森の健康を守る間伐で原材料を調達
原料も自分たちの手で調達、森の健康を守る間伐(かんばつ)伐採
Liccaが大切にしていることの一つは、自然の循環を意識するものづくり。だから、エッセンシャルオイルの原料となる木々はオーナー自身の手で調達しています。
「エッセンシャルオイル業界では原料調達と蒸留は分業していることが多いので、蒸留する方々は地域の人々や業者さんから仕入れするのが一般的です。でも、私たちは原料調達から自分たちの手でやりたいと思っていて。自然の循環を邪魔しない調達方法を色々と考えた結果、自分たちの手で間伐伐採を行うのが適切ではないかという答えに辿り着きました。」
エッセンシャルオイル業界では原材料調達から蒸溜、商品化までを一貫して行うことは珍しいことです。つくり手が地元の林業のチームに所属し、自ら地域の山の手入れを行いながらそこで伐採した枝葉を原料として使用するスタイルは全国的にほとんどみられません。
それに「間伐」という言葉もあまり耳慣れませんよね。しかしこれは、森にとって非常に大切な作業だとオーナーは言います。
「間伐というのは木を間引く作業のことです。間伐を適度に行うことで森内に適度な光が差し込み、草木が生えやすくなることで多様性のある森に育ちます。森が健康であり続けるために、自然とうまく共存していくためにはある程度人間の介入が必要なんです。」
自然は勝手に育っていくものと思いがちですが、「健康な森」をつくるためには計画的な間伐伐採が必要なようです。というより、高度経済成長期に家屋建設のため日本中にスギやヒノキを大量に植えた人間の責任もあるし(そして現在はほぼ放置状態です)、森が健康になるために手を貸すのが筋だな、なんて、オーナーの手際よい間伐を見ながら思ったり。
また、間伐された木部や枝葉は利用価値がないとされるため森にそのまま放置されるのが一般的ですが、Liccaではこれらをすべて持ち帰って蒸留しエッセンシャルオイルを抽出します。森の健康に貢献するだけでなく、伐採したものをすべて利活用しきるのがLicca流です。
「自然の恵みを余すことなく使い切る。自然に無駄なものは一つもないですからね。」
自然と共存するみなかみの人々から、教わる
そうは言っても間伐は重労働。これを週に2~3回程行います。真夏は特に体力との勝負です。それに、夏の森はブヨやハチ、ヒルなど危険な生き物が行き交う場所なので、細心の注意を払いながら短時間で終わらせるそう。一体間伐の知識や方法はどこで修得したのでしょうか。
「2020年春、みなかみに移住してきてすぐにエッセンシャルオイルの原料調達方法を役場の人に相談していたところ、自伐型林業を行うチーム「木木木林(きききりん)」を紹介してもらいました。そのチームにはサラリーマンなど様々なバックグラウンドを持つ人が所属していて、主に週末を利用した「週末林業」を行っています。そこに参加することで、間伐のやり方や山の知識をたくさん教えてもらいました。あとは、みなかみ町が開く自伐型林業研修というものもあり、ここでは自然にまつわる取り組みが盛んです。自然のことは全部、みなかみの人から教わっています。」
自然と共存するみなかみ町ならではの環境ですね。
「先ほど伐採していたアブラチャンという木は、同じ株から何本も生えてきます。だいたい1本あたり6〜7年周期で成長していくので、その年数を計算しながら伐採しています。香りの原料といっても畑に植えて毎年収穫できるハーブみたいに成長サイクルが早いわけではないので、森全体の生え代わりを考えながら間伐することが大切です。これも町の人たちに教えてもらいました。」
ただ生い茂っている木々を伐採するのではなく、森全体の計画を頭に描きながら伐採するのが間伐の肝だそう。こういったことを町の人々に教わりながら、自分の手で実際にやってみることで、学んだことがどんどん吸収され、日々の伐採で新たな発見があるとオーナーは話してくれました。そんな話をしていると、木に生えたキクラゲを発見。
「これは初めて見ました!森には発見が詰まってますよね。」
そう言いながら無邪気な笑顔をこぼす少年のような部分も、オーナーの個性の一つです。
名前がかわいらしい、「アブラチャン」
アブラチャンは夏になると果実をつけるかわいい木です。一見、どこにでもありそうな見た目の木ですが、蒸溜すると懐かしさと親しみのある香りが抽出できます。アブラチャンはLiccaの中でも人気の高い香りのひとつです。
「アブラチャンは雑木なので、実は全国どこにでもあります。本州、四国から九州各地に分布するクスノキ科クロモジ属の落葉低木で、春には花を咲かせます。庭で育ててる人も多いと思いますよ。地域によってはヂシャの木と呼んだり、場所によって呼び名が違ったりもします。」
確かに見たことあるような枝葉の形。雑木林に生えてそうな何気ない木ですが、なぜアブラチャンを蒸留しようと思ったのでしょうか。
「アブラチャンは香りがいいとりんご農家さんから聞いたことがあって、実際に蒸留してみたら想像以上にいい香りだったので研究してみることにしました。雑木なので一人でも間伐しやすいという利点もあり、扱いやすいのも有難いです。それに最近、伐採してから枝葉を寝かせることで豊潤な香りに成長するということや、木が芳香成分を残そうとするようなのでオイルの採れる量も多くなるということが分かりました。蒸溜を始めて2年ですが、季節や環境が変わると思わぬ発見に出会ったりします。」
ということは、他の木も寝かせたりと研究を重ねれば、新しい香りの発見があるかもしれないということですね。
「きっとまだまだ私たちの知らない森や木の香りはたくさんあるのだと思います。」
今後どんな香りとの出会いがあるのでしょうか、私たちもワクワクが止まりません。
今回は、間伐伐採というこだわりの原料調達方法についてご紹介しました。
蒸溜の様子や香りのラインナップなど、これからもゆるりと発信していきますので、これからもよろしくお願いいたします。
Liccaについて
Licca(リッカ)は、自然の循環を意識したものづくりをおこなうエッセンシャルオイルブランドです。ユネスコエコパークに認定された自然溢れる群馬県みなかみ町に魅了された関西出身の夫婦がその地に移住し、2020年に小さな工房を開くことからはじまりました。「みなかみの木」を中心に和精油を一つ一つ蒸溜し、採れた精油を用いたアロマ関連の商品を制作・販売しています。癒しの香りをぜひどうぞ。
webサイト:https://www.licca-from-minakami.com/
Instagram:https://www.instagram.com/licca_from_minakami/
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