『世界中の隣人よ』

 乃木坂46の『世界中の隣人よ』がYouTubeで公開されました。

 ゆったりした穏やかな曲調で、卒業生も含めたたくさんの顔が見られた喜びもありますし、誰もいない神宮球場に、CGでライブ会場が描かれる様は、胸が熱くなりました。
 ただコメント欄には、そうだ自粛を頑張ろう!みたいなコメントもあり、正直考えさせられます。

 私は、スポーツもエンターテインメントも不自由なこの状況に、心の底からウンザリしています。
 そして、普通に出勤を続け、「感染に十分注意して」という無内容な指示のもとで通常業務を続けていた私の目から見れば、そもそも感染のリスクはそれほど高くないのでは、と思えてなりません。

 それに加えて高齢者以外の死亡率の低さからして、本当にここまで経済活動を縮小してまで対処しなければならないのか、正直疑念を持っています。
 治療薬が無いという不安は分かります。ただ、交通事故では年間三千人、インフルエンザでは二~三千人が亡くなっていますが、インフルエンザが流行るので冬は経済活動自粛、とか、自動車を全廃、なんて訴える人がいたら、失笑して聞き流すでしょう。コロナウィルスの死者数とそれに対する対応も、同じではないでしょうか。
 このままでは、自粛による不況で追い詰められて死ぬ危険の方が大きいのではないか。そんな風に思っているのです。

 とは言え私は会社員で、コロナによる景気後退はもちろん懸念されますが、即生活に困る、というレベルではありません。
 しかし、自粛の煽りで収入が激減している人、職を失っている人達もおり、その人達にとっては『世界中の隣人よ』の歌詞は、
「まだまだこれが続くよ」
 と言っているだけに聞こえるのではないでしょうか。

 乃木坂とは直接の関係はないですが、ネットで見た記事に、以下のようなものがありました。本当に困窮した人のリアルな声、だろうと思います。
https://dot.asahi.com/dot/2020051500023.html

 もちろん、誰かの感情を逆撫ですることを恐れるばかりでは、何も発信することは出来ません。医療従事者に収益を寄付するということも、素晴らしいことです。
 また、この歌で元気付けられる人も確かに存在します。かく言う私も、

「週明けでかったるいな、仮病で休もうかな」

 と思っていた朝、このMVを見て、会社に行ったぐらいです。

 結局、自粛を求めるこの時勢では他にやり様がない中で、出来ることをやってくれた、と思っています。
 乃木坂に限らず、リモートでの不自由な収録や中継でエンターテイメントを提供している皆さんも、同様です。

 そもそもスポーツも、エンターテイメントも、旅行も、芸術も、常に不要不急のものとされます。ですが、生存することに精一杯であった人間という動物が、社会を、文明を、科学技術を作り上げ、積み重ねた結果、手にした果実でもあります。
 それらが産業化されていて、それを仕事、収入減にしている人がいる、ということもさることながら、それ以前にエンターテイメントは『社会にとって必要なもの』だと私は考えています。

 そもそも、生存に必要なことだけをやれ、と言うのなら、究極的には農業にだけ従事すれば良いのです。自動車も携帯電話もテレビも、食べることは出来ないのですから。
 ですが人間はとっくの昔にそうではない道を選び、選んだからこそ発達した文明による諸々の恩恵を大いに受けて来た以上、そうした恩恵を後の世に繋いで行く努力を、怠ってはなりません。
 その『恩恵』には、生存可能な地球環境、様々な自由、平和や安全、科学技術、もありますが、エンターテイメント等による精神面の充実も含まれます

 もちろん、外に出たら一割が死ぬ、というような凶悪なウィルスなら話は別ですが、コロナウィルス程度のリスクを恐れて、エンターテイメントの流れを絶やすような今の対応は、愚かな行為だと思います。

 スポーツ、エンタメ界隈が現在の不自由さを甘受しているのは、自粛の圧力に抗して早期に活動再開した際に寄せられる『世間』の非難を恐れているのでしょう。
 煽って注目が集まればそれで良いマスコミやネット、患者を増やさないことしかし考えない学者、面倒を増やして欲しくない行政、リスクゼロの実現こそが正義だと信じている安心信者。
 それらの馬鹿が一斉に、
「どう責任を取るんだ」
「軽率ではないか」
 と騒ぎ出した時の対応の面倒くささは、大きなリスクです。
「感染しちゃった方はツイてなかったですね。でも、ほとんどの人は無事に楽しんだから、良かったですよね」
 とは、思っても言えないでしょうから。

 最近の情勢からみると日本では、プロ野球やJリーグが観客を入れ始めたら、徐々にライブ、コンサート関係も再開して行く、というペースになるのでしょう。
 ただそのどこかで、必ず感染者が出ます。これは、確率というか運の問題で、どこが最初になるかは、運次第です。インフルエンザと同じです。
 その時、一斉にそこを叩く連中には加担しないのは当然として、そうした記事を見るのも避けて、アクセス数を増やすことに加担せずにいよう、と思っています。まあ、無意味ですが。

 徐々に慣れて行くこと。必要なことは、それに尽きます。早く娯楽が戻ってくること、自分の安心のためにそれを邪魔する人が少しでも減ることを、切に願います。

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