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Vol.30 The Rolling Stones(前編)

存在の大きさ

ローリングストーンズに関して文章を書くのはある種の暴挙です。
半世紀を超える彼らの足あとをクロニクルとして描くならば本一冊でも足らないし(そんなのできないし)、さらっと概略として彼らの歴史や功績あるいは魅力をまとめるというのも個人的な思い入れや思い出が邪魔してうまくいきそうにありません。
いままで70年代ロックバンドについていくつか書いてきましたが、ストーンズとなると事情が変わってきます。

つまりそういうバンドです。
存在の重みも時間的ボリュームも他と比べようがない。
言い換えればロック好きにとっての「酒のツマミ」としては最高なわけです。


70年代のストーンズ

言い訳はさておき、このnoteの趣旨は70年代ですしストーンズなしに70年代を語ることはできませんので、そこに絞って書いてみます。

60年代にはビートルズの最大ライバルというポジションにありながらも「ちょっとした不良感(リバプールじゃなくてロンドンだぜ感)」を加えることで独特な立ち位置を得ることになります。
この頃の初期サウンド(シンプルなロックンロール)は日本でもたいへん人気となり当時の日本のロック創生期に大きな影響を与えています。
沢田研二などはミック・ジャガーをうまく消化して自分のものにしていました。
60年代後期にはサイケデリック志向やインドへの傾倒などビートルズと似た方向にも進み(多くのバンドがそうだったわけですが)、この時期にもユニークな作品を多く残しています。

しかしストーンズの方向性と個性が決定的になったのはブライアン・ジョーンズ(結成時のリーダー)が亡くなる時期を挟む2枚のアルバム「ベガーズ・バンケット(68年)」と「レット・イット・ブリード(69年)」です。いわゆる「ロック史における1969年」というスペシャルイベントを構成する代表的現象の一つと言えるものです。

ビートルズは70年にアルバム「レット・イット・ビー」という傑作(個人的感想です)を最後にバンドとしてのゴールを迎えますが、ストーンズはここから新たな時代を拓き始めます。文化の分水嶺としての70年代を支える大黒柱となっていったわけです。
彼らの代表曲のひとつ「ブラウンシュガー」を含むアルバム「スティッキー・フィンガーズ(71年)」はまさに60年代の混沌から抜け出し70年代の扉を開いたマスターピースです。

この頃を境にアドリブプレイを基本にそれぞれの楽器を絡み合わせて独特でクールなグルーブを生み出すストーンズのサウンドが確立していきます。
しかしそういった大物バンドにありがちなサウンド志向にかじを切りながらも、ミック・ジャガーというカリスマボーカリスト(いまやロックの偉人)の存在によってキャッチーなヒットチューンも生み出し続けます。小難しい理屈や努力は裏においておこうという姿勢もストーンズらしい部分です。

70年代後半には当時流行のディスコビートやファルセットボーカルなども取り入れたりしますが(これで軸のブレた70年代バンドも多かった…)、ストーンズサウンドのコアな部分はキチンと残されていて、これまたさすがの一言でした。
80年代以降もそれなりに時代に合わせた作品を出し続けます。
良い例が「スタート・ミー・アップ(81年)」という曲で、これは彼らの意図とは別の形でこの時代に受け入れられ世界的ヒットとなりました。こういった面白い現象もストーンズ特有のものだと思います。

と、ここまでざっと書いてきましたが、まだ一番大切なことを書いていません。
ギタリストのキース・リチャーズについてです。

後編に続きます。

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