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山本たくみの皆もすなるエッセイを(3)【金曜日記事】

前回までのあらすじ
俳句の沼にハマってしまった山本であった。
前回記事はこちら⇩

今回はわたしが俳句結社に入った経緯を書こうと思います。夏井いつきを組長とする俳句集団いつき組はいわゆる「俳句結社」ではなく、「広場」に例えられるコミュニティのようなものです。「俳句って楽しい!」と思えば勝手に名乗ってよいもので、わたしはそこで俳句を続けているわけですが、新たに2023年3月、西村麒麟主宰の「麒麟俳句会」に入会することとなります。いまTwitter(現X)を見ている限りでも、いつき組の仲間をはじめ、結社に入った!という方や入ろうか迷っている…という方が多いように感じています。参考に、などという偉そうなことを言うつもりはありませんが、あくまでわたし一個人の例としてご笑覧いただければ幸いです。
まずは、結社に入る前のわたしと、後の師である西村麒麟の出会いの話から。

西村麒麟との出会い~まのあたり句会~

2022年、俳句の沼にどっぷりだったわたしは様々な募集への投句や俳句イベントへの参加をしていました。その中のひとつ「まのあたり句会」が西村麒麟との出会いでした。「まのあたり句会」とは、その名の通りプロ俳人の句会をまのあたりにできるイベントで、第2部では受講生の句に選評をいただけるというプログラムでした。わたしの参加した回は、池田澄子、関悦史、阪西敦子、西村麒麟という錚々たる講師陣。中でも、俳句が好きなのはもちろん、たまたま書店でお会いした際に優しくお話していただいたご縁もある池田澄子さんのファンであるわたしは、言ってしまえば澄子さん目当てで参加を即決しました。
そして当日です。第1部では、講師陣の白熱する句会にニヤニヤとメモを取る手が止まりません。第2部は、講師陣が受講生の句を選びます。題は「秋の植物」、わたしは次の句を出しました。

木犀の香を譲りたるお兄ちやん

おひとりの講師だけが、この句を採ってくださいました。そう、池田澄子さんです。(あれ?)ここが西村麒麟だったらきれいなストーリーだったのですが。
澄子さんは言います。
澄子「こんな良い句、どうして採らないんですか?ほかの人。」
(盛ってたらすみません。)
麒麟「うーん。下五が…甘いかなあ。」
このような評でした。繰り返しになりますが、当時池田澄子さん目当てで参加していたわたしは心の中での小さなガッツポーズと、西村麒麟への小さな「なにくそっ!」を抱きました。この時には西村麒麟主宰を生涯の師と選ぶことになるとは夢にも思っていませんでした。前置きが長くなりましたが、次に結社に入った経緯です。

結社に入った経緯

様々なきっかけが重なって、なのですが大きく3つ挙げます。

1.屋根裏バル 鱗kokera 開店

2022年、屋根裏バル 鱗kokera が開店します。東京・荻窪にある俳句をはじめとした文化交流のできるお店です。クラウド・ファンディングに参加したご縁や家からめちゃ近かったこともあり、すぐに常連となります。一人で行っても他のお客さんと話せるので、そこで初めて様々な俳句結社に入っている方と交流することができました。お店主催の超結社吟行句会にも参加しました。そんなこんなで、リブラ同人の木内縉太や塚本櫻𩵋、内野義悠とも出会うことになります。それぞれの俳句結社に文学的な主義主張があり、句会のやり方ひとつとっても全く異なることが面白く、結社というものが少し身近に感じられるようになりました。やはり何も知らないと怖いですよね、「結社」という響きが怖い。

2.句友からのすすめ

そんなこんなで「俳句結社」というものを意識し始めた私は、その日も鱗kokeraでお酒を嗜み、勢いで相談してみました。「いやあ、結社ねえ。どうかなあ…?」その場にいたのが、リブラ結成前の木内縉太、塚本櫻𩵋、そして鱗kokera店主の茶鳥さんです。みんな人が好いので初めは「澤はどう?」「蒼海おいでよ~」「南風いいよ!」とそれぞれが所属する結社を勧めてくれました。ですが、そこからなんやかんやと話が深まり最終的には満場一致で「(山本は)麒麟がいいんじゃない!?」となりました。当時、新しく「麒麟俳句会」が創設されるという情報は知っていましたが、この日から急激に意識するようになります。しかしながら、まだ若干結社というものにビビっていました。

3.句友の入会と体験句会

結社へのあと一歩が踏み出せないままでいるわたしに、衝撃ニュースが舞い込みます。「(田中)木江さん、麒麟に入ったらしいよ。」田中木江さんとは今でこそ麒麟の仲間ですが、前々からいつき組を中心とする句会でよくご一緒する句友でした。身近な人が結社に入る、センセーショナルであり結社のハードルがぐんと下がりました。当時、自分はどんな句を作りたいのかといっちょ前に悩み期に入っていたわたしは、句会に出ても句友から「句が迷っている」と指摘を受けるほど。何かにすがりたい、一から学びたいという欲がどこかにありました。句友や木江さんとも色々お話し、2023年3月、麒麟東京句会に体験に行くことを決めました。この週末はタイミングよく?妻が沖縄に遊びに行っていたのを良いことに、(土)麒麟東京句会体験、(日)NHK春のプレミアム俳句講座という2日連続で西村麒麟と句会をする濃密スケジュールとなっていました。この2日間で「麒麟」に入るかどうか見極めてやろうと息巻いていましたが、結果としては初日の夜には入会申し込みを送っていました。句会がとにかく楽しすぎたので。句会の和やかな雰囲気に「結社」への恐怖心は一切なくなり、先生がいる句会の学びの深さに胸が躍りました。ああ、ここでもっと俳句がしたいと純粋に思いました。そんなこんなで俳句を始めてから4年ちょっと経ち、初めて結社に入った山本なのでした。ちなみに、体験で行った麒麟東京句会では、全195句の中から3句選で3句とも木江さんの句を頂くという変な目立ち方をしてしまいました。

俳句結社に入ろうか迷っている方へ

やはり結社に入って1年のわたしがアドバイスをしたり結社とはこうだと言ったりするのはおこがましくこそばゆいので、これはこれで恐縮ですが自らの文と句を引いて結びとします。

今年も冬に入ったり入らなかったりなので、二〇二三年を振り返る。今年の俳句的転機といえば何といっても結社「麒麟」に入会したことと「リブラ」を始めたこと。結社に所属したからといって俳句が急に上手くなるわけではないが、「麒麟」はとにかく居心地がよく学びも多い。何よりさらに俳句が好きになった。『大好きです。今度は嘘じゃないっす』と桜木花道ばりに胸を張って言える。「リブラ」も言うまでもなく楽しい。どういう三人⁉ なりに天秤の上で絶妙なバランスが取れているのではないかと楽観的に思い、まだ見ぬ仲間を心待ちにしている。

山本たくみ/天秤 創刊号 編集後記 

二人目の師も大好きで柏餅

山本たくみ/麒麟 2023年 夏号

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