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Vol.42 マカロニほうれん荘

1977年から79年までの2年間、週刊少年チャンピオンで連載されていたギャグ漫画です。
当時かなりのヒット作品だったにもかかわらずアニメ化などの展開もなかったため、今となっては知る人ぞ知る伝説の漫画となっています。

日常の出来事を独特な登場者で描くいわゆるスラップスティックコメディですが、当時としてはかなり異色の作品でした。
スピード感や突拍子のない展開という基本スタイルは先行してヒットしていた「がきデカ」に通じるものもありましたが、ハチャメチャなストーリーの中にマニアックなディテールを織り込むという手法を取り入れたのはこの作品が最初だったように思います。

当時流行の最先端であったパンクやハードロックなどの洋楽、ファッション(特に女性)、ポップアートなど70年代カルチャーが本編とは関係ない部分でも幅広く描かれています。
ギャグ漫画ですら泥臭さがあった時代にポップさを持ち込むこの形は後の80年代ギャグ漫画の頂点ともいえる江口寿史作品につながっていくことになります。

SFやスポ根しか知らなかった男の子たちにちょっとした大人のおしゃれな世界をこっそり見せてくれる作品であり、背伸びをしたい少年たちにとって(作品で描かれるかわいいお姉さん達とともに)眩しくて素敵な憧れの世界を紹介してくれたのでした。

当時のギャグ漫画家の多くは天才肌であり、連載(特にヒット作で)のプレッシャーに潰されてしまうことが多いのですが、この鴨川つばめ氏もかなり追い詰められてしまったようで、単行本9巻でこの作品は終了しその後目立った活動はしていません。
後のギャグ漫画に大きな影響を与えたことは疑いないのですが、いまでは幻の作品となっています。

70年代に新しい時代を作ろうとしていたクリエイターの息吹が感じられる作品です。

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