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世界平和のために教育系ベンチャーを起業した話

こんにちは。株式会社Libry(リブリー)の後藤です。

当社は、僕と友人が東工大の在学中に起業した教育系の学生ベンチャーです。「Libry(リブリー)」という中高生向けのデジタル教科書・教材を開発しています。

先日、ありがたいことに、東工大の同窓会から”将来有望なベンチャー”として表彰される機会がありました。

その表彰式に向けてスピーチを考えていたときに、起業したころの楽しかったことや逃げ出したかった記憶が走馬灯のように蘇ってきたので、書いていこうと思います。


原点は小学生のときに見たテレビ

起業から少し時間は遡りますが、僕の起業の原点は、小学5年生の時に見たドキュメンタリー番組です。テレビの向こう側にいる、勉強をしたくても学校に通えない子どもたちが特集されていたのですが、当時勉強があまり好きでなかった僕は、子どもながらに衝撃を覚えたんです。

生まれた場所は自分で選べないのに、なんであの子は学校に通うことすら許されないんだろうと。

その時、先進国である日本で生まれた僕が人生で成すべきことは「世界平和に貢献すること」なんだと確信に近いものを感じたんです。


最初は国際ボランティアを志しましたが、高校、大学でいろんなことを学ぶうちに、「社会システムづくり(制度設計)」が重要だと気づきました。そこで、制度設計を専門に学ぼうと、東工大の「社会工学科」に進学しました。

社会工学科では、制度設計の元になる「人間の行動原理」を理解すべく、ゲーム理論やミクロ経済学、統計学など幅広く学びました。その間もずっと世界平和には何が必要なのかを考え続け、行き着いたのは「雇用」と「教育」でした(「雇用」については大学院で学ぶのですが、それはそれで長くなってしまうので今回は割愛します)。


友人に誘われて起業

大学3年生の冬、友人と忘年会をしていたときに、高校時代に「こんなサービスがあったらいいのに」と考えていた学習サービスの話になりました。


高校時代の僕は「ガリ勉」でした。東工大を目指して、毎日12時間以上は勉強していたように思います。定期試験や模試で間違えた問題については、二度と間違えないように、手持ちの問題集から似た問題を探しては解き、解く問題がなくなると本屋で問題集を買って、似た問題を探して解いて、を繰り返していました。

そんな感じで必死に勉強するなかで「自分が間違えた問題に似た問題を、世の中の全ての問題から勝手に探してくれるサービスがあったらいいのに」と思うようになりました。ただ、当時は、「いつか誰かが開発するだろう」と考えていました。


ところが、大学生になって、ふと思い出して探してみても、まだ開発されていませんでした。そこで「自分たちでつくってみよう!」と一念発起し、サービスを開発することに決めました。


ITベンチャーでインターン

「自分が間違えた問題に似た問題を、世の中の全ての問題から勝手に探してくれるサービス」という具体的なサービスの構想はあるものの、僕にも友人にもサービス開発の経験がまったくありませんでした。そこで、アプリ開発をしているベンチャー企業でインターンをすることにしました。

インターン先で携わっていたのは、子どもたち向けの教育系アプリです。開発に挑戦した結果、ユーザーに見える部分の開発はできそうだという感触を得ました。しかし、セキュリティなどについては勉強すればするほど「これは片手間の勉強では無理だな...」と感じていました。

「これではサービス開発ができない…」と困っていると、その友人がバンド仲間の優秀なエンジニアを紹介してくれました。それが、共同創業者の中村との出会いです。

▼共同創業者の中村と僕(2020年10月撮影)

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学生ビジコンに挑戦

優秀なエンジニアという強力な仲間を得ましたが、起業に関しては右も左もわからない状態でした。そこで、大人のメンターに協力してもらうために、ビジネスコンテストに出場することにしました。

ビジコン出場に向けて、最も力を入れたのは、「学生へのヒアリング」です。いろんな大学の食堂や教室を訪れて学生に声をかけ、「受験生のときにどんな勉強をしていたか」「どんな学習サービスだったら使っていたか」ヒアリングを重ねました。

なぜかパンを投げつけられるなど、悲しい対応をされることもありましたが、根気強く100名くらいの学生から話を聞き、「学習履歴を蓄積し、一人ひとりに合わせた問題を提案してくれる、大学入試問題のデータベース」というビジネスプランで事業を企画しました。

この企画をもって、100を超えるプランナーが集まる学生ビジコン「Trigger 2011」に挑戦しました。残念ながら優勝こそ逃してしまったものの、コンセプトは多くの方から賛同を得ることができ、決勝の5組まで残りました。ベルサール新宿で800名の観客を前に事業プレゼンテーションをしたのは良い経験です。

この経験に背中を押されるかたちで、2012年の5月に会社として登記し、株式会社forEst(現:株式会社Libry)が誕生しました。

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「サービスは面白いけど…」

起業後は、実際に自分たちで大学入試問題の利用許諾を得て、友人に協力してもらいながら解説を作成し、問題データベースの開発を進めました。さらにそれと並行して、塾や学校の先生に持ち込み、ヒアリングを重ねました。

