「ブルーピリオド」山口つばさ先生インタビュー、「Heartstopper」米国で攻撃対象に、2025年AnimeNYCは4日間開催へ、米SFのネビュラ賞が詩とコミック部門を追加
日々の北米エンタメ市場のニュースなどのまとめです。拾い切れていないものもあるのでぜひリクエストお待ちしております。感想も大歓迎です。
a16zの記事「アニメが世界を喰らう」をじっくり読み解いてみた
以前この記事でも取り上げました、米ベンチャーキャピタル、a16zがかき話題になった「Anime is Eating the World」。この記事を読み解いた記事です。AIワイフ/ハズバンドという概念が面白かったです。日本でも夢小説的に好きなキャラクターに自分の思い通りのことを話してもらうという設定(古のオタクには「メル画」というカルチャーがありました)はありますが、それをAIがやってくれるというのは嬉しいのか解釈違いになるのか。これは公式がやれば課金につながるよなと思います。お誕生日のおめでとうのメッセージとか。
漫画「ブルーピリオド」における青の重要さ 山口先生インタビュー
NYCの Kodansha House pop-upので開催された「ブルーピリオド」の山口つばさ先生のイベント。ドローイングも行われ、盛り上がったようです。作中で「青」という色がどのように意識されているのか、作中キャラクターの作品を見せるためにカラーで見せたいとか、面白いです。
米ジャーナリスト、漫画・アニメに関するフランスの旅
米国で漫画やアニメに関するジャーナリストであり編集者のDeb Aokiさんのフランス旅行記。フランスのWebtoon市場などの取材で今何が起きているのかがまとまっています。個人的には「オペラ座の怪人」をベースにしたオメガバースは読んでみたい。各国いろいろな奮闘がありますね。
「Heartstopper」、ミシガン州やノースダコタ州で攻撃対象に
米国の「焚書」のお話。ドラマ化もされた人気グラフィックノベル「Heartstopper」が米国のミシガン州などいくつかの州の学区で、親から反発を受けて学校図書館から撤去の危機に。「焚書」「検閲」というのは日本の漫画業界にとっては記憶に新しい歴史ですが、米国では数年問題になっており、トランプ次期大統領のもとでますます厳しくなっていくとみられています。
ノースダコタ州の学区では、手塚治虫先生の「ユニコ」を原作とした「Unico: Awakening」も撤去のターゲットになりました。銃による暴力、男性による動物虐待がだめだったそうです。
ここでは主にグラフィックノベルや漫画について取り上げていますが、実はターゲットになっている作品の多くは「絵本」です。これについてはNYC在住のライター、堂本かおるさんの書籍「絵本戦争 禁書されるアメリカの未来」が出る予定です。
米国の学校での「検閲」についての動きについてはこちらのページにまとまっています。
シカゴ図書館の選んだ2024年のベストグラフィックノベル・漫画
シカゴ図書館が2024年のベストグラフィックノベル・漫画を選出しました。日本の漫画からは「ガチアクタ」「株式会社マジルミエ」が選ばれました。
「ドラゴンボール」40周年特集記事
「ドラゴンボール」40周年を記念して、世界中のファンがウェブ上でお祝いしたという記事です。ドラゴンボールは世界中で人気ですが特に鳥山明先生がお亡くなられたときに顕著に表れたのはラテンアメリカでの人気です。
AnimeNYC、2025年は4日間開催へ
ニューヨーク屈指の規模のアニメコンベンション「AnimeNYC」ですが、2025年は従来の3日間から4日間に会期を増やすとのことです。2025年は8月開催。盛り上がってほしいです。
「Pokémon Horizons: The Series」、ネットフリックスで配信へ
2025年2月に「Pokémon Horizons: The Series」のシーズン2がネットフリックスで配信されることになりました。これが「exclusive」(独占)でネット配信されるように英語圏でポケットモンスター人気はすごいです。というかポケモン、IPとして強い。もちろん週刊少年ジャンプ発のIPも強いですが、ポケモンの英語圏の人気はけた違いです。ちょっと別のところでも「米国でポケモンはすごい人気ですよね」という話になったので。
ちなみに私は米国で日本アニメファンにあったとき「ポケモンのキャラクターいえる?」と聞かれてピカチューしか出てこなくて申し訳なく思いました。
米出版社、小説「十二国記」の英語版出版へ
