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Vol.33 The Beatles(後編)
ふたりの天才
2019年にビートルズを題材にしたある映画がありました。
もし誰ひとりビートルズを知らない世界でたったひとりのミュージシャンがビートルズ(の曲)を知っていたらどうなるか、というテーマでした。
ビートルズの作品は時代を超えて(現代のヒットメイカーであるエド・シーランですらかなわないほど)素晴らしいということを描いたものです。
なかなかおもしろい題材ですし、ビートルズの曲が魔法のように人々の心を掴んでいく様子は痛快とすら言えるものでした。
ジョン・レノンとポール・マッカートニーという二人の天才。
彼らがビートルズという媒体を通してその才能を余すところなく発揮して唯一無二の素晴らしい作品を(しかもとてもたくさん)残した、というのはまぎれもない事実ですし、それがこの映画のテーマだったと思います。
1%の才能と99%の努力あるいは運
ジョンとポールの才能、そしてこの二人が出会った奇跡がビートルズの「すごさ」の一つの要因であることに疑いはありません。
しかし、彼らのような天才的ソングライターがこの50年間に出て来なかったかといえばそんなこともありませんし、ビートルズとはまたすこし違う形でポップミュージックの世界に大きな足跡を残したアーティストも少なくありません。
でもビートルズの存在(あるいは現象)にはそれらと一線を画するものがあります。
前編で書いたように彼らは7年間の活動期間に3つのフェイズを持っていました。
そしてそれぞれのフェイズで実は少しづつ違うことを成し遂げています。
60年代初頭のロックバンドというスタイルがポップミュージックの軸になり始めた”初期”にはヒット・チューンを連発しアイドル的存在として成功。
技術的にも人間的にも成熟と余裕を迎えた”中期”には独自の世界観を持つ名作を次々と生み出す偉業を成し遂げます。
そしてそんな激動の活動期間の幕を下ろす”後期”にはすべてを達観したかのような老練の(良い意味で枯れた)サウンドを生み出し、70年代のポップ・ミュージックアーティストにバトンを渡します。
こういった人生のような変化を通り抜けるバンドはビートルズだけではありませんが、それぞれのフェイズで違う形でなんらかの達成を成し遂げることができたバンドはビートルズのほかには無いように思います。
稀有な才能、偶然の邂逅、時代の流れと変化。
これらが奇跡的にシンクロしたことがビートルズとその作品の「すごさ」であり、唯一の存在となっている理由なのではないかとぼくは思っています。
このあたりを描いてくれればあの映画ももう少し面白かったのにな。
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