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夏の読書


暑すぎてやる気が出ないのはたぶん私だけじゃない
「あつーーい」なんて
言わなくてもわかるような台詞を一日中言っている

夏が来たな、とすこし前に思ったはずなのに
夏はこれからか、と日々わたしの夏は更新される

月桃の中も11時を回ると外気との境がゆらぐ

本を開くものの
意識は文字と風とのあいだで行き来していて
湿度の高い空気を必死に吸い込む

お客さまとゆっくり話なんてしていたら体温は上がり
互いに汗を伝わせながら夏の会話というものを噛み締めることになる

それでも、ときおり涼やかな言葉と出会う
読んでいて涼風を吹かす言葉、というのに。
わたしの“夏に読みたい一冊”というのは
そういう文が並んでいる一冊だろうと思う

文学は言葉で書かれる。僕たちは、言葉のかたまりに向かっていく。その道筋が難解でも、ついに明快に、確実に、ある言葉にたどり着くことができれば、愉快な気がする。

文学の淵を渡る | 大江健三郎

淋しかった。他の蜂が皆巣へ入って仕舞った日暮、冷たい瓦の上に一つ残った死骸を見ることは淋しかった。
然し、それは如何にも静かだった。

城の崎にて | 志賀直哉

/〈夏の家〉は、北欧版の「大草原の小さな家」のようだった、と書いたらハタと膝を打ってくれる読者もいることでしょう。


/ 引き戸は必要のないときには壁の中に引き込むことで、視界から完全に消すことができるからです。このことによって、室内の空気が部屋から部屋へ相互によどみなく流れ込む流動感のようなものが生まれます。

住宅読本 | 中村好文

現実にも、比喩的にも、余白たっぷりに
涼しげに佇む言葉たち


私は近ごろ兎にも角にも水族館に行きたい
本を読み進めながら夏の水族館を過ごすのがしたい
朝から人気のない水槽前の淵を転々として
閉館のころまでに一冊読み終える、あの特別な1日が
わたしの夏休み

𓂃𓈒𓏸 𓂃◌𓈒𓐍

0722

8月の月桃は夏休み仕様です
朝7時半から11時迄
早起きさんのためだけの特別な図書室
雨の日は過ごしやすい日に限り贅沢にのんびり開きます
どうぞよろしくお願いします

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