https://sevenseasentertainment.com/2024/11/20/seven-seas-licenses-the-twelve-kingdoms-novel-series/
すみません個人的な趣味なのですが小野不由美先生の「十二国記」はあらゆる人類に響く物語なので、英語で英語圏に行ってくれるのはうれしいです。人気になってアニメも輸出されてほしいです。
沈むハリウッド、日米コンテンツ産業逆転の理由
エンタメ社会学者、中山淳雄先生の日米のコンテンツ産業の比較記事です。今、米国を中心とする英語圏で日本発のコンテンツがなぜ活況なのか。中山先生は英語圏で「非英語圏のコンテンツが求められている」と指摘されています。確かに韓国コンテンツ、インドコンテンツ含め「非英語圏」の伝統をはらんだコンテンツは英語圏で人気です。それとは逆に英語圏コンテンツの排出もとのひとつであるハリウッドは、AIの利用をきっかけとするストライキや製作費の上昇で、制作会社などは新作を作りが足らない傾向に。そこを日本発のコンテンツが埋めているという側面もあるそうです。どんなきっかけでも世界で日本コンテンツファンが増えてくれるのは嬉しいです。一度つかんだファンをどうファンであり続けてもらうかのフェーズに移っているのかも。
日本アニメと韓国ドラマ、世界展開を狙うディズニーのコンテンツ戦略
日本発のコンテンツは強いですが必ずしも日本企業が中心にいられるわけではない。もちろん米有力企業も商機を見逃しません。その一つがディズニーで、日本アニメと韓国ドラマを自社のプラットフォームで配信しようとしています。日本のファンにとってはディズニーの悪役をベースにしたゲーム「ツイステッドワンダーランド(ツイステ)」のアニメも気になるのではないでしょうか。
ブラジルのオタクコンテンツ市場ってどんな感じ?これからどうなりそう?
少しブラジル市場の解像度があがる記事でした。ブラジルはポルトガル語圏ですが急速に日本アニメの存在感が高まっています。日本をルーツにする日系の方も多く、日系コミュニティもあることから親和性が高いのかも。もちろん翻訳版の漫画が大きく売れるほどの市場にはなっていませんが、アニメ・グッズから是非開拓してほしいです。個人的に可能性があるのはアニソンカラオケ大会だと思っています。
米SFのネビュラ賞、詩とコミック部門を追加
米SFファンタジー作家協会が主催するネビュラ賞が詩部門とコミックス部門を新設すると発表しました。こちらは作家や編集者、批評家らが投票する賞なので日本のSF漫画の英語版もエントリーする可能性もあります。
DC Comics、縦スクロール型「DC GO」立ち上げ
米コミック大手のDC Comicsが縦スクロール型の「DC GO」を立ち上げました。IP多く持っていますのでうまく縦スクロールになじめばいいのかも。縦スクロールは若者読者開拓には必須なのかもしれません。
『ダンダダン』の影響で海外では「高倉健って誰?」という解説需要が生まれているらしい
ジャンプ+発の人気漫画「ダンダダン」のアニメが英語圏でも大ヒット。アニメーションの完成度の高さなども貢献しています。ただ日本文化を知らない人がみたときに気になるのが「高倉健ってだれ?」という疑問。これを英語圏ではせっせとファンが解説しているとこのこと。これ日本の若い人はどうなのでしょうかね。
なぜ日本の小説は英国でブームになっているのか?
英国では2024年、日本の小説がブームになっています。翻訳小説トップ40のうち、43%が日本語ベースとのこと。吉本ばなな先生、村上春樹先生に続き、柚木麻子先生の「BUTTER」などが海を渡っています。村田沙耶香先生の成功(コンビニ人間は名作なので読んでください!)もありました。背景には松本清張先生など日本の犯罪小説、探偵小説人気もあるそう。出版社は「ほかのムラカミ」「ほかのムラタ」を探しているそうで、ブームが続いてくれると嬉しいです。「comfort genre」という、心ほっこり物語も人気があるみたいです。英語圏の方々の翻訳家の方の力に感謝です。
追加
この企画を始めるきっかけになった菊池健さんのマンガ業界関連の日々のニュースをまとめるマガジンです。
ソニーとKADOKAWAの買収協議はみなが取り上げているのでいいかなーと。ソニーはアニメの制作や配信、IP展開ですごい存在感がありますが、IPの種は持っていないので、KADOKAWAのライトノベルは魅力なのだろうなと思います。ただ英語圏のファンの方々のコメントを読んでいると、KADOKAWAのコンテンツが好きな方は、ソニーグループに入ることで「多様な」コンテンツが出なくなることへの警戒はあるみたいです。
今週はここまでー。引き続きよろしくお願いいたします。