をしてしまった。人間として、男として、彼氏として。絶対にしてはいけない事をしてしまった。それに対して彼女も怒ってた。そして別れる原因にもなった。僕は自分で手に入れた幸せを自分で放棄した。自分で壊した。「寂しかった」「甘えたかった」そんな言葉で許される問題じゃない。彼女は怒り、酷く傷ついていた。僕は彼女に甘えすぎてた。本当に最低だ、死んだ方がマシだ。でも死ねないから、僕は誓ったんだ。「もう誰も愛さない」って。そうすれば誰も傷つくこともなく、みんな幸せのまま終われる。誰も傷つかない、僕も傷つかない。それで、それで良いんだ。僕はもう、人を傷つけたくないんだ。
「私にはあなたを……救えないんだね」
「ああ、もう誰も僕を救えない。帰ってくれ、もう……来るな」
「ごめんね……」
 どうして君が謝るんだよ、君はこんな僕にすごく優しくしてくれた。僕に手を差し伸べてくれた。それを僕は無視して、その優しさが僕には怖くて、逃げたんだ。
「ほんとに、ごめん……」
 僕から出た最後の言葉。それ以上、僕が何かを言うことはなかった。
「愛してるよ」
君はそう言って、家を出た。どうせなら彼女に言って欲しかった言葉を君が言ってくれた。ありがとう、こんな僕を好きになってくれて。愛してくれて、ありがとうっ……。僕の目からは涙が止めどなく溢れた。
深夜2時。僕が一番好きな時間に僕は橋の上に立っていた。夜風が僕の肌をくすぐる。気持ちいいな……。死ぬのが怖いなら、だれかに殺してもらおうとしたけどやっぱり一人で死にたかった。ここならだれにも邪魔されないしひと思いに死ねる。それにこの高さから、落ちれば下は石だらけだからすぐ死ねるだろう。
「さよなら、愛してたよ……。また、会えたら、今度は間違わないよっ」
こんな未練タラタラでごめん。僕を好きになってくれてありがとう、そして、ごめん。言いたいこと全て言い終えた僕は無心で飛び降りた。不思議と恐怖はなかった。

――ガンッ
 鈍い音が渓谷に響く。あはは、やっぱ即死は無理だったか……。痛い、すごく痛い。胸の痛みに比べたら全然だけどね。
「月が……綺麗だな……」
真っ白な月は段々と、真っ赤に染まっていく。赤い月も悪くないね。‐fin‐

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