結果から言うと、どの先生からも「これは実際の教育現場では使えない」と言われてしまいました。

ただ、(こういうところが教育業界の人たちの好きなところなのですが)多くの先生が真剣に向き合ってくれて、「良いところ」も同時に教えてくれました。

先生方から学んだことは、

・学習では、デバイス・サービス・コンテンツの3つが揃っていることが重要。
・今回だとデバイスはタブレット。これは今後スタンダードになっていくからいいと思う。
・サービスも「学習履歴を蓄積し、一人ひとりに合わせた問題を提案してくれる問題のデータベース』というのは面白い。
・だけど、コンテンツが『ただの大学生が自作したもの』だと信用できない。それでは、自分たちが預かっている大事な生徒には使わせられないよ。
だから『使えない』と判断したんだよ。

ということでした。
正直「詰んだ…!」と思いました。

当時のコンテンツは大学入試の過去問で、その模範解答は自作していたのです。それなりに自信はあったのですが、そこを「信用できない」と一蹴されてしまい、途方に暮れました。


会社を畳むことを決意

当時の僕は、ベンチャー起業に、大学の研究に、就職活動にと、三足のわらじを履きながらの生活で、心身ともに疲弊していました。

そう、先生へのヒアリングと並行して、実は就職活動をしていました。学生起業の経験もプラスに働き、ありがたいことに戦略系コンサルティングファームの選考も順調に進んでいました。

このまま、上手くいくかもわからない起業を進めるか、20代で高給取りになれる戦略コンサルタントになるかを決めるタイミングに来ていて、

「サービスもうまくいかないし、もう会社を畳もう」

僕はそう決意しました。
ただ、ある2人のおかげで、僕は就職も研究も捨てて、起業を続けるという選択をすることになります。

ひとりは、お世話になっていたとあるITベンチャーの社長です。その方に、会社を畳もうとしていること報告した時に、こう言われたんです。

そうか。就職することにしたんだね。
それも君の人生だけど、いちばんラクな選択だね。
でも、本当にやりきったの?

その言葉を聞いて、僕はハッとしました。

最後の3〜6ヶ月くらいは、「いかにうまく畳むか」を考えていました。
「研究もしてるから」「就職はそこそこうまくいっているし」「こんなに頑張っても売れなそうだし」「学生ベンチャーだから難しいんだって」と、言い訳やできない理由をならべて、精神的に厳しい状況から逃げ出そうとしていたのかもしれません。

ただ、どれも全力投球はできていなくて、中途半端にやって、うまくいっていないということもわかっていました。

同時に、日本の中高生が1人1台のPC・タブレットを持つ世界が来て、僕たちのサービスの需要が生まれるというのは確信がありました。その未来が来た時に、僕がその担い手でなくてよいのか...と考えはじめました。

もうひとりは、共同創業者の中村の存在です。
中村は、僕以上にこの事業の成功を確信していて、「どうせこのビジネスで成功できるから」と、大学院への進学をいつのまにか辞めてしまっていたんです。

正直、驚いたというより、自分はなんて情けないんだと思いました。
中村は、僕の夢に共感をしてくれて、僕以上に事業の成功を信じて、覚悟が決まっている。僕が予防線を張ったり、「綺麗な畳み方」を考えている時間に、中村は「成功に近づく努力」だけをしていたんです。

覚悟も決めず中途半端に経営して、そのまま疲れちゃって逃げ出すなんてダサいなって率直に思いました。自分が覚悟を決めて、言い訳もできないくらい没頭して、汗も出なくなるくらい走り回って成功させてやろうと、彼らのおかげで決めることができました。


そこから、父親のもとに行き、「就職を辞めて、大学を休学させてくれ」とお願いしにいったんです。(ここで、いきなり退学はしないのですが...笑)


やっぱり自分の手でやろう

改めて「このサービスは自分の手でやる」と心に決めました。しかし、「コンテンツ」の問題は残っています。

けれども、もう「どうすれば成功の確度が1%でもあがるか」しか考えていないので、思考は前に進み続けます。


自分たちのコンテンツだと”信用されないから”ダメ…
―だったら、日本の先生が全員信頼しているものをコンテンツにできないか?


方針を転換して、学校現場からの信頼のある出版社の教科書や問題集をコンテンツにできないか、出版社に掛け合ってみることにしました。


出版社を巻き込む難しさ

方針さえ決まってしまえば、行動するのはかんたんです。

問い合わせフォームから連絡したり、出版社に手紙を書いたり、講演会で出待ちしたり…。あらゆる方法で出版社の方との接触をはかりましたが、なかなか取り合ってはもらえません。


やっぱり、どこの馬の骨ともわからない学生の言うことなんて聞いてくれないのか…。
―そうだ!箔をつければ、いいじゃないか!


