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Vol.38 カラオケ


世界共通語になる日本語はあまり多くありませんが、"KARAOKE"はそんな中で最も世界中に知られた日本語一般名詞の一つだと思います。
マンガやアニメに先立って発信された日本文化と言っても良いのかもしれません。
江戸時代の浮世絵以降の100年間、世界に日本文化が広まることはほぼ途絶えていましたので、これもまた70年代以降の日本の変化(あるいは成長)の一つの印と捉えることもできます。

そもそもカラオケという言葉は放送・音楽業界の用語であって、手間のかかる生のオーケストラやバンドの演奏「生オケ」を使わずにバッキング・トラック「空オケ」のみでで歌手に簡易的に歌わせる手法の呼び名でした。
50年代から60年代のラジオ・テレビ放送の成長とともに生まれたわけです。

そして70年代初頭に一般向けの最初のブームが訪れます。
ただこの頃はオジサンたちの酒席(スナックやら宴会やら)のためのツールの一つで、中心は演歌であったりムード歌謡であったり(男女デュエット曲ももうあったはず)、若者を寄せ付けない独特な雰囲気があったものです。
少年時代のぼくにとっては魅力がないというよりもどちらかといえば忌み嫌う種類のものでした。
酔っぱらいの大人の夜の世界のアレコレが詰まった酒臭い文化だったのです。

そんなカラオケも80年代半ばの「カラオケボックス」の誕生により方向性が変わりました。
若者たちが仲間同士で楽しむ娯楽としての位置を獲得し、90年代には音楽シーンでもカラオケで歌ってもらうことを意識した作品作りが主流となっていくまでになりました。
いまでは趣味の一つとしてカラオケを上げる若者も少なくないほどまでになり、完全に市民権を得ています。
70年代のカラオケシーンを知るぼくには未だに信じがたいことです。

70年代のカラオケマシンには「8トラ(ハチトラ)」というテープメディアが使われていました。
スーファミのカートリッジを2つ並べたくらいの大きさのプラスチックケース型で非常に70年代的外見をしています。
カセットテープより頑丈であり、かつプロ用のオープンリールに迫る高音質のステレオ再生が可能というもので、そもそもはカーオーディオ用に開発されたものだったようです。
カセットテープの性能向上と共にあっという間に消えてなくなりましたが。こういった過渡期的製品の「あれって何だったんだろう?」的なものもまさに70年代の魅力だと思います。

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