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小説 初クライエント  

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守秘義務厳守のデリケートな世界です。あくまでフィクションとして書き綴りました。今まで経験したことを一般化させたケース・スタディとして、お読みいただきたいと思います。好奇心に任せ…
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ケース1998①

ケース1998①

 どこから聞いてきたのか。Tさんが訪ねてきた。私がまだ独身で、実家暮らしだった頃の話である。一応、日本◯◯心理学会から、心理士のライセンスをもらっていた。

 あの家の学校の先生やってるのが、悩みを何とかしてくれるという根も葉もない噂が狭い街を駆け巡ったそうである。しかし、認定証なる紙切れ一枚しか持っておらず、臨床経験は、演習等で学んだだけであった。

 母の安請け合いを反故にできず、渋々相談する

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ケース1998②

ケース1998②

 予約した時刻に、Tさんの訪問。予想通りの話から始まった。

「無理でした」
「高2のと、3歳の頃とでは、何もかも違い過ぎます」
「3歳のような接し方をする前に、私と目を合わせてもくれないんです。声をかけても生返事しか返って来ないんです」
「あれから、何も進んでいません」
「こんな子にしてしまったのは、私のせいなんです」「私が悪いんです」

 どうやら、自己否定的な話が、どんどんエスカレートしてい

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ケース1998@

ケース1998@

 このケースについて、解説めいた事を述べてみたいと思います。あくまでも私論ですので、誤った捉えている場合もあるかと思います。そう感じられた方は、どうか読み流していただきたいと思います。

 生徒指導上の「問題行動」は、2種類あります。一般に非行と言われる反社会的問題行動があり、その相反する問題行動の、根っ子は同じとする考え方があります。これは、私独自の考え方ではありませんが、数々の相談場面の経験を

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