出版社の方に信用してもらうために、どうやったら箔がつけられるか、今度は行政や大企業が開催しているコンテストでの受賞を目標に設定しました。

それで動きはじめた「日本e-Learning大賞」では、デジタル参考書部門賞を受賞。NTTドコモの起業家支援プログラム「ドコモ・イノベーションビレッジ」の第2期プログラム参加チームにも選ばれて、オフィススペースを借りることもできました。

これで、教育業界のアワードで「教育効果」について、大手企業の起業家支援プログラムで「ビジネス性」について評価をしてもらい、「箔」をつけることができました。

▼数少ない思い出写真の1枚

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ご縁は思わぬところから

コンテストへの準備と並行して、出版社へのアプローチも続けていました。手紙や講演会の出待ちは、あまり成果が上がりませんでした。そこで、方向性を変えて、出版社の教科書営業の方をターゲットに設定し、既にある人脈を活かすことを考えました。

実際に活躍してくれたのは、当時インターンで来てくれていた学生です。彼から母校の先生に頼みこんでもらい、出版社の教科書営業の方と話す場をセッティングしていただきました。もちろん、お話しした出版社の営業の方からは「その場では判断できない」という回答でしたが、持ち帰って上長に話していただけることになりました。

「口約束かも…」と不安が頭をよぎりましたが、数日後、なんと、その出版社の営業部長から連絡がきて、話を聞いてくれることになりました。


後藤くん、面白いね

入念に準備をして、営業部長との面会に臨みました。サービスのことはもちろん、世界平和を目指したきっかけや、自分の目指している世界のこと、これまでとは比べ物にならないくらい全力でアピールしました。

その結果、


「サービスは正直イケてないけど、後藤くんが面白いから、コンテンツを使っていいよ」

と、コンテンツを提供いただけることになりました!


端末の普及を待って、2017年にサービスを正式リリース

出版社のコンテンツを使わせてもらえることが決まってからは、それまでに比べて、かなり順調に進みました。

学校でのトライアルを重ね、サービスの開発にあたっては、かつて学生ビジコンに参加したときと同様に、徹底的なヒアリングを行いました。ときには、先生方にも協力いただき、一日中先生の後ろをついてまわり、観察させてもらったりもしました。

そして、満を持して、2017年にサービスを正式にリリースしました。

▼当時のサービス名はATLS(アトラス)でした

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なお、アワードを受賞したのが、2013年の年末で、サービス正式リリースしたのは2017年です。

この3年の間は、大手企業の新規事業開発のコンサルティングやアプリの受託開発で運転資金を稼ぎ、サービスの開発を進め、教育ICT市場拡大のタイミングを見計らっていました。

「教育現場でのPC導入が遅々として進まない問題」や「トライアルしたけど、誰もログインしてくれない問題」など、この間にも色々とドラマがあるのですが、それはまた別の機会にしましょう。

この間にも精神的にツラかった時期はありましたが、教育業界のことを知れば知るほど、教育現場の人たちの優しさや苦労に触れ、同時に教育業界でビジネスをしていくことの難しさがわかってきて、「これは圧倒的な”愛”がないと、まともに戦えないから、僕がやらないと」という使命感に燃えていました。


僕たちが目指す未来

サービスの正式リリースから約3年が経ち、おかげさまで500校以上の学校に提供するまでに成長しました。

ここまで広げることができたのは、共同創業をしてくれた親友、実際に使ってくれている生徒や先生たち、出版社の方々、色々とアドバイスをくれた方々、当社を支えてくれている仲間などなど…数えだしたらキリがありません。

本当に運が良かったと思います。
様々な縁が僕たちをここまで導いてくれました。
まだ、スタートラインを切ってから1、2歩進んだくらいですが、それでも迷いなく力強く地面を踏めています。


僕たちが目指しているのは、「一人ひとりが自分の可能性を最大限発揮できる社会」です。そのために、教育を変えようとしています。

学校や家庭で子どもたちが「リブリー」を使って学習すると、学習履歴が蓄積されます。僕たちは、その学習履歴データから知識習得プロセスの解明や最適化を進め、一人ひとりの学びや興味関心にあわせて教材や情報をつなげていきたいと考えています。


いま、日本の教育現場は、GIGAスクールやコロナの影響で、急速にデジタル化が進んでいます。変化に対応するのは正直大変です。でも、ここで変わらなければ、ますます世界から取り残されてしまいますし、なにより子どもたちのためになりません!

子どもたちが新しい知に対するワクワク感を持ちながら学び、一人ひとりの夢が実現できるような社会になるよう、僕たちは全力で教育を良くしていきますので、みなさん応援よろしくお願いします!

(本当はリブリーの近況やリブリーがつくるワクワクした教育の未来の話もしたかった!)
※今回だいぶエピソードを削ってしまったので、ここに書けなかったことはまた別の機会に書きたいと思います。


ありがとうございます!
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株式会社Libryは「一人ひとりが自分の可能性を最大限に発揮できる社会をつくる」をビジョンに掲げ、スマートに学べる問題集「リブリー」の開発・提供を通じて、学校の先生や出版社など教育に関係する方々と連携しながら、よりよい教育を創ることを目指しています。