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コーヒーの酸味

イベントに出店し、お客様と会話させていただく中で、「酸っぱいコーヒーが苦手」というご意見を伺うことが多くあります。

コーヒーの酸味には、「いい酸味」と「悪い酸味」の2種類があり、苦手と言われる方は後者の「悪い酸味」の味わいのイメージによることが多いです。
その内容を考察しました。

いい酸味とは?

明るい酸と言ったりしますが、イメージは果汁のようなフレッシュジュースを飲んでいるような酸味です。
コーヒーももともとは果実なので、その甘みや酸味を感じられ、味わいもフルーツに例えられることが多いです。
特に浅煎りコーヒーでは、酸の味が分かりやすくなります。
人が感じる酸味として、酢酸(酢)、乳酸(ヨーグルト)、クエン酸(レモンなど)、酒石酸(ワイン)が代表的な成分です。
コーヒーの場合、抽出後のpHは、5-6の間が多く、フルーツそのものが持つpHと近くほど、それに近い味を味覚として感じることかあり、フレーバーノートにはフルーツの名前がよく出されています。
コーヒー豆の産地や製法によって含まれる酸の種類が異なり、抽出方法による違いでコーヒーの味わいが決まります。

コーヒー抽出は化学実験と同じレベルで一つの学問になるほど奥が深いです。

Perfect Daily Grinds より抜粋

悪い酸味とは?

以前にコーヒー豆保存方法で考察しましたが、劣化による酸味の味であることが多いです。

主な原因は、「ステイリング」と言われています。
基本的にコーヒーはラクトンと呼ばれる環状エステル(クロロゲン酸ラクトンやキナ酸ラクトン)や各種酸がバランスよく存在することで、美味しく飲める飲み物です。
ステイリングにより、ラクトンが酸に戻ると、コーヒー中に存在する酸のバランスが崩れ、酸濃度が増加し、酸性化が進むことで、よりネガティブな酸の味がよ強調されることで、酸っぱいコーヒーに繋がると考察しています。
この酸っぱさが苦手という方が多いのではないかと思います。

例えるなら、
レモネードなら美味しくて好きだけど、レモン果汁そのままは苦手というイメージかと思います。
当然ながら、酸の味は劣化だけでなく、淹れ方に大きく左右されるため、それぞれの店の個性がより感じられるポイントでもあります。
少し酸味が苦手と注文時に伝えていただければ、酸味を強調しないレシピで提供もしてもらえるお店もあるかもしれません。
※当店はそのような店を目指してます。


クロロゲン酸とは?

コーヒーに含まれるクロロゲン酸は、味覚修飾物質と呼ばれ、水に僅かに甘みを与える物資と言われています。お茶に含まれるタンニンも同じ味覚修飾物質で、お茶に甘みを感じるのはタンニンの働きによるものです。

そういう意味では、浅煎りコーヒーはお茶を淹れるように淹れると、甘みが強調され、もはやコーヒーではないような味わいになります。
試してみたい方は、お声がけください。

クロロゲン酸は熱に弱いので、焙煎過程で、クロロゲン酸ラクトンと呼ばれる環状エステルになり、「コーヒーらしい」苦味の元になります。

水の影響

飲み物としてのコーヒーの殆どの原料は水です。
当然ながら、水もpHがあり、地域によっての差が大きくあります。
日本は軟水でミネラル分が少ないですが、ヨーロッパなどはミネラル分の多い硬水です。僅かですが、pHも異なってきます。
浅煎りコーヒーの場合、酸性分が多いのでは日本の軟水で、ヨーロッパと同じようなレシピで淹れるとかなり酸味が強く出ます。
日本の軟水で浅煎りコーヒーを淹れる場合は、挽き目や温度、抽出時間など微調整が必要になります。

ヨーロッパでも硬水をそのまま使うとボイラーなどに影響が出る場合があるので、軟水器を使っているお店もあります。
こだわっているお店は豆の種類に応じて水のpHや硬度を調整していることもあります。硬度=ミネラルなので、CaイオンやMgイオンが影響します。

SCAA(Speciality Coffee Association of America)で、指標も示されているくらい重要なファクターになります。

SCAA 資料より抜粋

当店ではこの指標に近づけるべく、浄水軟水器を導入した水を使用する予定です。
これにより、コーヒー本来の味をよりはっきりと味わっていただけると考えています。

軟水

硬度が低いので、酸と反応するミネラルが少ないため、酸味が残りやすいが、軟水が持つ柔らかさからまろやかさ、甘さがあり、苦味も緩和されるため飲みやすいコーヒーになる。
一方で、コーヒーの個性は感じにくく、ぼんやりとした味になりやすい。

硬水 

ミネラル分が酸と反応するため、酸味が打ち消される傾向がある。よって、「コーヒーらしさ」のある苦味が強調される。
ヨーロッパでドリップコーヒーを飲むと、軟水器を使っていない店だと、超ストロングコーヒーに感じます。ホテルなどでは、マシンで淹れているので、経験上、ほぼ超ストロングコーヒーです。
(朝の目覚めには最適です)
ヨーロッパでは、エスプレッソにして、砂糖をいっぱい入れて飲むのが美味しいです。

牛乳やオーツミルク

牛乳にはカルシウムが豊富に、オーツミルクにはカリウムやカルシウムが含まれるので、カフェオレやラテにすると、コーヒーの酸がミネラルによって打ち消され、酸味が緩和されます。
個性である酸味をあえて活かすような淹れ方をして、オレやラテでも、酸味を感じるようにすることもできます。

コーヒーも農産物なので、理論的にすべてをコントロールするには分析をして、最適な水で淹れれば美味しいコーヒーが飲めるかもしれませんが、それはもはやどこで飲んでも同じ個性のない飲み物になるかもしれません。

各店舗が考えるレシピで、同じ豆であっても違いが出るのもコーヒーの面白さであるので、お店のバリスタに質問してみるのもいいかもしれませんね。

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