塚本櫻𩵋 自由律100句



七月二日の火球は隕石だつた
星空を意識しない眼のあるあいだ
トンネルに時報重なりやがて
縁石から落ちたら高尚の子
燃やすまでも茸に元気の子
土偶をみることに時間
あのあたりというときのあのはけつらくす
切らせても脱法のサンポール
全員が麻薬をきらせている
品出しによりかかっているバイト
二十三時間営業一日最大四六四九円
短いペットボトルを選べよ
広義として何か言いたげだ
玄関はいつも筑波に面するのか
太くつかむ大根
友に選書はなるべく小さき本を
病葉の水底にかさなり
かなり構いません春は
先祖にも見られて試着室ありぬ
仙台を帰る性癖に話すことあり
嗜虐性の橋を氷る
ページ捲る窓際の席に人轢かれ
春になったおと路地裏などない街
焦るな遅刻をまわる換気扇
いきなり別れを切り出す霧
誰が連結をみているのか霧
まわり続けていたい古草まで
その後ろに後ろに一つとばして春の物産展だ
ある階に規則性を破綻させるためのAED
メニュー表をおおきくひろげて梅のころ
その通り苦しむねずみのように働く
働いて笑おうキャンセル
定額で未来の「アレ」が見放題
スペシャルゲストのシルエットの血が暴れてゐ
今日は漱石もフランス革命も寝るなよ
誰もパンをシチューにつけてぼたぼた垂らしてはならぬ
なんど命をくぐったらジェダイにあえるかな
一概にもいえないことを湖面の揺らぎがとまらず
電車にたつて眠れば日本武道館
住めば都、参加すれば地獄
読んでいる説明書の言語が変わる
午後の遊園地に人々の乾燥
いつかを形而上満たすための録音
そういうもの七日、九日、八日ないに気づくのに一日かかった
斜めに階段あり桜の橋をわたることなし
蝶のようにカレー 蜂のように中華
給与(コンビニではないおでん)手渡し
住宅地のラヂオに談志の絶叫
春をして三島由紀夫の戯曲ありけり
ぶっちゃけても雰囲気はずぶとい
おまえは話を回す フリスクのポケットは右
ポケットになにか棲む、今年は竜か
生徒に殴られてまどか☆マギカのこれ
狩り尽くして明日を訪れたのか
いくぶんましか溶けるならば闘魚の鰭はいつ破れて
痩せてきて蠅をつぶせるようになる
五臓六腑にマルハラをみせてやれよ。
レントゲンの大会で優勝できる肋骨です
ふくつのせいしん・タイ米・怠慢・鯖の缶詰・放牧地
天使のワゴンは横断歩道にそして春の野に
音読のつかのま教室に闇ふかし
不埒な歯茎プラスを不丁寧な歯ブラシ
音速をおきざりにして温泉卵わること
可もなく不可もなく抒情もなく詩情もなく祈りある
虐殺を満たせ地球儀には青と緑と何があるのだ
詩などと死に場所もない明日に
戦火という火に穢れあらばどの惑星にも命あるか
繰り返し生きることを信じずこの春を
翅をとる生きているならばとる
岩に影ありサンバほどの影
山に影あり蟻にも読書の時間
風呂場だからねってて言うなよ
急行には裾上げの講師
やはらかい勤務予定表(二月)
尻に踏む虎のネクタイ
花粉が嫌すぎる
炒飯をいただけよ
ピザならではの匂い
まさか寺院にメロコア
これは誰の死を待つ火か
相談に行くまでもない湖面
湖面にプラスティックのラブ
推理して湖面はこなごなの光り
湖面より上に生きて遺書を捨つる
原因のないことの悔しさを湖面に鳥
夕暮れの小さな湖面に悔いている顔を
春に溶けつつ死ぬ猫を詠めというのかおれは
春のどこにも日差しあり悲しみすぎないこと
塩ラーメンに油断する
こちらがわからは見えないトイレあります
ブラックホールの中は白い
いまも日暮里に「空あります」といふ駐車場あり
河川敷でもバランスをとりたい
かねてより遅刻の朝を思いだす
かのラジオ聴くときわれに孤独あり
ラスタカラーの東京ドーム
オードリーANN東京ドーム翌日出勤の信号待ちよ
カウントアップ やがて都となれよ
春の雨にはくたびれたソファーのにおい
評価する人々と湖にたちまち日のしずむ

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